今年の高1から消費者教育を強化へ

文部科学省は、2022年度の新入生から全面実施となる高校の新学習指導要領について、19年度から一部を前倒して実施する「移行措置」のパブリックコメント(意見公募手続)を行っています(15日まで)。
6月に公布された改正民法で成年年齢が18歳に引き下げられたことを受けて、19年度の1年生と2年生から家庭科で移行措置に入ることにしました。移行措置案の内容を見ていきましょう。

契約や消費者保護を学ぶ

現在でも若者が消費者被害に巻き込まれる事案は、後を絶ちません。とりわけインターネットの普及で、未成年もトラブルに遭うことが増えています。このまま成年年齢が引き下げられれば、18~19歳が保護者の同意なしに結んだ契約も当然、取り消すことができなくなります。そのため政府は、関係行政機関が連携して環境整備に取り組んでいます。

高校生でも消費者被害に遭う危険性は常にあり、社会に出る準備段階としての高校までに消費者教育を強化することは急務と言えるでしょう。
新指導要領で家庭科は、標準単位数2単位の「家庭基礎」と同4単位の「家庭総合」の選択必履修になりますが、いずれも契約の重要性や消費者保護の仕組みについて学ぶことにしています。とりわけ家庭総合では、ネット通販、マルチ商法・デート商法など具体的な事例を取り上げ、消費者のみならず生産者や販売者の立場になってロールプレイング(役割演技)をするなどして課題を追究することが期待されています。
消費者被害を未然に防止し、トラブルに巻き込まれた時の救済方法も理解しておくことで、若年のうちから自立した消費行動を取れるようにすることが求められます。

総合学習は「総合探究」に

移行措置は、来年度(2019年度)から、在籍する全生徒に適用することにしています(ただし、家庭科は19年度の1・2年生から、総合探究は19年度の1年生から)。
地理歴史科や公民科では、領土教育を前倒しします。領土教育は第2次安倍政権の発足以来、強化が図られてきましたが、新指導要領でも、他の国に実効支配されている竹島や北方領土が日本固有の領土であることや、日本が実効支配している尖閣諸島にも領有権問題が存在していないことを理解させるとしています。

高校の総合的な学習の時間は、「総合的な探究の時間」に名称が改められます。実社会や実生活と自己の関わりの中で、考えるための技法を自在に活用しながら、教科横断的・総合的な学習を通して、課題を発見・解決する能力を培います。大学入試改革をはじめとした高大接続改革でも、いっそう求められる力です。
特別活動も、移行措置の対象です。「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の三つの視点を踏まえ、自治的能力や主権者として主体的に社会参画する力を重視します。
既に18歳の高校生は、選挙権を持ちます。これからの高校教育では、すべての教育活動を総動員して、生徒が在学中に、情報を主体的に受け止め、自分の頭で考えて判断し、実際の行動に移せるような責任ある大人になれるよう、資質・能力の育成にますます力を入れてもらいたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※新高校学習指導要領 移行措置のパブリックコメント
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000995&Mode=0

※同 解説 家庭編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/17/1407073_10.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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