「偏差値」ってそもそも何?マイナスイメージがあるのはなぜ?[高校受験]

模擬試験などで合格可能性のめやすとして使われる「偏差値」。よく聞く言葉ですが、そもそもどんな数値なのか、知っているかたは少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、偏差値とは何か、進路選択にどのように役立てるべきかについてお話しします。

統計学上の用語「偏差値」

「偏差値」は、もともと統計学の用語です。高校の合格可能性をはかる、いわゆる「学力偏差値」の利用は、1965年ごろから広まりました。
偏差値の便利な点は、「母集団の中での位置を示せる」ことです。

たとえば、Aさんが「平均点64点のテストで72点取った」場合。なんとなく、平均点より高いのだからクラス内でも上位の成績だろう、という印象を受けると思います。
しかし、これはクラス内の点数がどう分布しているかで大きく変わってきます。

たとえば10人のクラスで、ほかの人の点数が5点、5点、10点、82点、88点、90点、90点、98点、100点だった場合、Aさんは10人中7位。
また、ほかの人の点数が50点、50点、55点、60点、61点、62点、64点、68点、98点だった場合、Aさんは2位となります。
このように、平均点より上か下かだけでは、全体の中での位置はつかめません。

偏差値(学力偏差値)は、平均点を50、標準偏差を10となるようにデータを変換し、集団内でそのデータがどの位置を示すかを表したものです。標準偏差とはデータのばらつきの大きさを示す数値で、上の例なら大きく、下の例なら小さくなります。

偏差値=

(得点-平均点)
————————×10+50
  標準偏差

母集団が平均点を頂点とする左右対称の山形を描くような「正規分布」であると仮定した場合、偏差値によって、自分が全体の上位何パーセント以内に含まれるかを知ることができます。模擬試験の合格可能性判定は、この性質を利用しています。

なお、データは数が多いほど「正規分布」に近づく傾向があります。偏差値は母集団が正規分布である仮定のもとに出すものですから、受験者数が少ない学校の偏差値はあまりあてになりません。
また、母集団全体の成績によって偏差値は変わってきます。同一人が受けても、成績上位の生徒が多く受ける模試の場合、偏差値は低めに出ますし、成績下位の生徒が多ければ高めに出ます。

「偏差値」という言葉にマイナスイメージがあるのはなぜ?

このように、偏差値は合格可能性のめやすとして便利なものです。
ところが、1970年代ごろから、「偏差値がいくつならこの高校」というように、生徒を偏差値によって切り分けるような「輪切り」と呼ばれる進路指導がなされるようになり、批判を浴びてきました。
1993年には「業者テストによる偏差値等に依存した進路指導は行わないこと」を求める文部省(現在の文部科学省)からの通知が出され、中学校内での業者テスト(模試)の実施が禁止されました。「偏差値」という言葉そのものになんとなくマイナスイメージがあるのは、このような経緯によるものと思われます。
とはいえ、生徒の学力は中学校によって差があるため、学内のテストだけでは、入試に向けて自身の学力を客観的にはかることができません。そこで、受験生は各自の判断で模試を受けるようになりました。

現在は、「この偏差値ならこの学校」というような進路指導は行われなくなりましたが、合格可能性をはかる客観的な数値としては活用が続いています。私立高校の個別相談会などで、資料として模試の成績表が使われることもよくあるようです。

「合格予想偏差値」はあくまで合格可能性のめやす

高校受験案内を見ると、A校は45、B校は55……などと、各学校の合格予想偏差値が示されていることが多いと思います。しかし、これはあくまで模試の成績から割り出した予想であって、実際は生徒一人ひとりの成績にはかなりのばらつきがあります。「B校に受からない子がA校に行くのね」などと、偏差値がその学校の「顔」であるかのように錯覚しがちですが、教育の中身は偏差値からはわかりません。

また、特進コースなど、コースを細かく設定している学校と一括募集の学校では、一括募集のほうが偏差値は低く出がちです。当然ながら、どちらがよりよいかはお子さまの意思と適性しだいです。「偏差値のより高い学校を選ぶ」「今の自分の偏差値に見合った学校を選ぶ」といった「偏差値ありき」の志望校選択はおすすめできません。
偏差値は、あくまで合格可能性のめやすとして参考にすべきです。第一志望A校に合格するためには、どの教科の偏差値をどのくらい上げるべきか、というように、今後の受験勉強に具体的に役立てられるとよいですね。

プロフィール

安田理

安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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