成年年齢が引き下げられたら

2016(平成28)年夏には、選挙権年齢が18歳に引き下げられて初めての選挙が行われる予定です。酒やタバコの年齢制限の見直しの議論も活発になっていますが、今回のコラムでは民法に定められている「成年年齢」が18歳に引き下げられると生活にどのような影響があるか考えてみたいと思います。



成年年齢が引き下げられたら


民法上の成年年齢とは

民法では、第4条に「年齢二十歳をもって、成年とする」と定められています。ごく簡単に言ってしまうと成年とは「大人として扱われる年齢」のことで、いろいろな意味で、それまで保護されていた立場から自立し自ら責任を負う立場になる年齢と考えてよいでしょう。
既に2009(平成21)年に法制審議会が法務大臣に対して「民法の定める成年年齢については、これを18歳に引き下げるのが適当」との答申を出しています。早晩、成年年齢が18歳に引き下げられる可能性は高いといえます。



未成年者契約の取消しとは

未成年者は未熟であるため「保護されるべき存在」との立場から、民法第5条では、未成年者の法律行為について定められています。結婚したことがない、契約の金額が自分で使うことを許されているお小遣いの範囲ではないなどの一定の条件はありますが、未成年者は法定代理人(通常は親)の同意を得なければ契約を結ぶことができないとされていて、これに反した契約を取り消すことができます。
現在は、成年年齢が20歳なので20歳の誕生日前に交わした契約は、法定代理人が取り消すことが可能なのです。



新成人を狙った悪質商法

法制審議会は、成年年齢の引き下げの実施時期について「若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である」としています。それは、未成年者取消ができなくなる成人になったばかりの若者をターゲットにした悪質な商法が横行していることを指しています。
なかには、誕生日を把握して20歳になったことを確認してから、アクセサリーや化粧品、エステの契約、DVD教材など高額な契約を結ばせる悪質な事業者が多数存在します。
現在でも20歳といっても「契約する」ことの意味や責任について知識がない若者が多いのに、成年年齢が引き下げられれば、18歳になった時点で責任を負わなければならないのです。



金銭教育・消費者教育の必要性

消費者被害に遭うからといって子どもをいつまでも保護の対象としていては自立を促すことにはなりません。2012(平成24)年に消費者教育推進法が施行され、ようやく学校・大学・地域における消費者教育が推進されつつあります。しかし、まだまだ学校教育のカリキュラムの中で金銭教育や消費者教育の時間をしっかり取るという余裕はありません。
成年年齢の18歳への引き下げをスケジュールどおり進めるためには、消費者教育がますます重要になります。その内容は、商品の適正な価格を感じる力を養ったり、「契約する」とは「責任を持つこと」、つまりいったん自分の意思で契約したものを解約することの難しさを教えたりすることです。こうした教育に関しては、2015(平成27)年1月の当コラムで紹介していますので、ご参考になさってください。



成年年齢引き下げの意義

選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若者が社会に関心を持ち、参加するきっかけとなることが期待されています。民法上の成年年齢が引き下げられれば、いや応なく社会の中で「大人として扱われる」ことになり、大人の自覚が生まれるでしょう。
若者にとっては、自分の意思で大きな買い物をしたり、部屋を借りたりできる自由を得るともいえます。
人はいつか自立しなくてはならず、大切なのはしっかりとした消費者としての教育を受けたうえで自立を促すことだと思います。


プロフィール


宮里惠子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー。生命保険をはじめ、教育費関連や住宅ローンについて雑誌・新聞・Webで執筆。地域に根をはるFPを目指して、横浜市北部エリアで活動している。若い世代に対する消費者教育の必要性を強く感じている。

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