進学校のネットいじめは「さらし型」 学力中位校は比較的軽い?-渡辺敦司-

3学期制の学校では2学期が始まって1か月、2学期制の学校では学期の変り目の時期ですが、保護者にとって依然いじめが心配なのではないでしょうか。とりわけ昨今は、目に見えにくい「ネットいじめ」が注目されています。小・中学校はもとより、高校でも進学校でさえネットいじめと無縁でないことは、昨年の記事で原清治・佛教大学教授らの研究グループの調査結果をもとに紹介しました。同グループはさらに詳しい調査を行い、今年も日本教育学会で結果を発表しました。

今回の調査では高校を学力上位・中位・下位の3層に分け、生徒にアンケートを行いました。その結果、学力層にかかわらず携帯電話(ケータイ)の使用率は100%近くに上っており、上・中位校で中学校までに70%前後が使用を開始しているのに対し、下位校では60%近くが高校からケータイを持ち始めたといった違いが見られました。
ネット利用に関して家庭でルールを決めているのは、上位校で37.5%、中位校で38.4%、下位校で27.2%。持ち始めた時期が遅い下位校で低めとなってはいますが、上位校でも60%以上の家庭でルールを決めていません。それだけ子どもを信用しているということなのでしょう。

しかし、ネットいじめの有無を尋ねると、「たくさんある」「時々ある」「たまにある」の合計は、上位校6.9%、中位校9.8%、下位校7.8%と、中位校で高めであるとはいえ、上位校だからといって極端に少ないというわけではありません。
違うのは、その内容です。上位校では、中傷メールやブログ、裏サイトでのいじめの割合は下位校とそれほど変わらない一方、個人情報流出や画像掲載といった「さらし」によるネットいじめが中・下位校に比べても高くなっていました。ネットいじめの重さを「重度」「中程度」「軽度」の3段階から選んでもらったところ、「重度」と答えた生徒が13.2%と、むしろ下位校の11.1%を上回る結果でした。これに対して中位校ではネットいじめの重さを「軽度」と答えた割合が81.1%を占めており、上位校や下位校と比べると軽いいじめが多いようです。下位校では「中程度」が59.7%を占めていますが、これには「(直接暴力を振るうといった)1対1のプリミティブ(素朴)ないじめが学校文化にまだある」ためではないかといいます。研究グループでは、学力上位校の特徴を「さらし型」、下位校の特徴を「直接攻撃型」と名付けています。

研究グループでは京都府内を中心に、教育委員会などと連携して啓発活動を行っています。中学生の調査では、学校単位の啓発活動が十分に行えていない郊外地区でネットいじめの発生率が比較的高くなっていました。啓発活動を行えば効果が上がることの現れでもありますが、その啓発活動にしても、ネットいじめの実態が学校や地域で違うわけですから、その状況に合わせて「カスタマイズ」(作り替え)する必要があるといいます。
これだけインターネットやケータイが普及した時代ですから、どの学校や家庭でも注意する必要があるのかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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