先生が本を読む時間、15分も取れない!? その深刻な問題

「先生は忙しい」ということは、保護者の方々も感じることが多くなったように思います。では、先生が実際に一日をどのように過ごしているかというと、文部科学省でも2006(平成18)年に実施した調査が最新(その前は1966<昭和41>年)で、全国的・継続的な実態はなかなか明らかになっていないのが現状です。そんななか、日本労働組合総連合会(連合)のシンクタンクである、連合総合生活開発研究所(連合総研)が2015(平成27)年12月に行った調査で、興味深い結果が見られました。


先生が本を読む時間、15分も取れない!? その深刻な問題

  • ※連合総研シンポジウム 「教員の働き方」と「時間管理のあり方」を問う!
  • http://rengo-soken.or.jp/event/2016/02/post-10.html

同調査によると、先生が学校にいる時間の平均は、小学校11時間42分、中学校12時間15分でした。ベネッセ教育総合研究所が2010(平成22)年に行った「第5回学習指導基本調査」と比べると、12~13分長くなっています。連合総研が2007(平成19)年に行った労働者全般を対象とした調査では、会社にいる時間は平均9時間15分でした。これらは調査方法や対象が違っているため、単純な比較はできませんが、少なくとも学校の教員は普通の会社員と比べても職場にいる時間が数時間も長く、しかも年々悪化しこそすれ改善は進んでいないという実態が読み取れそうです。

その結果、睡眠時間の平均は、平日で小学校6時間4分、中学校で6時間3分と、労働者全般の7時間4分と比べると1時間短くなっています。休日も、学校や家で仕事をしていることも常態化しているため、各7時間25分、6時間52分と、労働者全般の9時間16分と比べ2時間ほど短く、慢性的な寝不足が心配になります。先生が不健康な生活を送らざるを得なくなっているということは、先生自身の健康問題はもちろん、それが子どもの指導にも直結するからです。

ちょっと見過ごしがちになりそうですが大きな問題と思われるものが、一日の読書時間です。平日は小学校14分、中学校13分で、労働者全般の35分と比べても半分です。休日は各42分・32分と増えるものの、労働者全般の1時間9分に比べれば、やはり本を読む時間が取れないようです。

一方で今、先生に勉強してもらう必要が、ますます高まっています。子どもの状況の複雑化・多様化には心理学や社会福祉の知識も不可欠ですし、安全教育や情報教育など、新しい課題も山積しています。何より教科指導でも、教科書どおりに毎年同じことを教えていればよいような時代ではありません。さらに、改訂が検討されている次期の学習指導要領では、教科を超えた資質・能力の育成と、そのために授業を一方通行式から「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)に転換することを求める方針で、そのためにも「自ら学び続ける」先生を増やそうとしています。ますます本を読んで勉強してもらわなければいけません。

しかし「本や雑誌どころか、新聞を読む暇もない」という嘆きは、もう何年も前から聞かれます。教育専門の出版社でも、売れるのはすぐに使えるノウハウ本ばかりだといいますし、教育専門誌の廃刊も相次いでいます。教員の長時間労働の改善は、労働問題にとどまらず、大きな教育問題として、改善が求められます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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