思っているよりも「給付型奨学金」利用は一般的?!

 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の2016(平成28)年度「学生生活調査」によると、同機構など何らかの奨学金を受給している大学生(昼間部)の割合は48.9%で、約2人に1人の割合で奨学金を受給しています。同調査による家庭年収区分別奨学金受給者の割合(大学(昼間部))は、年収500万円~800万円未満の家庭が3割以上を占めています。JASSOでは、2018(平成30)年度から給付型奨学金制度が本格導入されました。これまで貸与型奨学金のみだったことを考えると大きな一歩ではありますが、中所得層の家庭の救済にはなりません。

「予約型の給付奨学金制度」とは

 「予約型の給付奨学金制度」は、各大学が独自で実施している給付型奨学金の中でも、新入生を対象にした、受験前あるいは入学手続き前に奨学金の給付が約束される奨学金制度です。実際に受給するにはもちろん入学試験に合格することが必要ですが、JASSOの給付型奨学金と比較して、家計基準が緩やかな場合が多いのでご紹介したいと思います。
 今回取り上げる大学は一例で、「予約型の給付奨学金制度」を実施している大学は他にも多くあり、各大学で募集の方法、時期、定員、給付の条件などが異なります。記事は原則2017(平成29)年度の実施要項を参考に記述しています。実際には、お子さまが志望する大学のホームページや募集要項を必ず確認して最新の情報を得るようにしてください。

国立大学の例(お茶の水女子大学、東京大学)

 2011(平成23)年度、お茶の水女子大学は「“みがかずば”奨学金(予約型奨学金)」制度を設立しました。対象は現役生で在学する高校を通じて申請します。定員25名、給付額年間30万円、家計基準は給与所得者が年収900万円未満(給与所得以外492万円未満)、その他に学力基準があります。
 2013(平成25)年度には、東京大学が「東京大学さつき会奨学生(予約型奨学金)」制度を始めました。対象は現役生かつ自宅外から通学予定の女子学生です。定員約15名、給付額年間36万円、家計基準は「日本学生支援機構第1種の家計推薦基準」が目安、学力基準があり、在学する高校を通じて応募します。
 奨学金ではありませんが、東京大学では、以前から学部学生(留学生を除く)で世帯の総所得金額が218万円以下(給与収入のみの場合は400万円以下)の場合は、学力基準及び家計基準による選考のうえ、授業料の全額免除が許可されることがあります。

私立大学の例1(早稲田大学、慶應義塾大学、立命館大学)

 早稲田大学が2009(平成21)年度から始めた「めざせ!都の西北奨学金制度」は、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)以外の高校の出身者が対象です。家計基準が給与・年金収入金額(控除前)が年収800万円未満(その他、事業所得金額350万円未満)と比較的緩やかで、定員1200名程度、給付額は半期(春学期)分授業料相当額です。
慶應義塾大学の「学問のすゝめ奨学金」、立命館大学「近畿圏外からの入学者を支援する奨学金」も自宅外通学者の経済支援を目的にした「予約型の給付奨学金制度」です。

私立大学の例2(立教大学、関西大学)

 立教大学は「自由の学府奨学金」が1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)以外の高等学校等出身者対象、「セントポール奨学金」が1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の高等学校等出身者対象、の2種類の「予約型の給付奨学金制度」を実施しています。
関西大学「学の実化(がくのじつげ)」も関西圏外からの進学者と関西圏内からの進学者を分けた「入学前予約採用型給付奨学金」です。

家計基準のない給付型奨学金制度の例(神奈川大学、明治大学など)

 神奈川大学は、1933(昭和8)年度から「給費生試験」を実施しています。12月に実施されるこの試験に合格して入学すると、入学金・委託徴収金を除く初年度納入金を免除され、その上でさらに文系学部で年額100万円、理系学部で120万円(自宅外通学者にはさらに年額60万円プラス)の給付が4年間受けられるというものです。
 明治大学の「特別給費奨学金」は、「一般選抜入学試験」「全学部統一入学試験」および「大学入試センター試験利用入学試験」の合格者から成績優秀者に授業料相当分が原則4年間給付されます。申請の必要はなく成績順に選考され、合格通知とともに採用通知を受け取れます。

平均的な年収の家庭でも、住宅ローンの返済があったり、子どもの数が多かったり、介護が必要な家族がいたり、家計状況は様々です。大学進学後に学費を滞納して中退を余儀なくされたり、返還が必要な奨学金を多く借りて卒業後に延滞してしまう可能性を考えれば、「予約型の給付奨学金制度」を利用して入学できる大学を選択し、4年間安心して学ぶ機会を確保するという考え方もあるのではないでしょうか。

プロフィール


宮里惠子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー。生命保険をはじめ、教育費関連や住宅ローンについて雑誌・新聞・Webで執筆。地域に根をはるFPを目指して、横浜市北部エリアで活動している。若い世代に対する消費者教育の必要性を強く感じている。

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