入学準備で一番大切なことは?[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
長男が4月から小学校に入学します。初めての子なので何かと心配です。入学準備としてどういうことをしておけばいいでしょうか?勉強やしつけのことなどいろいろ気になります。
小学校での生活や勉強に備えて、入学準備で一番大切なことは何でしょうか?

相談者・カスタネットさん(年長男子)

【親野先生のアドバイス】
拝読しました。
大切なわが子の入学となれば、いろいろ心配になりますよね。

入学準備ということでまず頭に浮かぶのは、「読み・書き・計算はどこまで?」「生活習慣のしつけで必要なことは?」などという疑問だと思います。
幼稚園や保育園の親御さん対象の講演会では、質疑応答の時によくこのような質問を受けます。

もちろんそういうことも必要です。
でも、「一番大切なこととは?」というご質問なので、敢えて言わせていただけばそれらは一番ではありません。

長年小学校の教師として仕事をして、数多くの親子を見てきた経験から言えることは、本当はこういったことよりはるかに大事な入学準備があるということです。

まず、今すぐやってほしいのが親の言葉づかいをかえるということです。
私は、「親の言葉づかいをかえるのが最大の入学準備」といつも言っています。

そう言うと、「え、どういうこと?それが入学準備とどういう関係があるの?」と思う人が多いと思います。
でも、これは本当に大事なことなのです。

もし、あなたが「また○○してない。○○しなきゃダメでしょ。なんで○○しないの!」などの否定的な言葉をよくつかっているなら、すぐにやめてください。

「また片づけしてない。ちゃんと片づけしなきゃダメでしょ。何度言ったらできるの!」
「出せば出しっぱなしでだらしがない。片づけないと捨てちゃうよ」
「自分から歯を磨かなきゃダメでしょ。何度も同じこと言わせない!」
「こぼしたら拭かなきゃダメでしょ。ホントにだらしがない」
「早くしなさい!ダラダラしてない!テキパキ動かなきゃダメ」

こういう否定的な言葉を毎日シャワーのように浴びている子がたくさんいます。
それが続くといろいろな弊害が出てきます。

まず1つめの弊害として、子どもは自分に自信が持てなくなり、「ぼくってダメな子みたいだ」「どうせ私なんてダメだよ」と思い込むようになります。
つまり、自己肯定感がなくなり自己否定感にとらわれるようになってしまうのです。

これが非常にまずいことで、こうなってしまうと、勉強、運動、生活習慣、遊びなど、何事においても「自分にはできない。こんな自分にできるはずがない」と感じるようになってしまいます。

こうなってしまうと、何事もがんばるエネルギーがわいてきません。
たとえやったとしても、ほんのちょっと壁があると「やってみたけどダメだ。どうせ自分は何をやってもダメだよ」となってやめてしまいます。

反対に自己肯定感がある子は強くて、何事においても、まず「自分はできる。これ面白そう。やってみたい。だってできるもん」と思えてしまうのです。

そう思えばチャレンジしますよね。
たとえちょっとした壁があっても、「自分はできるはずだ」と思えるので、がんばりが続いて結局乗り越えてしまいます。

ですから、自己肯定感があるかないかは、その後の伸び方に決定的な影響を及ぼすのです。

弊害の2つめは、否定的な言葉を浴び続けると、子どもの中にちょっとした疑惑が出てくるということです。

つまり、「ママもパパも僕のことをダメな子だと思っているようだ。あまり大切に思われていないかも。愛されていないかも」という気持ちが出てきてしまうのです。

これが愛情不足感と言われるものです。
こうなると、がんばるエネルギーはますますなくなっていきます。

また、親に対する反発心も出てきて、親の言うことを素直に聞こうという気持ちもなくなっていきます。

その結果、親がますます叱り、子どももますますいじける、という悪循環が始まります。
そして、親子ともどもお互いに対する不信感を持つようになります。

子どもにとって親子関係は人間関係の第一歩です。
そこで不信感を経験してしまうと、その後の人間関係においても不信感を持つようになります。
これが他者不信感とか人間不信と呼ばれるものです。

私が知っている子の中にも、「どうも、この子には人間不信があるな…」と感じさせる子は何人かいました。

こういう子は、過度に被害妄想的になったり攻撃的になったりして、友達、きょうだい、先生などとよい関係をつくることができなくなる可能性があります。

弊害の3つめは、否定的な言葉を浴び続けると、子どもの言葉も否定的になってしまうということです。
親の言葉は子どもにとって最大のモデルであり、親が関西弁なら子どもも関西弁になりますし、親が東京弁なら子どもも東京弁になります。

同じように、親が否定語弁なら子どもも否定語弁になります。
親が「また○○してない。○○しなきゃダメでしょ。なんで○○しないの!」などの否定的な言葉をつかっていれば、子どもも同じように否定的な言葉になります。

親が「片づけないと捨てちゃうよ」「勉強しないとおやつナシだよ」などという罰則型の言葉をつかっていれば、子どももきょうだいや友達に対して「○○しないと遊んでやらないよ」「○○しないとおいてくよ」などと言うようになるのです。

こうなると、学校で友達とよい関係を築けなくなる可能性が高まります。

このようなわけで、否定的な言葉を子どもに浴びせ続けるのはやめて、ぜひ肯定的な言葉をつかうように心がけてください。
親の言葉が肯定的になれば、子どもの言葉もそうなり、友達ともよい関係を築けるようになります。

例えば、「○○しなきゃダメ」ではなく「○○するといいよ」という言い方にかえるだけでもかなり違ってきます。

また、ちょっとでもできている部分を見つけて、プラス思考でほめるようにすることも大事です。

こういったことが難しい場合は、せめて単純型で「さあ、○○しよう」「はい、○○して」「○○するよ」などと言うようにしましょう。
とにかく、否定的に言うのをやめることが大事です。

こういった望ましい言葉づかいについては、下記の記事も参考にしてください。

「子どものやる気を引き出す言葉とは?」
/blog/20150728/p3.html

親が否定語をやめて肯定語にかえれば、子どももかわります。
自己肯定感が持てるようになって、チャレンジできるようになります。
親の愛情を実感できて、がんばるエネルギーがわいてきます。
子どもの言葉もよくなり、友達関係がよくなります。

こういったことが一番大事な入学準備なのです。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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