絵本の世界を楽しもう! 心を育てる読み聞かせのコツ【前編】

夜が長いこの時期は、お子さまと一緒にベッドの中でごろごろして過ごすのがとても気持ちいいですよね。気持ちのいい布団の中でスキンシップをたくさん楽しんだら、絵本の読み聞かせもしてあげてはどうでしょうか。毎日絵本の読み聞かせをしているという幼稚園児の保護者も少なくないようですが、そもそも読み聞かせはどんなふうに楽しむものなのでしょうか。福岡県行橋市にある私立きらきら星幼稚園の黒田秀樹園長に聞きました。


読み聞かせは大人をも感動させる芸術

 私が初めて読み聞かせの世界の奥深さを知ったのは、幼児教育に携わり始めたばかりのころ、40年近く前のことです。その絵本は、皆さんもきっとご存じの『ぐりとぐら』でした。絵本を大きく広げて聞き手のほうにしっかりと向けて、ゆっくりと読んでいったその時間、私は我を忘れて絵本の世界に入り込んでしまいました。読み聞かせが終わった瞬間、20代の大人の私は、感動して拍手をしたほどです。そのとき私は、絵本、そして読み聞かせは決して子どもだけのためのものではない、大人の心も動かす力をもった、文化や芸術ともいえるものなのだと実感しました。

 

このようにお話しすると、「きっとじょうずな読み手が、感情たっぷりに読んだのだろう」と思うかたもいるかもしれません。「おじいさんやおばあさん、魔法使いになりきって、抑揚たっぷりに読むなんて、私にはできない…」と。でも、私が感動させられた読み聞かせは、どれも芝居がかったものではなく、むしろゆっくり、淡々と読むものでした。読み手が身振りや手振りをしたり、声色を使ったりすることもありません。絵本のもっている魅力そのもので勝負するようなものばかりでした。だから、私の幼稚園でも、保育者はおおげさに抑揚をつけたりすることなく、絵本の世界に子どもたちが没頭できるように、本を大きく広げて、ゆっくり、淡々と読んでいます。絵本が文学作品として優れていれば、それだけで子どもは十分に引き込まれるのです。

 

 

読み聞かせを通して親子関係を豊かに

 おもしろいことに、読み手が淡々と絵本を読んでも、絵本の世界の魅力ばかりか、それぞれの読み手の個性も十分に伝わるということです。私が出会ってきた優れた読み手、そして保育者たちからも、淡々と読んでいても、その人らしさが伝わってきたのです。

 

幼稚園で絵本を読むとき、保育者と子どもは「1人対大勢」です。しかし、絵本の世界にのめり込んだ子どもにとっては、保育者との1対1のコミュニケーションになっています。まして、家で、大好きなお母さんお父さんが読む絵本は、子どもにとって親を独り占めできる、最高のコミュニケーションツールです。絵本の世界を楽しみながら、親子の信頼関係を強めることができるのです。

 

私は、そもそも絵本は「読み聞かせてもらう」ことを前提につくられていると考えています。そして、小学生はもちろん、中学生や高校生にも読み聞かせをしてあげてもよいと思っています。文字が読めるようになったから必要なくなるものではなく、何歳になっても読み聞かせという文化、芸術を味わう権利が誰にでもあるのです。実際、私の幼稚園で読み聞かせサークルをつくったお母さんたちは、中学校に出向いて読み聞かせのボランティアをやっています。

 

お子さまが字を覚えて、絵本を自分で読めるようになることはとてもすてきなことですが、読み聞かせの楽しさも長く味わわせてあげてほしいですし、読み聞かせを通して親子の関係を深めていってほしいと思います。お母さんばかりではなく、お父さんが「この絵本、おもしろそうだよ」と図書館で借りて読んであげたら、とてもすてきなことだと思います。

 

 

【後編】では、読み聞かせにぴったりの絵本の選び方と、私の幼稚園で今、大人気の絵本をご紹介します。

 

 

プロフィール



「子どもが子どもの時間をいっぱい呼吸できる園づくり」を目指し、わらべうたや絵本を通した幼児期にふさわしい感性の教育、自然の中での体験を大切にした保育を展開。同園は2015年度、教育学・心理学・福祉学の分野での最大の学会である日本保育学会の公開保育の実施園に選ばれた。

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