「ある」のつく言葉が子どもにエネルギーを与える[やる気を引き出すコーチング]

日頃、高校生に対して、1対1でコーチングを行うことがあります。主なテーマは、「進路」についてです。志望校をどこにするのか、受験勉強にどう取り組むのかを話し合います。

いろいろなタイプの高校生がいますが、時々、かわいそうになるぐらい悲観的なお子さまもいます。「受かるかどうか不安」「このままではどうせ無理」「自分にはできない」と頑なに言い続けます。具体的に成績や状況などを聴いていくと、それほど悲観するものでもないのですが、「どうしてそこまで否定的に考えるのだろう?」とこちらまで悲しくなってきます。

できないことを指摘される影響

高校3年生Aさんとのコーチングで、Aさんはこんなことを話してくれました。
「私は、『自分はできる』と思ったことなんか一度もないです。だから、大学も受かる気がしないです。自信がまったくないんです。ほめられたことなんかないです。テストで95点とっても、『どうして、あと5点取れなかったの?』と小さい頃から親に言われてきました」。
辛そうに話す姿を見ていると、いたたまれない気持ちになります。
95点分もできたところがあるのに、できなかった5点について言われたことを、Aさんはずっと忘れていないのです。保護者のかたは、Aさんに「満点をとる力があるのにもったいない」という期待を込めておっしゃった言葉かもしれません。しかし、この言葉がずっとAさんを苦しめ、自己否定感を増幅させてきたのだとしたら、お互いにとって不幸なことだと感じます。

「あるもの」に焦点をあてる

私の知人Bさんの息子さんは、中学生の頃から、学校にあまり行かなくなり、高校にはなんとか入学しましたが、成績はまったく芳しくなかったそうです。それでも、自分でやりたいことを見つけ、調理師の資格を取り、夢だった自分のお店を持って、イキイキと仕事をする社会人になりました。
Bさんは、当時をふりかえって、こう言います。「学校ってすごいところだなって、私、思った。だって、うちの息子、あんなに学校に行ってなくて、テストが0点でも、通信簿では『1』をくれたんだよ!私、嬉しかった。『1』ってすごくない?『0』じゃないんだよ!」
このような発想ができるBさんの息子さんだからこそ、自分で道を見つけ、夢を叶える力を持った大人へと成長されたのかなと思います。

「ないもの」「足りないもの」を指摘されると、自分の存在価値が感じられず、自己否定が強い大人になってしまいます。「ないもの」を考え続けても、親も子どもも力づけられません。「あるもの」に目を向け、それを認識していくことで、より幸せな大人へと成長していけるのではないでしょうか。

「ある」のつく言葉で言ってみる

さて、高校生Aさんのコーチングの話に戻ります。私は、Aさんの苦しい気持ちを受けとめた上で、最後にこう伝えました。
「Aさんのお話を聴いていて思ったんだけど、1分ぐらいの間に、『ない』っていう言葉を5回ぐらい言ってたね。『できるって思ったことない』、『受かる気がしない』、『自信がない』、『ほめられたことがない』、だから、『自分にはできない』って」。

Aさんは、ハッとしたように顔をあげて、私の顔をじっと見つめ返しました。私は続けてこう伝えました。
「『ある』ものを言ってみたらどうかな?『今日、時間通り、ここに来た時間管理能力がある』『断ることもできたのに、ここに来た行動力がある』『自分の気持ちを正直に人に伝える勇気がある』『わかりやすく伝える表現力がある』『将来のことをこうして考える機会がある』とか」。

Aさんは、最初よりは明るい表情で、「まず、『ある』のつく言葉に変えてみますね!」と言って帰っていきました。

お子さまの中の「あるもの」に焦点をあて、「ない」のつく言葉を減らしていくと、お互いにエネルギーが湧いてくるのがきっと感じられますよ。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A