スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、今後の行方は

 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)という名前を聞いたことがある保護者の方も、多いのではないでしょうか。先進的な理数教育を行う高校などを支援する、文部科学省のSSH事業が始まって16年。これまでの成果と社会の変化を踏まえて、見直しを求める声が上がっています。高校受験で理系進学、SSH指定校を志望校に考えているご家庭は、今後の動きに注目したいところです。

16年間の成果が新学習指導要領に反映

 SSHの指定校になると、高度な理科実験を行ったり、企業や大学で最先端の研究を見学する授業を構想できます。そのための物品購入や研修・講師費用、発表会の開催など、通常の高校にはない充実した支援を受けられるのです。
 毎年夏に行われる「スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」は、全国から高校生や教員が集まり、取り組みの成果を発表する一大イベントとして知られてきました。現在の指定校は国公私立合わせて204校にのぼります。指定校はSSHであることを全面的に打ち出し、理数系に強い学校として社会にも発信してきました。

2022年度から実施される高校の新学習指導要領では、SSH事業の取り組みを踏まえた新たな科目として「理数探究基礎」「理数探究」が設けられるなど、教育課程にもよい影響を与えています。
SSHの生徒が国内外の科学技術コンテストで受賞することも珍しくなく「理系に進みたいなら高校がSSHかどうかを見る」といった着眼点も、高校受験ではポイントになってきました。

新規に「高大接続」の区分誕生へ

 その一方、SSH事業は政府の行政改革推進会議から「事業目的と内容の整合性があるか」「適切に国費が使われているか」などの指摘を受けていました。そこで文科省は有識者会議を設けて、今後のSSH事業のあり方を検討。9月に報告書を提出しました。
 SSH事業には「重点枠」と呼ばれる、より先進的な取り組みを希望する学校が最長3年間の指定を受けられる仕組みがあります。重点枠には「海外連携」「中核拠点」などの区分があるのですが、報告書では、ここに新たに「高大接続による一貫した理数系トップレベルの人材育成プロセスの開発・実証」を加えることが提言されています。より高度な理系人材育成に力点を置こうというものです。具体的には、高校が主体となって大学と連携し「高校段階」「入試から大学入学までの段階」「大学入学後」の各段階で、課題研究に取り組む構想を挙げています。

 さらに報告書は、指定校の毎年の採択校数を平準化し、取り組みが不十分な指定校に対して経費の減額等をする必要があると指摘、指定期間が長期にわたる学校には、より進化した取り組みを求めるなど、事業のコストパフォーマンスを厳しく求める形となりました。
 約20年間、「学力向上対策」「理科離れ対策」の高校版として全国展開されてきたSSH事業ですが、諸外国では、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の人材育成に国策として力を入れてきており、高校単体での取り組みだけでは次世代を担う人材育成としては環境が不十分という課題もあります。今後は理数系の力を身につけるだけでなく、身につけた理数系の力で「何をするのか」に焦点を当てた取り組みが求められそうです。

(筆者:長尾康子)

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 報告書
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/031/houkoku/1409229.htm

プロフィール

長尾康子

長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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