2019年、教育の課題は

今年1月19、20日に行われる大学入試センター試験も、来年(2020年1月)で30年の歴史に区切りをつけ、2020年度(2021年1月)から導入される「大学入学共通テスト」に切り替わります。
また、小学校で新しい学習指導要領の全面実施が始まるのは2020年4月からです。このように今年は、2020年度という教育の「大改革」を1年後に控え、本格的な準備が急ピッチで進んでいくものとみられます。課題は何でしょうか。

入試改革と教育課程改革が両輪で加速

共通テストをめぐっては、昨年11月に2018年度試行調査(プレテスト)が行われ、大学を会場にした本番に近い形で、約8万4,000人に6教科19科目等が実施されました(課された科目は参加者によって異なる)。
しかし、本番で実施されるのは、地理歴史・公民のA科目や専門学科の科目なども含め、現行と同じ30科目です。さらに、2019年度に予定していた「確認プレテスト」は行わず、本番の問題づくりに集中することになりましたから、プレテストで出題された19科目にしても、本番では出題傾向が変わることも予想されます。

<過去問対策> ができない以上、通常の高校での授業を大事にするという本道に返るしかありません。共通テストは、センター試験以上に思考力・判断力・表現力の測定が重視されます。それには、高校でも新指導要領(2022年度入学生から順次全面実施)を先取りした授業改善が不可欠です。今年2年生となる学年が初めて受ける共通テストの受験対策としても、高校での教育改革が急務なのです。
 一方、小学校では新指導要領の全面実施に向けた総仕上げが迫られます。移行措置1年目の2018年度は多くの学校が、3~6年生の外国語活動で増えた年間15時間分にどう対応するかに追われました。2019年度は必修化されるプログラミング教育など、残された課題への対応が求められます。

教員の「働き方改革」求められる中で

このように2019年は、大学入試改革を含めた「高大接続改革」と、新指導要領への対応という「教育課程改革」が両輪で進む20年度の「教育大改革」に向けて、取り組みがますます加速すると予測されます。しかし、こうした改革が、多忙化を極める学校現場にさらなる負担を強いる面があることも確かです。

中央教育審議会では「学校の働き方改革」をめぐって、1月中の答申に向けた議論が佳境を迎えています。1年間の変形労働時間制導入など法令改正が必要な課題もありますが、答申を受けて各地方や学校でも、先生方の勤務時間を縮減するために、さまざまな対策を検討しなければなりません。

とりわけ答申と併せて策定される、公立学校教員の勤務時間に上限を定めるガイドラインへの対応が喫緊の課題になるでしょう。もっともガイドラインでは、民間企業と横並びで、1日の勤務時間を超えた在校等時間の合計が、月45時間、年360時間を超えないようにするとしたうえで、学期末などの繁忙期には月100時間未満まで認めるなどの特例も認めます。
勤務時間の縮減には、答申が提言する(1)基本的には学校以外が担うべき業務 (2)必ずしも教師が担う必要のない業務 (3)負担軽減が可能な業務……という教員の「業務仕分け」が不可欠です。それには教員以外のスタッフ充実だけでなく、地域や保護者の協力と負担も求められます。

このように2019年は難しい船出となりそうですが、保護者も含めた学校関係者が知恵と汗を出し合って、子どもたちの未来のために課題を克服していく必要があると言えるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入学共通テスト(大学入試センター ホームページ)
https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/index.html

※新学習指導要領(文科省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm

※学校の働き方改革・ガイドライン案(意見募集は既に終了)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/12/1411512.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/12/1411514.htm


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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