ICT、これで新指導要領は大丈夫!?

 文部科学省が、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を公表しました。公立小・中・高校などで、教育用コンピューターをはじめICT(情報通信技術)環境がどのくらい整備されているかを毎年3月1日付で調べているものです。特に今年は、数値を深刻に受け止めるべきかもしれません。2020年度の小学校から順次、全面実施に入る新しい学習指導要領で、ICT環境のさらなる整備が不可欠となっているからです。

政府目標に遠く及ばず

 政府の第2期教育振興基本計画(13~17年度)では、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数を3.6人/1台にする整備目標を掲げていました。1校当たり①コンピューター教室に40台②普通教室に各1台③ノート型やタブレットなどの可動式コンピューター40台……を整備することを想定した数値です。
 しかし、18年3月時点では5.6人/1台と、前年に比べ0.3人/1台改善しただけで、計画の最終年度にもかかわらず、目標値には遠く及ばなかったのです。

 これは、ICT機器の整備が地方自治体に任されているからです。国は数値目標を達成するため14~17年度の4年間に総額6,712億円(単年度1,678億円)を措置する整備計画を実施したのですが、補助金と違って、使い道が限定されない地方交付税措置のため、自治体の判断によっては、橋や道路など他の財源に回されるからです。
 電子黒板も2.3ポイント伸びたものの、26.7%と4教室に1台を超えた程度で、1教室に1台(実物投影機を含む)という整備目標には及びません。
 一方、普通教室の無線LAN整備率は90.2%(前年比1.2ポイント増)、超高速インターネット接続率も91.5%(同4.2ポイント増)と、数値目標の100%にあと一歩でした。可動式コンピューターは85万台余りで、前年に比べ1.5倍に急増しています。

「普段使い」へ予算化が急務

 問題なのは、目標値が達成できなかったというだけではありません。整備の遅れが新指導要領の実施に向けた授業の妨げになり、目指す効果を得られない恐れがあるからです。
 新指導要領では、「情報活用能力」を言語能力や問題発見・解決能力等と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整えて、学習活動の充実を図ることを明記しました。つまり、教科の授業で使いたい時にすぐ使える「普段使い」が求められているのです。
 そのために第3期教育振興基本計画(18~22年度)の策定に合わせて、3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピューターを整備する新たな整備目標も立てました。必要額は地方交付税を単年度1,805億円に増額して措置します。

 教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、都道府県単位で見ても、最も整備が進んだ県で1.8人/1台、最も遅れた県で7.9人/1台と、依然として大きな差があります。市区町村別になると、0.1人/1台から17.8人/1台までの開きです。さらに、都道府県単位では最も進んだ県であっても、0.8人/1台から13.5人/1台までと、県内で大きな差があるのが現状です。

 ICT環境整備の遅れは、デジタル教科書を導入する障壁となるなど、さまざまな影響が出てきます。何よりICT環境格差が、学力格差につながってはいけません。整備の遅れた自治体では、一刻も早い予算化が望まれます。

(筆者:渡辺敦司)

※2017年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1408157.htm

※教育の情報化の推進
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/main18_a2.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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