「仕事に人工知能」、既に避けられない…?

囲碁や将棋で人間を負かすなど、人工知能(AI)の急速な発展が注目されています。今の小学生が社会に出るころには、技術革新によって今ある仕事の半分が入れ替わるという将来予測も、国内外で発表されています。実際の職場では、どうなのでしょうか。

現段階で導入は少ないけれど

厚生労働省所管の独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が、企業と労働者に、イノベーション(技術革新)への対応について調査を行いました。企業の回答では、職場への導入状況について、「すでに導入済み」は0.8%にすぎず、「現在、導入を検討中」も3.8%にとどまっており、「現時点で導入予定なし」が94.9%とほとんどを占めています。導入に動いているのは、まだごく一部というのが現状です。

労働者に聞いても、職場にAIが入ったとして、「仕事のほとんどが代替可能だと思う」と回答したのは5.4%と少数で、61.7%と多くは「一部代替が可能だと思う」と考える一方、「代替はほとんどない」も30.5%を占めています。

もちろん職種によっても違いますが、「ほとんど代替可能」の割合が高いのは、業種で「鉱業、採石業、砂利採取業」(9.5%)や「学術研究、専門・技術サービス業」(7.6%)など、職種で「輸送・機械運転職」(8.1%)、「事務職」(7.5%)などでした。いずれも10%を上回ることはなく、少なくとも現在の職場では、まだまだ人間の能力が欠かせないと見ているようです。

しかし、AIの知識・スキルを習得するための対応・準備をしたいかどうかを尋ねると、「すでに対応・準備をしている」労働者は1.7%だけでしたが、「対応・準備をしたい」も28.1%ありました。職種にもよりますが、いずれ何らかの形でAIが入ってくることは不可避と考える労働者も少なくないようです。

次期指導要領でも準備

ただし、AIは今後、急速な発達を遂げることが予想されています。経済産業省所管の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、AIとその関連技術は現在まだ「幼児」の段階で、2020~30年でも仕事のサポートができる「小中学生」段階にとどまりますが、2030年以降は社会問題まで取り扱うことのできる「大人」の段階に到達すると予測されています。2045年には人間の知能を超える「シンギュラリティー」(技術的特異点)が到来するとも言われています。今の子どもたちが働き盛りの時期には、相当な技術革新があることは間違いありません。

そうした時代の備えとして、次期学習指導要領では、単なる知識・技能だけでなく、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の「資質・能力の三つの柱」をしっかり付けさせるとともに、小学校からプログラミング教育を行うなどして、AIに使われるのではなく、AIを使いこなせる人材を育成することを目指しています。

予測困難な時代にあっても、一人ひとりが未来の創り手になれるようにする……というのが次期指導要領の考え方です。職場でAIが必要になったら、大人になっても自ら学び、対応できるような意欲や能力を、学校時代に準備しておく。それが、次期指導要領のねらいなのです。アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を通じて、未来に対応できる資質・能力をしっかり付けてほしいものです。

※イノベーションへの対応状況調査(企業調査)・イノベーションへの対応に向けた働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)
http://www.jil.go.jp/press/documents/20170710.pdf

※NEDO「次世代人工知能技術社会実装ビジョン」
http://www.nedo.go.jp/content/100782828.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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