国立大学の「統合」とは?

名古屋大学と岐阜大学が4月から、法人統合に向けて協議を始めています。文部科学省が検討している法改正に、いち早く名乗りを上げた格好です。
国立大学の「統合」とはどういうもので、その背景には何があるのでしょうか。また大学同士の連携・統合は、国立に限らないようです。

名大と岐阜大が協議始める

名大といえば1939年、最後の帝国大学として創立された「旧七帝大」(他に東京・京都・北海道・東北・大阪・九州の各大学)の一つで、9学部13研究科(大学院)などを持つ総合大学です。今年3月には文部科学省から、世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる「指定国立大学法人」に追加指定されました。一方、1949年創立の岐阜大は戦後、全国に整備された「新制大学」の一つで、5学部8研究科(大学院)を持ちます。

ところで国立大学の運営は2004年、国家公務員の数を減らす行政改革の一環として、文科省直轄から、すべて国立大学法人に移行しています。各法人は6年間の中期目標・中期計画を立てて文部科学相の認可を得なければならず、運営費交付金を受けるという点でも国の関与が大きいことに変わりはありませんが、自己資金の調達なども含めて運営の自由度は増しています。
国立大学は法人化を前にして、100大学が87大学に統合されました。現在は86大学ですが、2007年の統合では、大阪外国語大学が大阪大学に吸収された格好です。現在の法律では、1大学1法人となっているからです。
一方、国の財政難を反映して、法人化後に運営費交付金が毎年1%ずつ削減されるなど、各法人は厳しい運営を余儀なくされています。国内外で厳しい教育・研究の競争に打ち勝つためにも、国立大学はその規模にかかわらず経営基盤の強化が急務になっています。

「アンブレラ方式」の先駆けに

中央教育審議会では現在、2040年ごろの社会を見据えて、国公私立大学の規模を含めた高等教育機関の「将来構想」を検討しています。主な大学入学年齢である18歳人口は、2018年の118万人から長期的な減少期に入り、40年には88万人になると推計されています。そのころには現在ある自治体の半数が消滅している可能性も指摘されていますから(日本創成会議の推計)、地方国立大学といえども安泰ではありません。

そこで中教審の将来構想部会では、国立大学法人が複数の大学を傘下に持つ「アンブレラ方式」を検討しています。地域や機能別(単科大学同士など)で法人統合することにより経営基盤を強化することを目指すもので、従来の大学キャンパスは基本的に維持したい考えです。
国立大学協会も1月、国立大学全体の規模や全都道府県に1校(キャンパス)は整備するという現状を維持しながらも、広域的な役割分担を提言しています。制度改正が前提ですが、名大と岐阜大の法人統合は、アンブレラ方式の先駆けとして注目されます。

一方、同部会では、国立大学同士にとどまらず、地域の国公私立大学が設置者の枠を超えて地域連携のプラットフォームを形成する「大学等連携推進法人(仮称)」制度の創設も検討しています。これにより、現在の単位互換などにとどまらず、共同教育課程を設置したり、学生の転学がしやすくなったりすることも容易になりそうです。これからは一つの大学の中だけで学びが完結する時代ではなくなっていくのかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審大学分科会 将来構想部会「大学の「強み」の強化と連携方策について(案)」(4月17日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/04/18/1403936_4_1.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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