豪雨災害からも身を守れる子どもに

各地に甚大な被害をもたらした2018年7月の西日本豪雨は、全国どこでも自然災害が避けられない事実を改めて突き付けました。2011年3月11日の東日本大震災以来、子ども自身が主体的に判断して行動し、自らの命を守る必要性がクローズアップされています。どのような安全教育を行えばよいのでしょうか。

東日本大震災の教訓を踏まえ

学校安全をめぐっては、2008年6月に学校保健法が「学校保健安全法」に改正され(施行は09年4月から)、その中で、国に「学校安全の推進に関する計画」の策定を義務付けるとともに、地方自治体にも、国に準じる計画の策定に努めるよう求めました。2012年4月に閣議決定された国の第1次学校安全推進計画(16年度までの5年間)は、震災の教訓を踏まえ、学校教育活動の全体を通じて実践的な安全教育を推進することを打ち出しました。

具体的には、児童生徒自身に安全を守るための能力を身に付けさせるために、(1)日常生活における事件・事故、自然災害などの現状、原因および防止方法について理解を深め、現在や将来に直面する安全の課題に対して、的確な思考・判断に基づく適切な意思決定や行動選択ができるようにすること(2)日常生活の中に潜むさまざまな危険を予測し、自他の安全に配慮して安全な行動を取るとともに、自ら危険な環境を改善できるようにすること(3)自他の生命を尊重し、安全で安心な社会づくりの重要性を認識して、学校、家庭および地域社会の安全活動に進んで参加し、貢献できるようにすること……を求めました。

これらは、自分の命を守る「自助」にとどまりません。東日本大震災でも、避難所運営で中高生が積極的に役割を発揮する姿が、各地で見られました。安心な社会づくりに参加し、貢献できる力を身に付ける「共助・公助」の視点も重要です。

教科横断的な「主体的・対話的で深い学び」で

現在は第2次学校安全推進計画(2017~21年度)に移っていますが、子ども自身に安全を守るための能力を身に付けさせるという第1次計画の基調は変わっていません。
しかも、学習指導要領の改訂を受けて、学校安全でも「主体的・対話的で深い学び」を取り入れて、教科横断的に「安全に関する資質・能力」を育むこととしました。

具体的には、▽知識・技能=さまざまな自然災害や事件・事故等の危険性、安全で安心な社会づくりの意義を理解し、安全な生活を実現するために必要な知識や技能を身に付けていること▽思考力・判断力・表現力等=自らの安全の状況を適切に評価するとともに、必要な情報を収集し、安全な生活を実現するために何が必要かを考え、適切に意思決定し、行動するために必要な力を身に付けていること▽学びに向かう力・人間性等=安全に関するさまざまな課題に関心を持ち、主体的に自他の安全な生活を実現しようとしたり、安全で安心な社会づくりに貢献しようとしたりする態度を身に付けていること……の3本柱です。

指導要領の改訂を提言した中央教育審議会答申も、特別活動や保健体育、総合的な学習の時間はもとより社会、理科、道徳など各教科等を連携させて授業を展開し、先のような資質・能力を育成するよう求めています。そうした力を一人ひとりの子どもに着実に身に付けさせる教育を、改めて進めたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※第2次学校安全の推進に関する計画
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/__icsFiles/afieldfile/2017/06/13/1383652_03.pdf

※防災を含む安全に関する教育のイメージ(中教審答申 別紙)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/12/27/1380902_2.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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