入学した大学以外でも授業が当たり前に!?

「大学の数が多すぎる」と指摘されることが、しばしばあります。主な入学年齢である18歳人口が減り、定員割れの私立大学が約4割を占めているのに、新設が毎年、相次いでいるからです。一方で、グローバル人材やイノベーション(革新)人材の育成、地方を活性化させるためにも、誰もが大学教育にアクセスできるようにすることも重要です。
中央教育審議会では現在、そんな大学の将来の在り方を検討しているのですが、対策の一つとして、大学間の連携を進めたい考えです。

単位互換は既に80%以上の大学で

受験生が大学選びをする際、その大学でどのような教育が受けられ、どのような資格が取れるのかが大きな決め手となっていることでしょう。

ただし授業を受けるのは、今や入学した大学だけとは限りません。他の大学などで受けた授業の単位を認定する「単位互換制度」を取り入れる大学は、2014(平成26)年度の段階で81.4%に上っています。とりわけ「大学コンソーシアム」といって、大学間や地域・産業界との連携を進める組織(2015<平成27>年3月現在で全国に45団体)を作り、そこに参加する大学間で相互に単位を認めている大学が59.2%あります。

さらに踏み込んだ連携を行っている大学もあります。京都市内にある京都工芸繊維・京都府立・京都府立医科の国公立3大学は、いずれも小規模で、一つの大学では幅広い教養科目をカバーしにくいことから、教養教育を共同化。他の2大学で受けた科目も、自分の大学の単位として認めています。

さらに兵庫教育・兵庫県立・神戸学院・神戸女子・神戸親和女子・武庫川女子の兵庫県内6大学は、国公私立の枠を越えて、教職科目を共同化しています。

地方創生のためにも連携が必要

文部科学省は、2005(平成17)年1月の中教審答申を受けて、そうした大学間の連携を促してきました。それによって、大学はもとより短大・高専・専門学校などの<共存共栄>を図り、全国どこでも高等教育を受ける機会を提供したい考えからです。そうした取り組みが今、政府が重視する「地方創生」の観点からも注目されています。

福井県は、大学進学率が高い一方、学生の県外流出が悩みとなっていました。そこで福井・福井県立・福井工業・仁愛の国公私立4大学は、地域に関する科目を提供し合って共同化し、インターンシップも拡充することで、地域に目を向けてもらい、人材の定着を図ろうとしています。

思い切って遠隔地の大学と単位互換を行う大学もあります。私立の沖縄国際大学は、札幌学院(北海道)・名城(名古屋市)・京都学園(京都市)・桜美林(東京都)・熊本学園(熊本市)、松山(愛媛県)の6大学と単位互換協定を締結し、毎年40人程度を<内地留学>させています。一度は県外に出てみたいけれど、経済的理由などから断念したという学生の希望を満足させるとともに、卒業後は地元への定着も図ろうという狙いです。

今や一つの大学で幅広い科目を提供することは難しくなっており、かといって単純に定員割れ大学を統廃合しては、地方が割を食ってしまいます。地方創生のためにも、今後とも大学間連携が進んでいくことでしょう。これからは、入学した大学以外でも授業を受けるのが、当たり前の時代になっていきそうです。

※地域における質の高い高等教育機会の確保のための方策について—連携と統合の可能性—(中教審 大学分科会・将来構想部会合同会議 配付資料)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/08/25/1394379_10.pdf

※中教審「高等教育の将来像」答申(2005年1月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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