オンラインで英語教育、その意外な効果

大学入試センター試験に替わって2020年度から実施される「大学入学共通テスト」では、その一環として、高校3年生の4~12月に受けた民間の英語資格・検定試験の結果が2回まで、実施団体から大学入試センターを通して、受験する大学に提供されます。これに対応するためにも、センター試験で問われる「読む」(筆記)、「聞く」(リスニング)だけでなく、「話す」「書く」を加えた「英語4技能」を、バランス良く育成することが急務です。

現在でも高校の英語の授業は英語で行うことが基本とされており、新学習指導要領では、中学校でも英語で授業を行うことが求められます(2021年度から)。
しかし生徒ばかりか、英語の担任でも英語で授業を行うのが苦手であることが少なくありません。そんな中、生徒に4技能を身に付けさせるため、オンライン学習を取り入れている中・高校も広がり始めています。

恥ずかしがって使えない生徒も話せるように

恵まれたICT(情報通信技術)環境を生かして教員が全員、電子黒板機能付きのプロジェクターを使って授業を行っている、さいたま市立大宮北高校。2014年度に設置された理数科(各学年1学級)の生徒には15年度から1人1台、キーボード一体のハイブリッド型タブレットを無償貸与しています。16年度からは文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、普通科(各学年7学級)の生徒も対象にした理数教育や、ICTをフル活用したアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)、グローバル時代を見据えた人材育成にも力を入れています。

17年度入学生からは普通科の生徒にも全員、個人負担ながら7インチのタブレットを持たせています。それを機に、ベネッセが中学・高校の教育現場向けに特別に開発したオンラインの英語スピーキング対策講座「Online Speaking Training(オンライン・スピーキング・トレーニング、OST)」を導入しました。

普段の英語の授業ではクラスメートの中で恥ずかしがって話せなかった生徒も、日本の中高生向けに研修を積んだ外国人講師から、画面越しでもマンツーマンのスピーキング指導を受けると、2回目ともなれば会話を楽しめるようになってくるといいます。

その成果は、さっそく今夏に行われたオーストラリア研修で発揮されました。現地の生徒と共に構成したグループを仮想の国と見立て、国際関係を議論したのですが、英語力が不十分で、早口の豪州英語に難渋しながらも、彼らに勝る科学的知識も発揮しながら堂々と渡り合って、引率する先生を驚かせたといいます。

控えめな国民性を克服へ

これまで中学校から高校までの6年間、あるいは大学まで10年間も英語を学んできたにもかかわらず、日本人が英語を使えるようにならなかったのは、英語を使う機会が少ないことに加えて、どうしても控えめに構えてしまう国民性があると指摘されています。
2011年度から小学校の高学年に外国語活動が導入されるようになったのも、2020年度から新指導要領で外国語活動を中学年に前倒しして高学年を教科化することになったのも、外国の人に対しても物おじしない小学生のうちから英語に慣れ親しむことを目指したものです。
新指導要領では、そうした小学校英語教育の成果を引き継ぎ、英語の授業を英語で行って4技能を総合的に育成し、高校につなげようとしています。
英語での授業が基本になっているはずの高校では現在、ペーパーテスト中心の大学入試にも影響され、英語での授業は低調なままですが、小学校から英語に慣れ親しんだ生徒の進学と、外部検定試験による英語4技能評価の大学入学者選抜が始まることによって、いよいよ生徒に4技能を身に付けさせる必要に迫られています。
OSTをはじめとしたオンライン学習は、そんな学校現場や生徒の大きな助けとなりそうです。

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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