親子で知っておきたい、奨学金からわかるお金のルール!

お子さんがいらっしゃるご家庭では、4月に新生活が始まってから、そろそろ落ち着かれたころでしょうか。新学期になると同時に、学校からさまざまなプリントが配布されますが、その中に、就学援助や奨学金の説明のプリントが必ずといってよいほど入っており、既に申請をされたかたもいるかもしれません。
そんな中、日本学生支援機構から驚きのデータが発表されました。
奨学金を実際に返済中の人で滞納している人のうち、「返還猶予を知らない」人が57%もいるというのです。奨学金を受給する学生は既に2人に一人を超えています。
借りたのはよいけれど、返済猶予をはじめとする「返す方法を知らない」というのであれば大変な事態です。
奨学金を将来的に借りることを予定されているご家庭では、普段から奨学金について、家庭でも話題のひとつに上げるということをしておきましょう。



親子で知っておきたい、奨学金からわかるお金のルール!


奨学金を滞納すると想定されるこんなこと

奨学金を滞納すると、連帯保証人や保証人、就職先の会社などいろいろな関係先にも電話がかかってきます。
そのとき、すぐに返済できればよいのですが、延滞が続くと、弁護士名の支払督促が届き、更に裁判所に申立をされ、最後には強制執行という、給与などの差し押さえまでされる強硬手段が待っています。
一回滞納してしまうと、細々ながら返済しようとあとで考えてみても、減額返還など制度の対象外になることも考えられます。
就職先を退職したり、給料が減額されたりと、奨学金の返済が難しくなるような環境の変化があれば、「あらかじめ」相談に行くことが大事だといえるでしょう。
将来的に、子どもがクレジットカードを発行できなかったり利用を停止されたりし、自動車や住宅ローンを組めないなど、さまざまな不利益に直面する前に、できるだけ子どもと話し合って、借りる金額は少なく抑える、もしくは返済の方法を親子でちゃんと確認しておくべきでしょう。



奨学金を返すにはさまざまな方法が考えられる

奨学金を借りると、実際返すのは、働き始めてからです。ただ、自分の思いどおりの就職ができなかったり、いったん就職したもののやはりもう少し勉強を続けたくなったりなど、理想的な返済の状況ばかりではないこともあるでしょう。
日本学生支援機構の奨学金では、そんな返済困難者を救済するために、返済猶予や一回分の返済額を減らして返す方法などが設けられているのです。本人の収入が300万円以下の場合、最長10年返済を猶予してくれたり、返済期間を延ばして、一回分の返済額を半減してくれたりする制度です。



お金の知識を高めるのは保護者の責任

奨学金は2012(平成24)年度の貸与者数が約132万人、一方、1日以上の延滞者も同年度末にのべ約33万人、未返済額は925億円に上っています。返済してもらった奨学金で新たな奨学生に貸すという奨学金制度の仕組み自体が揺らぎ始めています。
日本学生支援機構の奨学生に対するアンケートの中で、滞納が始まった理由も聞いています。その中には、少数ではありますが、「忙しかった(金融機関に行くことができなかったなど)」「返還を忘れていた」「返還するものだとは思っていなかった」という理由も存在していました。保護者からすると、わざわざ言うまでもない当たり前の常識であったとしても、子どもには伝えきれていないのかもしれませんし、子どもに説明するのが面倒で、そのままになってしまったこともあるかもしれません。進学されたご家庭からは、あらかじめ定めていた予算枠で教育費が収まったということをお聞きすることは非常にレアケースです。もし、奨学金を借りなかったとしても、「借金を返さないと大変なことになる」ということは社会に出ても無駄な知識になることはないでしょう。ぜひ、できるときに、お子さんと教育費に関する話題を心がけておきましょう。
私も、今回長女が高校受験を経験し、最終的には、どこでもよいから合格してほしいというところまで、気分は追い詰められました。いったん受験生活が始まると、勉強の成績に興味が集中し、その後のお金のことを子どもと話すのは難しい状況となります。そこで、そんな状況になる前に、ご家庭で話し合っていただきたいのです。

文部科学省では奨学金の改善策を議論する有識者会議を設置し、収入に応じて一回分の返済額が決まる仕組みや、給付型の奨学金を導入するなどの検討が始まっています。この改正の目玉として検討されている「所得連動返還型無利子奨学金制度」にも、所得が増えなければ、ずっと返さなくてもよいのではないかというデメリットも指摘され、まだまだ詳細は詰められていません。また、新しい制度というのは、定着するまでは時間がかかりますし、そもそも知らなければ使うことはできません。できるときに、親子で、「安心な借金などない」という意識を共有していただきたいものです。


プロフィール


當舎 緑

社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー。資格取得をはじめ、教育・育児、マネーなど一般消費者向けのセミナー、執筆活動を行う。子どもにかけるお金を考える会(http://childmoney.grupo.jp/)のメンバー、一般社団法人かながわFP生活相談センター(https://kanagawafpsoudan.jimdo.com/)の理事でもある。金融機関での年金相談はじめ、区役所、県民相談の窓口での行政相談、病院でのがん患者就労支援相談の窓口で一般向けの相談にも応じている。家庭では3児の母でもある。

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