子どもの無反応、無気力に働きかけるアプローチ[やる気を引き出すコーチング]

先日初めて、定時制高校に講演に行きました。あらかじめ、ご担当の先生から、こんな情報をいただいていました。
「石川さんが日頃行かれている全日制の生徒とは少し雰囲気が違うかもしれません。いろんな生徒がいます。年齢層も幅広いですし、家庭環境が複雑な子、いじめや不登校を経験して、全日制を退学した子などもいます」
実際に、皆さんの前に立って話し始めると、確かに、いつもと雰囲気が違いました。

発言や考えを受容する効果

講演中に、「皆さんには、夢ややってみたいことはありますか?」と私が投げかけると、いつもは、シーンとしたままで反応がありません。考えているのか、いないのか、表情からはほとんど読みとることができません。ところが、今回はいきなり、「はい!あります」と手が挙がりました。

まず、60代の生徒さんが、「外国で働きたいです」とおっしゃるのです。思いがけない反応と、夢を持ちながら学び続けられている人生の大先輩の姿に感動しました。「他の皆さんはどうですか?」とふると、今度は、10代の生徒さんがやってみたいことを話してくれました。その後も、2〜3人手が挙がり、各々にユニークな発表で場をいっそう和ませてくれました。

「やりたいこと」があり、それを自発的に人前で発表することは、そんなに簡単なことではありません。私がこれまで行ってきた学校の講演では、まずないことです。「この学校の生徒さんは何が違うのだろう?」と考えました。大人が意欲的に学び、夢を語る姿を子どもたちに見せていることも一つ大きな要因としてあるでしょう。

もう一つ、先生方の接し方によるところは非常に大きいと感じました。「こんなことを言ったら笑われるかも、否定されるかも」という恐れがあると、決して、自分の考えは言えません。先生方が、日頃から、どんな考えや発言も受容し、お互いに受容し合うように関わっていらっしゃるからこその反応なのだと感じました。このような関わり方が増えたら、無反応や無気力を装う子どもたちは減るのではないかと考えさせられました。

本当は背中を押してほしい子どもたち

高校生の皆さんに、私が講演でお伝えしていることは、コーチングの手法というよりは、考え方の部分です。「夢を叶える方法は一つではない。なりたい自分になるための答えが一つしかないなんてことは絶対にない。『どうすればできるのか?』と問い続ければ、答えが必ず見つかる。夢はどんな形で叶うかわからない。自分への質問が変われば、思考も行動も現実も変わる。すべては自分しだい」というような話をします。

講演終了後、数名の生徒さんが職員室までやって来て、私に挨拶をしてくれました。
「今日はお話が聴けて本当によかったです。私はずっと人と比べて、『自分はどうしてできないんだ?』と辛かったです。でも、自分への言葉を変えれば、大丈夫なんだって思いました。明日からすごくがんばれそうです。ありがとうございました」と涙を流しながら言ってくれるのです。これも未だかつてないことでした。自分の仕事を心底誇りに思わせてくれる出会いでした。

「夢は叶う」などという言葉は、きれいごとに聞こえるかもしれません。それでも、大人がぶれずに、「自分しだいで夢は叶うんだよ」と伝えることで、背中を押される子どもは確実にいます。
現実を見ると、とてもそうは思えないとあきらめている子どもたちも、本当はどこかで背中を押してほしいのではないかと思います。最近の子どもは、「夢がない」「覇気がない」と嘆く前に、大人があきらめずに、子どもの未来を信じて、背中を押す言葉をかけていけたらと強く思いました。私自身も大いに力づけられた今回の出会いに心から感謝しています。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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