私立大の入試も改革が始まった!~早稲田大学3学部が2020年度実施の一般入試からセンター試験後継の大学入学共通テストを必須化!~

2018年6月7日に、早稲田大学から2020年度実施の一般入試改革についての情報発信がありました。これまでの一般入試から何が変わり、なぜ変更するのか。記者会見の場での同大学の発言内容も踏まえ、「大学入学共通テスト」(2020年度より実施されるセンター試験の後継試験)の活用を視野に入れた早稲田大学の、新たな一般入試のねらいとポイントを、今回は解説します。

今回の発信は、政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部の3学部から

早稲田大学の一般入試が変わるといっても、すべての学部の一般入試が2020年度から大きく変わるわけではありません。今回、一般入試の改革を表明したのは、政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部の3学部です。

3学部に共通するのは、「大学入学共通テスト」の必須化

今回、一般入試の改革を表明した3学部は、いずれも「大学入学共通テスト」の受験を必須としています。社会の劇的な変化やグローバル化が予測されるこれからの時代、変化に対して受け身ではなく主体的にかかわりながら自ら問題を解決できる人材を社会に送り出していくためには、大学入試を、高校で育成される知識・技能、思考力・判断力・表現力等の「学力の3要素」(図1参照)をしっかりと評価するものに変えていかなくてはならないと、早稲田大学は考えていました。
センター試験の後継試験として2020年度より実施される「大学入学共通テスト」は、「学力の3要素」のうちの知識・技能、思考力・判断力・表現力等を評価することを目的としており、まさに早稲田大学が必要としていた試験だと言えます。そこで、3学部は「大学入学共通テスト」を必須化することにしたのです。

政治経済学部の一般入試改革のポイントは3つ

ここからは、保護者の皆さんの関心の高い政治経済学部の一般入試改革の内容を詳しく見ていきます。2020年度に実施される一般入試の試験内容をまとめたものが図2の左側です。ポイントは次の3つです。

ポイント1 「大学入学共通テスト」の「数学Ⅰ・A」を必須化

図2の右側は2019年度実施の一般入試の試験内容です。こちらの3)を見れば分かるように、これまでの政治経済学部の一般入試では、数学は選択科目でした。
しかし、2020年度実施の一般入試では、「大学入学共通テスト」の「数学Ⅰ・A」の受験が必須化されます。これには、政治学、経済学を問わず、学修と理解に必要となる基本的な数学的思考力を持った生徒に入学してほしいということと、国立大学志望者の多い地方の受験生に、出願検討の機会を持ってほしいといった同学部のメッセージが込められています。

ポイント2 民間の英語の資格・検定試験の結果を配点化

「大学入学共通テスト」の英語の受験を必須化しているのにもかかわらず、民間の英語の資格・検定試験の受験も必須化しているのは、「大学入学共通テスト」の英語では見ることのできない力を見るためです。
「大学入学共通テスト」の英語で見ることができるのは、「聞く」と「読む」の2技能ですから、GTECを始めとした民間の英語の資格・検定試験を活用することで、残りの「話す」「書く」を含む4技能を見ようとしているのです。民間の英語の資格・検定試験の結果が占める配点の割合は15%程度の予定としており、配点で示すと、200点満点中の30点となります。
決して小さくない配点割合であることから、受験生の英語4技能の学習と体得の状況をしっかり見ていこうとする同学部の姿勢がうかがえます。

ポイント3 学部独自試験は非教科型に

3つめのポイントは「学部独自試験の非教科型化」です。学部独自試験は現行の教科・科目の学力を問う試験(図2右)から、「日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述解答を含む」試験に変わります。具体的には、次のような内容になるとのことです。

さらに、政治経済学部によると、提示された課題に他者と協働して取り組む方法を考えさせ、それを表現させる問題などを通じて、「学力の3要素」の「主体性」や「協働性」等を見ていきたいとのことでした。
具体的な問題イメージが分かるサンプル問題が8月のオープンキャンパスまでに公表される予定となっており、それが明らかになれば、受験生に求められる資質・能力が難化するのかどうかが分かりそうです。ただ、「政治経済学部の入試専用の準備をしなければならなかったこれまでの試験から、多くの受験生が受けやすい試験に変わる」(政治経済学部長)ことから、これまで同学部が志望大学の選択肢に入らなかった地方出身者や国立大学併願受験者の増加を期待しているとのことです。

他大学への影響は

早稲田大学はこれまでも教育や研究の改革に取り組んできていますが、今回の情報発信の場でも、中長期計画の「Waseda Vision150」で掲げるグローバルリーダーを多く輩出するために、高校教育等で育成される「学力の3要素」を重視した入学者選抜を実施する改革が急務となりつつあることを明らかにしています。実際に、全学共通の入試改革として、Web出願時に「主体性」「多様性」「協働性」に関する経験の申告を出願要件としています。
入学センターは、「単に入試制度の一部を変えるというものではなく、2021年度以降の高校と大学の教育改革の接続の実現を目指すもの」としています。
一方で、早稲田大学の動きに他大学が追随するかどうかは現段階では不透明です。ただ、早稲田大学がこれだけの大きな変革、メッセージを発信したことで、他大学の入試改革の検討や議論の活性化が促進されることは確かだと思われます。
早稲田大学の一般入試改革は、高大接続の実現を目指した教育を念頭に置いた取り組みであり、高校での学習が一層重要になることは、受験生にとっても歓迎できる改革と言えるのではないでしょうか。

転載元:Benesseマナビジョン(高校生の進路・進学を応援する情報サイト)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

ベネッセ教育総合研究所からの所感

プロフィール

小泉和義

小泉和義

  

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

  

【小学生、中学生のお子様を持つ保護者の方へ】

2020年度から大学入試制度が変わります。今の高校1年生から下の学年は、この新しい制度のもとで大学入試に挑戦をすることになります。
今回、私立大の早稲田大が2020年度から入試を変えるという発表をしました。この発表は、国公立、私立を含めた大学全体の入試変化に大きな影響を与えると言ってもよいでしょう。
保護者の方には、いま進んでいる入試の変化を、以下の3つのポイントで押さえておいていただきたいです。
① 知識・技能を問うだけでなく「思考力」「判断力」「表現力」を問う入試になる
② 英語は、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を問う入試になる
③ 入試が変わるだけではなく、小、中、高校でも、入試で問われる力を育成する授業に変わっていく(すでに変わり始めている)

入試も、学校の授業も変わる目的は、変化の激しいこれからの社会で生きていく上で、必要な力を身につけるためです。だから、学校の授業をしっかり受けることが、入試対策にも、子どもが将来生きていくための力を身につけることにもつながっているのです。

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