「CEFR」っていったい何?

2021年1月から大学入試センター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」では、マークシート式問題の他、「聞く・読む・話す・書く」の4技能すべてを評価するため、GTECなどの英語資格・検定試験を活用することにしています。その際、「CEFRの段階別成績表示」を大学に提供するといいます。CEFRとは、いったいどういうものなのでしょう。

外国語の運用能力を測る欧州発の <国際標準>

CEFRとはCommon European Framework of Reference for Languages :Learning, teaching, assessmentの略称で、「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠」と訳されます。多言語・多民族の欧州で、語学シラバスやカリキュラムの手引の作成、学習指導教材の編集、外国語の運用能力の評価のため、20年以上にわたる研究を経て、2001年に欧州評議会(CoE、加盟47か国)によって定められたものです。英語に限らず、どの言語であっても、外国語として学んだ人がどれぐらい活用できる能力があるかを判断する基準とすることができます。
CEFRのレベル分けは、初心者のA1から、その言語を母語としている「ネイティブ」に近いC2まで、6段階あります。Aが「基礎段階の言語使用者」、Bが「自立した言語使用者」、Cが「熟練した言語使用者」を意味し、それぞれ上(2)・下(1)の2段階に分けて、具体的な運用能力の姿を示しています。
たとえばA2は「ごく基本的な個人情報や家庭情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係のある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる」といった具合です。
CoEには日本や米国、カナダなどもオブザーバー国となっており、CEFRは欧州域内のみならず国際標準としても認知されています。

政府目標も新指導要領も合わせる

共通テストに英語資格・検定試験を活用することをめぐっては、よく「学習指導要領との整合性が取れないのではないか」「複数の資格・検定試験を正確に比較することができないのではないか」といった批判が聞かれます。しかし、そうした<誤解>は、CEFRの考え方を取り入れることによって、簡単に解消できます。CEFRが欧州のどの国、どの言語にも活用できる基準であることを、思い起こしてください。
政府の第2期教育振興基本計画(2013~17年度)では、中・高校生の英語力を、特定の資格・検定試験の級に基づいて数値目標を示していました。次の第3期計画(2018~22年度)では、これを国際標準のCEFRに改め、中卒段階でA1レベル相当以上、高卒段階でA2レベル相当以上の生徒の割合を、いずれも50%以上にするとしています。
学習指導要領との関係で言えば、そもそも現行でも「学習指導要領の目標とCEFRは非常に近い目標が掲げられていると考えられている」(2016<平成28>年12月の中央教育審議会答申)とされています。しかも、新学習指導要領の英語(中学校は2021<平成33>年度から全学年で、高校は22<同34>年度入学生から全面実施)では、これまでの4技能を、CEFRに合わせて「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の5領域で目標を示し、目標を実現するための言語活動も、CEFRを参照しながら設定しています。
つまり、国際標準であるCEFRに沿った英語の資格・検定試験に取り組むことが、そのまま学習指導要領が目指す英語の運用能力を身に付けることに役立ち、かつ、志望大学が入学者に求める英語運用能力を証明してくれるのです。

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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