2019年から25年、45年の教育へ

2019年を迎え、いよいよ2020年度の高大接続改革(21年1月の「大学入学共通テスト」実施など)と教育課程改革(新学習指導要領が小学校から全面実施)が両輪となった「明治以来の大改革」(2014年11月、下村博文文部科学相=当時)に向けた準備が最終段階に入ります。
しかし、いずれの改革も、単に上級学校への進学や当面の学力向上といった直近の課題への対応にとどまらず、人工知能(AI)に仕事を奪われるかもしれないといった先行き不安な将来をも展望して、生涯にわたって子どもに必要となる資質・能力を身に付けさせることを目指した改革であることを見逃してはいけません。昨年末に相次いだ提言から、その意味を確認しておきましょう。

大学側と経済界から相次いで提言

日本学術会議は、「産学共想の視点から見た大学のあり方-2025年までに達成する知識集約型社会-」と題する提言をまとめました。現在の大学改革論議を、産学連携にとって「第二次世界大戦後初めての事態」だと捉え、近未来に向けた提言を試みたといいます。

それによると、団塊の世代が後期高齢者になるなど少子高齢化が急速に進む2025年までに、デジタル資源の確保と人材の有効な活用が、社会が持続的に発展するために必要だと指摘。この7年間を「日本の転換期」と位置付けて、実際には5年後までに雇用を含めた社会の構造を転換する必要があるとしています。
具体的には大学が、文系・理系という区分はもとより、人文科学や生命科学といった学問区分にもとらわれず、知の多様性と斬新な発想力を持つことが、AI時代に不可欠だと指摘しています。5年後といえば高校3年生も大学を卒業するころですから、決して近未来とは言えません。

一方、大卒者の採用側もである経済同友会は「Japan 2.0 最適化社会の設計-モノからコト、そしてココロへ-」を公表しました。1945年から2016年までの戦後70年間をJapan 1.0と位置付けたうえで、AIが人間の能力を追い越すとされる45年に向けて、「国家百年の計」でイノベーション(革新)を起こすための準備を行うよう求めています。
教育改革に関しては、2045年に向けて▽デジタル技術の活用により世界最高水準のオンライン教育が提供され、経済力や居住地域等によらず個性や能力に応じた最適な学習プログラムが受講可能になり、多様な個性を伸ばす教育システムが確立している▽全ての学生が高等教育を終えるまでに、物事の本質を見極める意識を持って行動し、変化に対応する柔軟性を身に付けている……などの姿を描いています。

不確実な時代に一生学ぶ力を

高大接続改革というと、とかく大学入試改革ばかりが注目されますが、大学教育改革や高校教育改革との<三位一体改革>であることを見逃してはいけません。
また新指導要領は、次の改訂までの10年間を見越しただけではなく、経済協力開発機構(OECD)が次世代に向けた資質・能力(コンピテンシー)の再定義を行うプロジェクト「Education 2030」とも連動しています。

このように、今年ますます加速していくであろう教育改革への取り組みは、すべて子どもの将来を展望したものであることに注意する必要があります。もはや保護者世代のように、良い学校に進学すれば、良い就職や生涯が保障されると期待できるような時代ではありません。不確実な時代を柔軟に生き抜くことができるようにするためにも、一生学ぶ力を子どもたちに付けさせることこそが大事だと言えるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※知識集約型社会の拠点となる大学のあり方-2025年までに達成する社会変革-
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t271-2.pdf

※Japan 2.0 最適化社会の設計-モノからコト、そしてココロへ-
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2018/181211a.html


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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