新指導要領で「学習評価」はどうなる?

新しい学習指導要領が2020(平成32)年度の小学校から順次実施されるのに備えて、中央教育審議会のワーキンググループ(WG)が、学習評価の具体的な議論を始めました。
学校の公的な記録である「指導要録」の在り方を検討するものですが、指導要録は通知表(通信簿)や調査書(内申書)の原簿ともなります。どのように改善されるのでしょうか。

複雑だった「観点」がすっきり

これまで学習評価といえば、指導要領が正式に改訂されたあとで、一から検討を始めるのが常でした。現在は「観点別評価」として、「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度)を、▽知識・理解▽技能▽思考・判断・表現▽関心・意欲・態度の「4観点」で評価することになっています。「知識・技能」を「知識・理解」「技能」で評価するとか、学習態度を「関心・意欲・態度」で評価するとか、複雑なものになっていた側面は否めません。

それが今回の改訂では、「教育目標・内容と学習・指導方法、学習評価の在り方を一体として」(2014<平成26>年11月の文部科学相諮問)検討することにしました。改訂の方針と同時に、学習評価の大枠も、2016(平成28)年12月の答申で示されています。
新指導要領は、どの教科等でも▽知識・技能▽思考力・判断力・表現力等▽学びに向かう力・人間性等……の「資質・能力の三つの柱」で育成しようとしています。そこには、狭い意味での「学力」にとどまらず、情意面も含めて、学校で身に付けた学力を活用しながら社会に出ても活躍できる「資質・能力」に高めようという狙いがあります。

これに伴って学習評価も、三つの柱に対応させる形で、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点にまとめることにしました。3要素を4観点で評価するのに比べれば、だいぶすっきりしたと言えます。なお、3番目については、「学びに向かう力・人間性等」には感性や思いやりといった幅広いものが含まれており、客観的な評価になじまないことから、従来のような「態度」で評価することにしたものです。

「高大接続」時代に意識を変える必要も

ところで通知表には、指導要録と違って、法的な定めも、決まった様式もありません。学習状況を児童生徒に伝え、次の学習に向けて励ますよう、各学校で工夫するものです。
一方、高校の調査書に関しては、「高大接続改革」の一環で、各大学が学力の3要素を全て評価して、合格者を決めることが求められています。とりわけペーパーテストでは測れない「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(「主体的に学習に取り組む態度」を大学入学者選抜用に言い換えたもの)を判定するためにも、学習評価の充実が求められています。

テストの点数や、通知表の評定を渡される側からすると、どうしてもその時点で成績が固定化され、進路が狭まっていくような気になってしまいます。しかし学習評価には、子どもの時々の学力などを判定するというだけでなく、学習の改善に向けて努力を促すという「形成的評価」の側面があることを、忘れてはいけません。
入学者選抜の改革が求められるなか、評価・評定に対しても、私たちの意識も変える必要があるでしょう。何より学習評価は、学校の各段階を通じて、子どもたちに社会で活躍できる力を徐々に付けさせるためのものなのです。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/080/index.htm

※中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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