新卒一括採用、将来なくなる!?

大学などの卒業年度に就職活動を一斉に行い、新年度から会社に採用される。いったん正社員として就職できれば年功序列で賃金が上がり、原則的には終身雇用で定年を迎えられる……。
そんな「日本型雇用」が揺らいでいることは、保護者の方々が実感しているところでしょう。入社後はもちろん、新卒採用の在り方が変わるだけでも、大学などの教育に大きな影響を与えます。そうした時代への備えも今から必要になっているのかもしれません。

日本的雇用慣行は「合理的でない」

内閣府が先頃まとめた2019年度の「経済財政白書」(年次経済財政報告)では、「『令和』新時代の日本経済」と銘打って、日本経済の現状と課題をまとめています。その中で、「日本的雇用慣行と呼ばれる年功的な人事管理の見直しが多様な人材の活躍を促進する上では重要である」と指摘していることが注目されます。

いま日本経済は少子高齢化により人材不足が起こっており、また経済のグローバル化が進む中で「ダイバーシティー(多様性)」も求められています。女性はもちろん、元気な高齢者、外国人など、多様な人材に活躍してもらわなければ、これからの日本経済は立ち行きません。
白書は、これまで一定の合理性があった日本的雇用慣行も、現在の日本経済を取り巻く環境を考慮すれば、一定の限界がみられると指摘しています。

その理由として、▽企業内部だけの訓練や職場経験を基に育成された従業員は、思考や知識が同質的になりがちで、創造的な仕事が苦手となる傾向にあるため、画期的なイノベーション(革新)が必要とされる業務には必ずしも適さない
▽企業内部からの人材登用や年功的な評価を重視する慣行は、女性や外国人材等の活躍や専門性の高い外部人材の登用を阻害する可能性があるだけでなく、従業員にとっても専門性を高めにくく、キャリア途中でのやり直しを困難にする
▽年功序列制度は、若年期に教育訓練で身につけたスキルが高齢期にも陳腐化しないといった環境変化が緩やかな条件においては合理的だが、現在のように技術進歩が速く、スキルが陳腐化しやすい環境下では合理的とは言えない……と説明。
人生100年時代には「自分で目指すべきキャリア形成の意識を持つことが必要」だと強調しています。

「いい学校→いい会社」通用せず

こうした経済環境の変化が避けられないとすれば、学校時代に身につけるべき資質・能力にも見直しが必要になるでしょう。
もちろん、基礎・基本は重要です。しかし一度身につけた知識やスキルは、先に見たようにすぐ「陳腐化」します。常に新しい知識やスキルを身につける努力を怠らないようにする態度も不可欠になりますし、必要によっては学校での学び直しなど、一生学び続けることも当たり前の時代になることでしょう。

大卒採用をめぐっても、就活ルールの策定主体が日本経済団体連合会(経団連)から政府に移っただけでなく、企業側と大学側で採用活動や大学教育をめぐる見直し論議も行われています。卒業後すぐに就職することを前提にした学生生活の設計にも、修正が迫られるかもしれません。いずれにしても、「いい学校→いい会社」という将来像がいつまでも通用しないことだけは確かなようです。

(筆者:渡辺敦司)

※経済財政白書
https://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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