キャリア教育でアクティブ・ラーニングを先取り!

「キャリア教育」という言葉をお聞きになったことのある保護者のかたは多いでしょう。ただ、職業教育とか、進路指導と同じようなものだと思っているかたも、少なくないのではないでしょうか。というのも、学校の先生自体が、そう思っていることが多いからです。しかしキャリア教育には、広い意味があります。さらには、次期学習指導要領の目玉である学習方法「アクティブ・ラーニング」(AL)を先取りするものとしても、大きな期待が寄せられているのです。

社会的な自立のための力を育む

キャリア教育とはどういうものか、2011(平成23)年1月に、中央教育審議会が答申を出しています。タイトルに「キャリア教育・職業教育」とあるように、両者を明確に分けています。答申によると、キャリア教育は「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」だといいます。しかも、それを幼児期から、徐々に育まなければならないというのです。

考えてみれば、学校で学ぶことは、すべて社会で生きていくためのものです。教科の授業で学んだ知識を、教科の中だけにとどめるのではなく、そこで学んだ知識を活用して、社会などのあらゆる場で生かせる「力」が必要になります。また、学校生活を通じて身に付けたコミュニケーション能力なども、将来の社会生活で不可欠であることは、言うまでもありません。

答申では、そうした能力を「基礎的・汎用的能力」として、具体的には、(1)人間関係形成・社会形成能力(2)自己理解・自己管理能力(3)課題対応能力(4)キャリアプランニング能力……に整理しています。教科や学校生活で学んだ知識や技能も、基礎的・汎用的能力と結び付いてこそ、社会で生きて働く力となるのです。

教科を超えた授業、次期指導要領では当たり前に

そうした基礎的・汎用的能力は、座学だけで身に付くものではありません。キャリア教育の一環として、職場体験活動やインターンシップ(就業体験)を行うのも、職業を通じて現実の社会を体感し、学校での学びが将来に関係していることに気付かせる狙いがあるのです。

そうしたキャリア教育を理解するための好例として、国立教育政策研究所が作成したパンフレットがあります。先生方が「語る」だけでなく、子どもに「語らせる」、さらには子どもたちに「語り合わせる」ことを繰り返しながら、一人ひとりに気付きを促すことが、キャリア発達へとつながる……というのです。

教科や特別活動などの枠を超えた資質・能力を、ALを通じて深め、育成する……というのが、次期指導要領の大きなポイントです。今から本格的なキャリア教育に取り組むことは、そうした将来の授業を先取りするものでもあるのです。

そんなことに時間を割いて、学力は大丈夫だろうかと心配する向きもあるでしょう。しかし、学習意欲が低いことが、日本の子どものマイナス点だと指摘されています。勉強の意義を見いだし、学習意欲を高めることも、キャリア教育に期待される大きな効果なのです。

  • ※中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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