「共通テスト」導入で何を備えるべきか?

今の中学3年生以降が受験する2020(平成32)年度からの大学入試改革に関して、現行の大学入試センター試験に替わる「大学入学共通テスト(仮称)」(かつての「大学入学希望者学力評価テスト」)の実施方針や、個別大学の入学者選抜実施要項の予告が、近く正式に発表されます。新しい入試体制では、どのような対応が必要になるのでしょうか。

思考力なども求められる「記述式」

新しい共通テストでは、センター試験と同様、30科目についてマークシート式で出題する一方、国語では80~120字を3問程度、「数学I」「数学I・数学A」では数式や課題解決の方略を書き表す3問程度の「記述式問題」を付け加えます。これにより試験時間は、国語が20分増の100分、数学が10分増の70分となる見通しです。英語は、「話す」「書く」の技能も含めて評価するために、英検やGTEC、TOEFLなど民間の資格・検定試験を活用することにし、高校3年生の4~12月に受けた2回までの資格・検定結果を、実施団体から大学入試センターに送付してもらい、センターから受験大学に送付して、合否判定に生かす仕組みです。

国語の記述式といっても、好き勝手に感想を書けばよいというものではありません。多様な文章や図表などをもとに、求められる条件に従って情報を読み取り、統合し構造化して文章にまとめる「条件付記述式」であり、思考力・判断力・表現力が要求されます。

マークシート式問題にしても、幅広い資質・能力の育成を目指す次期指導要領の方向性を踏まえて、より思考力・判断力・表現力を重視した作問にするといいます。どうやら出題傾向は、ずいぶん変わりそうです。

個別選抜も含めて幅広い学力を問う

一方、大学入学者選抜実施要項では、これまでの「一般入試」「AO入試」「推薦入試」という入試区分を、「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」(いずれも仮称)に変更します。単に名前を変えるだけではありません。AO・推薦入試にも、共通テストを課すか、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、教科・科目のテスト、資格・検定試験の成績といった多様な選抜尺度のいずれかを活用することを必須化します。一般入試でも、詳細に記述された調査書や、志願者が提出した記載資料を、きちんと評価することを求めます。

こうした改革の背景には、高校までの教育を通じて、知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性の「学力の3要素」をバランスよく身に付けてもらい、それを共通テストと個別入試を組み合わせることで評価し、その大学にふさわしい入学生を選抜し、大学で資質・能力をさらに伸ばして、より社会に有益な人材として送り出してもらおうという「高大接続改革」の考え方があります。

もちろん、これまでのように受験勉強に取り組む必要は変わらないでしょう。しかし、知識をただ詰め込むだけでは通用しません。高校までの授業や、さまざまな教育活動で、思考力・判断力・表現力を鍛え、主体性・多様性・協働性を培ってこそ、それを基盤に、志望大学に入るための準備ができるのです。勉強の姿勢を早急に改め、学校の教育活動に積極的に取り組むことが求められます。

※高大接続改革の進捗状況
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/05/1385793.htm

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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