いよいよ到来する大学の「2018年問題」とは

大学入試シーズンの真っ最中ですが、大学関係者の間では「2018年問題」が大きな話題となっています。主な大学入学年齢である18歳の人口が、今年から再び減り始めるからです。それが大学経営のみならず、教育や入試にも大きな影響を及ぼすとしたら、志願者にとっても無視できません。大学をめぐって今、何が起こっているのでしょうか。

実質的な「全入時代」と定員割れの末に

少子化の進行が止まりません。厚生労働省の推計では、2017年の出生数が2年連続で100万人を割り、約94万人までに落ち込みました。それは18年後、進学率が大幅に向上しない限り、大学入学者数の減少につながっていきます。
18歳人口の推移を見ると、第2次ベビーブームに生まれた保護者世代の学生時代に当たる1992年には約205万人のピークを迎えました。その後、18歳人口は急減し、2009年には約121万人と、ピーク時の6割にまで縮小しました。
一方で、浪人を含む4年制大学への進学率は、26.4%から50.2%にまで倍増。4年制大学の数も、523大学から773大学へと、1.5倍に増えました。ただ、入学者数は約54万人から約61万人へと、1割強ほどしか増えていません。一部の難関大学などを目指して浪人する者を除いて、えり好みさえしなければ誰もがどこかの大学に入れるという、実質的な「大学全入時代」が到来していると言えます。そうしたなか、地方の小規模大学などを中心に、私立大学の約4割が定員割れになっています。
その後、18歳人口は120万人前後で安定してきました。本来なら、第3次ベビーブーム世代に当たるはずだった世代です。それが2018年には約118万人になり、その後も減少傾向が続いて、ついに2032年には100万人を割って約98万人になると予測されています。今後、大学経営に深刻な影響を及ぼすことは必至です。

既に始まっている教育・入学者選抜改革

ただ2018年はあくまで、きっかけにすぎません。文部科学省も、本格的な減少は2021年ごろからだと見ています。つまり2018年問題は、それまでに大学改革を済ませておかなければ、その後の生き残りもおぼつかないことを示すものだと見ることもできます。実際、各大学でも既に学部・学科の再編はもとより、教育改革などの努力を続けてきました。

文科省が進める高大接続改革も、それを後押ししています。「高大接続改革」は高校教育・大学教育・大学入学者選抜を一体で改革するものですが、これら3者の中では大学教育改革が先行しており、2017年4月からは各大学に「三つの方針」(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)の策定と公表が義務付けられました。これに従って各大学でも、大学4年間の教育と、それにふさわしい入学者選抜の方法が変わっていくことになります。入学者選抜改革は、決して大学入試センター試験が大学入学共通テストに衣替えするだけにとどまらないのです。

中央教育審議会も現在、大学を含めた高等教育の将来構想を示すことを検討しています。大学丸ごとだけでなく、学部・学科単位でも大学を超えた再編・統合を可能とする案も浮上しています。それは国立も例外ではありません。減少する18歳人口を補うため、政府が進める社会人の受け入れも今後、増えていくことでしょう。保護者の時代のようなイメージで大学を思い浮かべることは、もはやできないと言わざるを得ません。

(筆者:渡辺敦司)

※高等教育の将来構想に関する参考資料(2017年10月、中教審大学分科会・将来構想部会合同会議)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/10/27/1397784_14.pdf

※文部科学統計要覧(2017年版)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1383990.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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