高校生物も主体的な深い学びへ

高校の科目「生物」について、皆さんはどんなイメージを持っているでしょう。文系志望者が選択する理系科目というイメージも強いかもしれません。物理などと異なり暗記力で対応可能というのが、その理由の一つでしょう。
これに対して日本を代表する科学者の集まりである日本学術会議は、「高等学校の生物教育における重要用語の選定について」という指針を公表しました。同会議は、作成の理由を「生物学が、知識ではなく思考で取り組むべき学問であるという認識を取り戻す」ためと説明しています。高校の生物は、暗記科目から脱却できるのでしょうか。

「重要な用語」が2,000語以上も

バイオテクノロジーは最先端分野の一つで、生物学は日進月歩です。当然、高校の教科書に載る生物関係の用語も増加し、同会議によると延べ2,000語以上が覚えるべき「重要な用語」として現在の高校教科書に掲載されているそうです。これは物理や化学など他の科目と比べて膨大な量です。また大学入試の生物対策としても、「用語を覚えておかないと解答できない」「ひたすら用語を暗記」「広く浅く用語を詰め込め」などのアドバイスがネット上にあふれています。
一方、次期学習指導要領では、知識を活用した思考力・判断力・表現力の育成が大きな柱となっています。膨大な量の用語を覚えなければならない科目のままでは、2022(平成34)年度から高校で次期学習指導要領が実施されても、その狙いが十分に達成できない可能性があります。

このため指導要領の改訂方針を示した中央教育審議会答申(2016<平成28>年12月)でも「重要用語を中心に整理する」ことが課題として指摘されている他、大学入試改革を提言した文部科学省の高大接続システム改革会議の最終報告(2016<平成28>年3月)でも生物を「単なる知識の量や細かな知識の有無のみにより評価」をすることがないようにと注文しています。

512語に絞り思考力など重視へ

とはいえ、覚えるべき「用語」を削減することは、簡単にはできません。そこで同会議が、高校教科書に載せるべき用語のガイドラインを作成することにしたものです。具体的には英語の学術論文などでネット検索された頻度が高いものを分析するなどして、高校生が覚えておくべき用語として「最重要語」254語、「重要語」258語の合計512語を選定しました。
現在の教科書に載っている用語を約4分の1まで絞り込んだ計算です。具体的には「個人名は採録せず」「同義語は統一」「必要最小限」などの方針に従い、「DNA」などは最重要語のまま残り、それを発見した科学者の名前は重要語から除外された他、病名も細胞分裂の例として「がん」は残りましたが、「エイズ」などは外されました。

高校の次期指導要領は2017(平成29)年度末までに告示される予定で、それから教科書会社が新しい高校教科書を編集、文科省の検定を経て、2021(平成33)年度には教科書採択、2022(平成34)年度から各高校で新しい教科書が使用されることになります。ただ、同会議の指針には強制力はなく、あくまで「教科書中ゴシックで扱われる語を減らそう」というものだと説明しています。
高校の生物が、思考力などを重視するアクティブ・ラーニングなどのための科目になれば、生物の授業の様子や大学入試の問題も大きく変わることになるでしょう。

※高等学校の生物教育における重要用語の選定について
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h170928-1.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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