大学への入学費用、幾ら掛かる?

国立大学の入試も前期試験の入学手続きが終了し、進学先を確定させた受験生も多いことでしょう。一方で保護者が頭を悩ませたのは、入学に必要な費用の確保ではなかったでしょうか。大学など高等教育に掛かる費用が高騰していることは、社会的な問題にもなっています。現状と課題を考察してみましょう。

減らしても平均85万円、高校から7年間で935万円余り

「国の教育ローン」で知られる日本政策金融公庫は毎年、教育費負担の実態調査を行っています。最新の2017年度結果(昨年9~10月にインターネット上で実施)によると、受験費用や入学しなかった学校への納付金も含めた「入学費用」の合計は、大学の場合、平均85万2,000円でした。前年度(98万円)に比べ13万円近く下がっています。
しかし、大学全体で納付金が大幅に下がったという話は聞きません。それでも私立大学理系(120万1,000円→87万円)や同文系(95万9,000円→92万9,000円)だけでなく、国公立大学(79万7,000円→69万2,000円)でも10万円以上の減少です。少しでも受験・入学費用を抑えようという家庭の涙ぐましい努力がうかがえます。

高校入学から大学卒業までに必要な費用は、平均935万3,000円にもなります。前年度(975万円)に比べれば40万円近く減っていますが、それでも7年間で900万円を超えるのは、なかなか大変です。しかも私大理系なら1,045万9,000円(同1,147万1,000円)にもなります。
そうした在学費用が世帯年収に占める割合は、年収200万円以上400万円未満の世帯で35.1%(同36.6%)、400万円以上600万円未満で20.2%(同21.7%)、600万円以上800万円未満で17.2%(同17.0%)、800万円以上で12.7%(同12.3%)と、低~中所得層では若干下がったものの負担感は相変わらずで、中~高所得層も横ばいか若干上がっているという結果です。

バイトも増やせないなかで仕送りが年52万円余り減

さらに深刻なのが、自宅外生の場合です。1年間の仕送り額は平均93万円(月額7万7,000円)で、前年度の年額145万1,000円(同12万1,000円)より52万円余りも減っています。
そうなると奨学金やアルバイトで補うしかありませんが、教育費の捻出方法を3つまで選んでもらったところ、「奨学金を受けている」が19.0%(前年度17.7%)と増えた一方、「子供(在学者本人)がアルバイトをしている」は19.4%(同19.6%)とほぼ変わっていません。

保護者の学生時代と違って、今や出席はもとより授業以外の勉強や学外での活動に時間を割く必要が格段に増しています。
バイトに精を出し過ぎると進級や卒業が危うくなるばかりか、就職時にも評価が低くなって内定が得られない……といった事態さえ心配されます。
そんななかで高騰する教育費や生活費を奨学金で賄おうとすると、卒業後に返還の重い負担がのしかかります。2017年度から年収に応じて返還額が変わる「所得連動返還方式」を選べるようになりましたし、引き続き返還期限猶予制度なども活用できますが、それも「返しやすくなった」というだけで、負担自体が軽減されたわけではありません。
政府が検討している高等教育の無償化も、対象は「真に必要な」子どもたちに限られ、その範囲も不透明です。家計負担に多くを依存する教育費の在り方そのものも議論する必要があるのではないでしょうか。

(筆者:渡辺敦司)

※日本政策金融公庫 教育費に関する調査結果
https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html

※奨学金事業の充実(文科省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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