個別大学の入試改革をどうする?

2021年1月から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」がどうなるのか、関心を集めています。ただ大学入学者選抜改革は、共通テストだけでなく、個別大学の選抜の在り方も問われていることを忘れてはいけません。
7月には「2年前ルール」に基づき、各大学の2021年度入試予告が集中すると見られます。各大学が受験生にどういう資質・能力を求めるかにも、注目する必要があります。

「3要素」選抜を大学等に委託研究

「高大接続改革」の一環として行われる大学入学者選抜改革は、高校までに培われた「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)をすべて評価し、その大学が求める者を選抜して、入学後の教育につなげようという考えがあります。
しかし大学によって、知識の量はもとより、思考力・判断力・表現力をどこまで求めるのかは違います。ましてや、主体性・多様性・協働性をどうやって測るのかになると、多くの大学にとっては、推薦・AO入試ぐらいしか経験がありません。高大接続改革が求める「3要素」選抜は、かなりハードルが高いのが実態です。

そこで文部科学省は2016年度から、五つの大学コンソーシアム(共同事業体)に委託して、個別選抜で思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・協働性を評価する手法を検討してもらっています。
委託テーマは(1)人文社会分野(国語科)(2)同(地理歴史科・公民科)(3)理数分野(4)情報分野(5)主体性等分野……で、大学など計21機関(うち国立13大学)が参加しています。

高1から学習履歴を詳細に

5月に大学入試センターが開催した全国大学入学者選抜研究連絡協議会(入研協)の大会では、「大学入学者選抜改革エキスポ」と銘打って、委託事業の研究成果が発表されました。ただ、2017年度までの段階では、思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・協働性をどう捉えるかを整理し、それが現行の入試でどう問われているのか(問われていないのか)を整理するだけで手いっぱいなのが現状だったようです。
しかも、個別選抜で主体性・多様性・協働性の評価は、現段階でほとんど手付かずです。たとえば国語科のコンソーシアム(北海道大学など5機関)が20大学の2015年度入試を調べたところ、評論・小説でも文や語句の意味、筆者の主張の根拠や理由を問うものに集中し、「学びに向かう力」(新学習指導要領で主体性・多様性・協働性に相当する資質・能力)はまったく問われていなかったことがわかりました。

そうした中で目を引くのが、主体性等分野の研究成果です。評価のもととなる学習履歴の記録を生徒が高校1年生の時から蓄積できる高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」(Jep)が既に立ち上がっており、5月末の段階で90大学・短大(うち国立15大学)が参加を表明。その多くは合否に影響しない追跡調査などのデータにとどめますが、11大学(同2大学)は来春の2019年度入試の一部にさっそく活用するとしています。
文科省は、高校が作成する調査書なども、詳細な記述ができるようにしたい考えです。受験生にとっては、記入する書類が増えるだけでなく、その過程で高校生活をしっかり振り返り、志望動機や入学後の学修計画などを明確にすることが求められそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入学者選抜改革推進委託事業
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1397824.htm

※JAPAN e-Portfolio
https://jep.jp/


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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