大学の半数以上に「アクティブ・ラーニングスペース」

文部科学省の「学術情報基盤実態調査」の結果によると、大学の半数以上が、学生のアクティブ・ラーニング(能動的学修、AL)のためのスペースを設けていることがわかりました。ALのためのスペース設置が半数を超えたのは、初めてです。大学では、学生のALに対する支援が着々と進んでいるようです。

  • ※平成27年度「学術情報基盤実態調査」の結果報告について
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/03/1368704.htm

調査は、国公私立大学779校(国立86校、公立86校、私立607校)を対象にして、2015(平成27)年5月1日現在の状況を調べました。それによると、主に大学図書館の中に複数の学生が集まり、さまざまな情報資源を活用して議論などを進めてく学習スタイルを可能にするなど、ALのためのスペースを設けているのは411大学(各74校、23校、314校)、52.8%となりました。

2012(平成24)年度調査では、ALのためのスペースを設けている大学は181校、23.3%でしたから、この3年間で、約2.3倍も増加したことになります。設置者別に見ると、図書館外も含めてALのためのスペースを設置している割合は、国立が86.0%(うち95.5%が館内)、公立が26.7%(同81.8%)、私立が51.7%(同79.9%)となる計算で、特に国立大学の図書館における充実ぶりがうかがえます。

問題解決学習・グループ学習・ディスカッションなど、ALの形態は多様ですが、大学において重要なのは授業だけでなく、日常的に学生同士がALをできる場が確保されていることです。このため大学図書館では、パソコンなどを使いながら討論できる特別なスペースを設けるところが増えています。一人静かに読書や研究にふけるという従来の図書館のイメージは大きく変わりつつあるようです。

学生同士のALをサポートするためのスタッフを、図書館に配置している大学も増えています。たとえば、図書館利用・文献検索サポートのための人員を配置しているのは、国立43校(2012<平成24>年度は25校)、公立12校(同1校)、私立166校(同62校)、分野別学習相談を行っているのは国立28校(同14校)、公立7校(同1校)、私立85校(同33校)などとなっています。

具体的な事例を見ると、東北大学では、グローバル化に対応したエリアを図書館に設けて、外国人留学生と日本人学生が学び合う場となる「グローバル学習室」を設けています。また、龍谷大学では、「スチューデントコモンズ」「グローバルコモンズ」「ナレッジコモンズ」という学習形態に応じたスペースを設け、それぞれに大学院生などによる「コモンズチューター」を配置しています。

ALを徹底するためには、単に授業の形態を変えるだけでなく、日常的な学習の中で学生たちの意識を変えていくことが必要です。

高校以下の教育でも、思考力・判断力・表現力などを育成するためにALの導入は、大きな課題となっています。生徒などのALを保障するための場を、授業以外でもつくるという発想は、高校以下でも必要になってくることでしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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