アダプティブラーニングとは?気になるメリットや学習方法も紹介

アダプティブラーニングとは、AI技術などを活用して生徒ひとりひとりに合った課題を提案し、効率的で効果的な学習を行う方法です。新しい時代に対応する人材育成のための学習方法のひとつとして注目されています。ここではアダプティブラーニングの効果などについて紹介します。

この記事のポイント

「アダプティブラーニング」とは?

アダプティブラーニングとは、生徒ひとりひとりに適した学習内容を提供することによって、より効率的で効果的な学習を目指す方法です。通常の授業は1つのカリキュラムをクラス全員で一斉に受けますが、生徒たちの弱点や理解度はそれぞれ違うため、提供される学習内容が本人に合っていない場合もありました。 アダプティブラーニングでは、AIなどの技術を使ってより客観的にデータを分析し、生徒の苦手な分野や習熟状況を明らかにして、それぞれに合った教材を提案します。それによって、より細やかで効果的な学習を行うことができるようになります。

アダプティブラーニングが注目される理由

アダプティブラーニングが注目される理由として、文部科学省など国がアダプティブラーニングを進めていることが挙げられるでしょう。文部科学省が平成28年に発表した「成長戦略の進化のための今後の検討方針」では、これからの社会において、課題を自分で発見し、解決していくための知識や感性、リーダーシップなどを伸ばす必要があるとされています。 そして実現のための方法のひとつに、習熟度などのデータを活用し、それぞれの生徒に応じた学習(アダプティブラーニング)を行うことが挙げられています。新しい時代に対応した人材の育成にアダプティブラーニングが活用されていることが、注目度を上げていると言えるでしょう。

アダプティブラーニングの種類

アダプティブラーニングには、ルール型とアルゴリズム型のふたつの方法があります。ルール型はそれぞれの問題に対する正解・不正解の結果から、次の問題に何を出すか、場合分けのルールを設定しておく方法です。この場合、事前にさまざまなコースを決めておく必要があります。 アルゴリズム型は、学ぶ人によって最もよい流れをリアルタイムに計算していく方法です。その都度大量の計算をする必要がありますが、それぞれの問題の正解・不正解の結果を受けてリアルタイムにコースを決めることができます。

アダプティブラーニングのメリット5つ

アダプティブラーニングは、生徒ひとりひとりの状況に応じて課題を出すという方法です。この方法は、生徒だけでなく教員など教育を提供する側にも大きなメリットがあります。ここからは、アダプティブラーニングのメリットについて5つ紹介します。

【1】学習効率が期待できる

アダプティブラーニングでは、生徒が苦手とする分野や理解できていない分野を重点的に学習することができます。 理解ができておらずよく間違える分野では、苦手としている問題がくり返し出題されます。何度も間違えると復習用の教材が提示されて、なぜ間違えるのかという原因を見つけることが可能です。 自分が理解できていない所を理解するまでくり返し学習し、弱点をクリアしてから先に進むことができるため、わからないまま先に進むということを防ぐことができます。 逆に得意な分野では自分のスピードでどんどん先に進むことができ、周りのスピードに合わせる必要がないため、効率的にレベルを上げていくことができるでしょう。一斉授業では、わからないまま先へ進んでしまう、すでにわかっているのに先に進まない、ということがありますが、アダプティブラーニングでは個人のレベルに合わせて進めることができるので、学習効率のアップが期待されます。

【2】指導者による質の違いが少なくなる

個人のレベルに合わせた学習は、今までは指導者の経験や勘によって決められていました。この方法では、指導者の指導力や相性によって、学習の質にバラつきが出るということがありました。アダプティブラーニングでは、大量にある客観的なデータを分析して学習プログラムを提示するので、指導者によって質に違いが出ることが少なくなります。指導者の側としても、学習の質を一定に保つことができるため、大きなメリットと言えるでしょう。

【3】過去の学習データを活用できる

アダプティブラーニングでは、個人のデータだけでなく過去に学習した生徒たちのデータを分析し、活用することができるのも大きなメリットです。たとえば難関校の合格者や塾の成績優秀者などの学習履歴をデータ化することで、どのような学習が効率的かを分析していくことができます。 また、どのような場合にどのような問題につまずきやすいかなどを客観的なデータとして提示してくれるので、助けが必要な生徒に教員がすぐに対応することができ、効率的で効果的な学習につながります。

【4】個々への充実した指導ができる

アダプティブラーニングでは、問題の正誤表や点数だけでなく、どのくらい学習しているか、どの問題にどれだけ時間がかかっているかなど、多くのデータを集めることができます。 それらを分析することによって、教員がリアルな授業での進め方、指導の仕方、フォローの仕方などに利用することができます。アダプティブラーニングは、教員の代わりになるのではなく教員の指導を支援するものとして利用できる点も大きなメリットです。

【5】カリキュラムや教材の見直しができる

アダプティブラーニングでは個人がどのように課題を進めていったか、どこまで理解したかだけでなく、それぞれの課題が学習の習熟にどれだけ効果的だったかを分析することができます。それぞれの課題を分析することによって、教育カリキュラムや教材について定期的に見直し・改善することができる点もメリットと言えるでしょう。

アダプティブラーニングのデメリット

アダプティブラーニングには多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。次に、アダプティブラーニングのデメリットを2つ紹介します。アダプティブラーニングの効果的な実現のためには、これらの課題に取り組む必要があります。

環境を整える必要がある

アダプティブラーニングを行うには、教育用パソコン・タブレットの導入やネットワークの整備など、教育現場でのICT(情報通信技術)環境の整備が必要です。しかし、この環境は自治体や家庭によって格差があるのが現状です。すべての人がアダプティブラーニングを受けることができるようになるには、まずこれらの環境を整える必要がある点がデメリットだと言えるでしょう。

指導者がICTについて知っておく必要がある

アダプティブラーニングの実現には、ICTを理解した指導者が不可欠です。 しかし、令和3年に文部科学省が行った調査では、義務教育段階におけるGIGAスクール構想の課題として、一番目の課題に「学校の学習指導での活用」、二番目の課題に「教員のICT活用指導力」が挙げられました。アダプティブラーニングを効果的に実現するためには、指導者のICTに対するスキルを挙げる必要がある点もデメリットだと言えるでしょう。

出典:GIGAスクール構想に関する各種調査の結果|文部科学省
参照:https://www.mext.go.jp/content/20210910-mxt_jogai02-000011648_001.pdf

アダプティブラーニングと関連する学習方法5選

アダプティブラーニングは、ひとりひとりに合わせた学習を提供する学習方法です。次に、アダプティブラーニングと関連する学習方法として、EdTech・eラーニング・LMS・ゲーミフィケーション・アクティブラーニングの5つについて紹介します。

【1】テクノロジーを駆使した「EdTech」

EdTechは、教育(Education)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。技術を活用して教育を支援するサービスや仕組みのことを指します。たとえば、生徒向けの学習支援システムや、教員のための授業支援システム、外国語などをインターネットで学習できるサービスなど、EdTechと呼べるサービスが多く出てきています。アダプティブラーニングもEdTechのひとつです。教育現場でもテクノロジーを学習に活かす取り組みが進められていて、たとえば経済産業省では、ひとり一台の端末とEdTechを活用し新しい学び方をさぐる「未来の教室」事業を進めています。

【2】インターネットを利用する「eラーニング」

eラーニングとは、おもにインターネットを使った学習方法のことを指します。インターネットを使うことで、場所や時間に左右されず、教材をダウンロードして学習したり、オンライン授業を受けたりすることができます。 成績や学習状況をインターネットを通じて集めるアダプティブラーニングも、このeラーニングのひとつの方法に含まれると考えられるでしょう。

【3】学習管理システム「LMS」

学習管理システム「LMS」は、Learning Management Systemの略語です。生徒個人の学習状況のデータや教材の配信などをひとつに統合したシステムのことを言います。生徒個人のデータを分析し、分析結果に沿って学習を進めるアダプティブラーニングにとってLMSは欠かせないシステムです。

【4】ゲームの要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」

ゲーミフィケーションとはゲーム以外の分野に目的の設定、目標クリアの報酬、ユーザー同士の交流など、ゲームの要素を取り入れることです。教育現場においては冒険を進めるように問題を解いていったり、課題をクリアするとキャラクターのレベルがあがったりと、ゲームで遊ぶように勉強できる学習プログラムに活かされています。

【5】主体性が需要な「アクティブラーニング」

アクティブラーニングとは自分から進んで学習することを意味します。ただ教師の授業を聞くだけの受け身の学習ではなく、グループワークや体験学習などの主体的で対話的な学習です。教育現場においては冒険を進めるように問題を解いていったり、課題をクリアするとキャラクターのレベルがあがったりと、ゲームで遊ぶように勉強できる学習プログラムに活かされています。

アダプティブラーニングについて理解を深めよう

アダプティブラーニングとは、AIなどを活用することで生徒ひとりひとりに合った学習内容を提供し、効率的かつ効果的に学習を進めていく方法です。アダプティブラーニングを実現することで、子どもたちの個性や理解度に合った学習を進めることができます。情報化社会が進む中、自分の力で問題を発見し、解決してさらなる進化に進める知識や能力を伸ばすための方法のひとつとして、アダプティブラーニングは注目されています。AIやICTを活用して学習データの分析が進んでいく中で、これからアダプティブラーニングはさらに進んでいくと考えられます。アダプティブラーニングのメリット・デメリットを知り理解を深めていきましょう。

[参照元]

『教育の情報化について—現状と課題—』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1069516_03_1.pdf

『Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/06/20/1406021_18.pdf

『GIGAスクール構想に関する各種調査の結果』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/content/20210827-mxt_jogai01-000017383_10.pdf

『「未来の教室」を創ろう!』(経済産業省)

https://www.learning-innovation.go.jp/

『アクティブ・ラーニングに関する議論』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/04/1361407_2_4.pdf

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