小学校実践例

※各実践例において,「Cds#XX」と表示しているものはすべて,Cdsの通し番号を示しています。
※文中の氏名や役職,学校名は,実践当時のものです。

3年生 国語科 「こんな係がクラスにほしい」(葉山町立長柄小学校 佐藤弘恵先生)

実践の概要

「こんな係がクラスにほしい」の単元で、Cdsを活用した授業を行いました。授業の内容は、「もっと楽しい学級にするために、どんな係があるとよいか?」をテーマにした話し合いです。3年生ではCdsを活用する授業を初めて行ったため、めあてにするCdsを3つに絞り、各時間に1つずつ設定しました。本単元で思考力のめあてとして設定したCdsの項目は次の通りです。
[課題設定]
Cds#1 日常生活や社会的事象から課題を見つけることができる
[情報収集]
Cds#6 複数の情報を目的に沿って整理することができる
[まとめ・表現]
Cds#18 相手や目的,状況に合った方法で表現・説明することができる
実践内容と、各時間で特に育成目標としたCds項目は、表の通りです。
表 めあてとしたCdsの項目に対応する学習活動
実践内容 特に育成目標とするCds項目
1時間目

・4月から行ってきた係をふり返る

・学校生活をより良くするために各係がどのような取り組みをしてきたかグループで話し合った後、全体で共有する

・この後のグループ活動の手順を共有し、学習の見通しをもつ

・グループで「ほしい係」を考える。その係がほしい理由や目的、仕事の内容を考える(付箋・模造紙・タブレット・ノート活用)

・ふり返りをする

Cds#1
2時間目

・本時の学習のめあてをグループごとに確認する

・考えをまとめる話し合いの時に大事になることを確かめる

・グループで話し合い、考えを整理してまとめる(「ほしい係」を考える際に、もっと楽しい学級にするためにどんな係があったらよいかを考える)(写真)

・ふり返りをする

Cds#6
3時間目

・本時の学習のめあてをグループごとに確認する

・グループで決まった係と話し合いの様子を報告する

・話し合いにおいて大切なことをまとめる

・ふり返りをする

Cds#18
写真 考えを整理する方法は子どもたちに任せたところ、子どもたちは付せんの3色をそれぞれに意味づけをしてまとめていました。

本実践を終えて

Cdsによって教員の声かけの視点が明確に

 活動を通じて子どもがどのような力をつけられるかという観点で各時間に1項目ずつ、Cdsでねらいを設定したことで、授業の目的を明確に意識して指導に臨むことができました。例えば、話し合いの際、「楽しいクラス」という観点を挙げていなかったグループには声をかけ、それを意識できるようにしました。ほかにも、子どもが考えを深められるよう、「配り係」を挙げた2つのグループに「『みんなが楽しむ』という観点ではどうかな?」と問いかけました。1つのグループは「そうか、違うかも」と考え直し、もう1つのグループは「先生が楽になれば、みんなも楽しいと思う」とそのまま話し合いを進めていました。それぞれのグループが自分たちなりに「楽しむ」を捉え、考えを深めていました。

子どもも授業のねらいを意識

 子どものふり返りでは、3つのCds(今回の授業用に各Cdsを書き換えたもの)の中から頑張ったものを選択させました。子どもには各授業のねらいを伝えていませんでしたが、各時間でねらいとしたCdsを頑張ったと選ぶ子どもが多くいました。教員がねらいを意識して授業することで、子どもにそのねらいが広がるのだと実感しています。
 子どもの活動の様子やふり返りの自由記述からは、多くの意見から絞り込む大変さを実感しつつも、相手の考えを考慮しながら話し合う大切さを学んでいる姿が捉えられました。どの子どもも意欲的に話し合いに参加しており、この授業で得た観点は、その後の学級活動における後期の係決めにも生かされ、「カラオケ係」や「工作係」などへの積極的な立候補へとつながりました
 今回の成果を踏まえ、同様に課題設定のプロセスを重視する「総合的な学習の時間」においても、Cdsを活用した授業づくりを検討していきたいと考えています。

6年生 体育科 「ボール運動(バスケットボール)」(葉山町立長柄小学校 太田都羽佐先生)

実践の概要

6年生のバスケットボールの単元で、Cdsを活用した授業を実践しました。ボールを持っている時と持っていない時の動きを、子どもが知識・技能として身に付け、どのような作戦や戦術を用いると良いかを仲間と考えるという内容です。Cdsをめあてとすることで、技術の習得にとどまらず、動き方を意識させ、知識・技能と思考力を結び付けることをめざしました。本単元で思考力のめあてとして設定したCdsの項目は次の通りです。
Cds#1 日常生活や社会事象から課題を見つけることができる
Cds#6 複数の情報を目的に沿って整理することができる
Cds#9 情報を整理し、焦点化する内容を特定することができる
Cds#17 得られた情報や経験等を関係づけて考察した結果に基づいて、推論したり解決策を見いだしたりすることができる
Cds#19 問題解決の結果やそのプロセスを客観的にとらえ、良い点や改善点を見いだすことができる
Cds#20 学習内容や振り返りに基づいて、新たな課題を見いだすことができる
Cds#21 考えや結論に対して他者の考えをふまえながら再検討することができる
実践内容と、各時間で特に育成目標としたCdsは表の通りです。
表 めあてとしたCdsの項目に対応する学習活動
実践内容 特に育成目標とするCds項目
1時間目

本単元の学習の見通しを持つ

・バスケットボールについて、「楽しさや喜びを感じる時」「難しいとかんじるところ」「プレーをする上で大切なこと」について、子どもにアンケートを実施

・結果を踏まえて、子どもたちが単元のめあてを設定

Cds#1
2時間目

ボールを持っている時の動き方①、バスケットボールのルールについて知る

・ボールハンドリング

・パス(チェストパス、バウンズパス)

・ドリブル

・ミニゲーム(3×3を簡易化したゲーム)

3時間目

ボールを持っている時の動き方②

・シュート(斜め45°からのシュート、ドリブルからのシュート、パスをもらってのシュート)

・ボールを持っている時の動き方をフローチャートでパターン化し、プレーの原則を学ぶ(シュートエリアから離れている時、シュートエリアの中にいる時など)

・ミニゲーム

Cds#6
4時間目

ボールを持たない時の動き方

・ボールを持たない時の動き方をフローチャートでパターン化する(ボールを持った仲間と自分の間に守備者がいる時、ボールを仲間にパスした時 など)

・ミニゲーム

Cds#6
5時間目

プレーがうまくいった時といかない時の違いから、チームの課題を見つけ、解決の方法を考える

・チームで話し合う(前時までのミニゲームの中でうまくいったプレーとうまくいかなかったプレーの違いや、練習でうまくできてもゲームではできない理由など)

・バスケットボール特有の動きの練習(パッシング&ラン、カッティングなど)

・3×3ゲーム

Cds#9
Cds#17
6時間目

スポーツに特化した映像分析ツールを活用してチームの動きを分析し、作戦を考える

・前時の3×3ゲームの動画を見て、チームの強みと弱みを見つける(空間をうまく利用して攻める動きや、敵からスキをつくる動きなど)

・チームの強み、弱みを活かした戦術フローチャートを作成し、作戦名を考える

Cds#19
7時間目

前時に考えた作戦と戦術フローチャートで試合を行い、その達成度をチームでふり返る①

・作戦と戦術フローチャートの確認

・チーム練習

・3×3ゲーム

Cds#20
Cds#21
8時間目

前時に考えた作戦と戦術フローチャートで試合を行い、その達成度をチームでふり返る②

・作戦と戦術フローチャートの確認

・チーム練習

・3×3ゲーム

Cds#20
Cds#21
9時間目

本単元の授業をふり返る

・個人でのふり返り(自分のベストプレーとそれができるようになったプロセス、仲間のベストプレーと課題解決に向けて効果的だった話し合い・練習方法など)

・チームでのふり返り(個人でのふり返りをチームで共有し、チームでのベストプレーとそれに至るまでのプロセスをふり返る)

本実践を終えて

より良いプレーを考える子どもたち

 子どもにはふり返りの視点として、「わかったこと・できるようになったこと」「チームの良かった点・課題」「次の目標」を示しました。単元の前半ではできたことや気持ちに関する記述が中心でしたが、後半になるにつれ、「どうすればプレーやゲームが良くなるか」といった記述に変化し、自ら学びを調整しながら粘り強く取り組む姿が見られました。勝ち負けだけにこだわらず、「動きがどう変化したか」といったプロセスを楽しみながら、考えながらプレーするようになったことは大きな成果です。

新たな指導のアイデアが生まれた

 教員側としても、Cdsの文言が明確なため、思考・判断・表現の評価規準が定まり、子どもの見取りをより的確に行うことができました。当初、Cds#6などの情報整理の項目は体育になじむのか疑問でしたが、Cdsの視点を持ったことで「ボールを持った時の選択肢を整理して示す」(写真)といった新たな指導のアイデアが生まれました。
 単元計画の作成では、Cdsに示された能力を高めつつ、十分な運動量を確保できるよう、「話し合い」と「運動」の時間配分に頭を悩ませましたが、結果として子どもたちが考えながらプレーする、質の高い授業実践につなげることができました。学習指導要領に示された教科の目標を押さえた上でCdsを思考力向上のツールとして活用することの効果を実感したため、今後は他教科でもこの実践を展開したいと思っています。
写真 子どもたちにボールを持った時の選択肢を整理して示しました。

6年生 理科 「生物と地球環境/かけがえのない地球環境(環境学習)」(葉山町立長柄小学校 川名大悟朗先生)

実践の概要

6年生の理科における最後の単元で、Cdsを活用した授業を実践しました。目標は「身の回りの自然や生物の現状を知り、今ある環境をより良くするための提案を考える」ことです。子ども一人ひとりが探究テーマを設定し、調べ学習などに取り組み、成果をまとめて発表しました。これまで理科の授業では探究のプロセスを踏まえた活動を行ってきたため、子どもの学びの集大成として、Cds#7を除いた21のCdsの中から、子どもが自分の設定した探究テーマに応じて目標とするCdsの項目を選ぶ形としました。
実践内容と、各時間で特に育成目標とするCdsは表の通りです。
表 めあてとしたCdsの項目に対応する学習活動
実践内容 特に育成目標とするCds項目
一次:導入
1時間

外部講師(NPO 法人アースエコ)による地球環境保全についての講話

Cds#1、Cds#12、Cds#13、Cds#16、Cds#22
二次:
展開
2月はじめ〜2月中旬

子ども一人ひとりが環境に関する探究テーマを設定し、科学的検証の流れ(問い→予想→調査結果→分析考察)に沿って探究し、成果をまとめたプレゼンテーション資料を作成。途中で、見本となるプレゼンテーション資料を提示。

子どもが各自、自分の探究テーマに必要なCds項目を設定
三次:
まとめ
2月中旬〜3月はじめ

発表会を実施。自己評価・他者評価シートにCds項目に照らした評価項目を作成し、自身が発表し、他者の発表を聞く中で、どのような力が付いたかについて、自己評価と他者評価をする。

本実践を終えて

Cdsをツールに探究を深める子どもたち

 本単元では、理科で通常行う検証の流れは変えず、Cdsを「探究の思考プロセス」として位置づけて、子どもたちに提示しました(写真)。そして、子どもたちが自ら学び方を選び、Cdsをスタンプのように用いて自身の探究の価値づけやラベリングとして活用できるように、子どもが作成するスライドやふり返りシートにCdsを貼る欄を設けました。すると、子どもたちは、自分の探究を広めたり、深めたり、また立ち戻ったりするツールとしてCdsを活用していました。例えば、根拠となる資料が十分でない時にCdsを見て、「Cds#11 根拠を明確にして考えをまとめることができる」が抜けていることに気づくといった活用です。ほかにも、Cdsの視点で見直して、「インプットの最終段階だから、次はアウトプットをしよう」と次の学びの見通しを持ったり、「うまくいっていない」と気づき、アプローチを変えたりする子どももいました。
写真 探究の4つのプロセスにCdsをふり分けて、子どもに提示しました。子どもはCdsを手がかりに探究を深めていきました。

Cdsを踏まえて子ども同士でアドバイス

 子どもたちが自分で意識するCdsを設定するため、教員は、子どもが取り組んでいる学びの意図を明確に把握でき、「これをしたいなら、この内容もあるよね」などと、個に応じた具体的なアドバイスがしやすくなりました。同時に、理科的な思考や探究のプロセスがCdsによって明確になり、言語化されたことで、子ども同士でも「それはグラフを探せばよいのでは?」「自分の言葉で書いた方がいいよね」などと声をかけ合い、学び合う関係が生まれていました。
 そうしたプロセスを経ることで、単なる調べ学習にとどまらず、課題を自分事として捉えて考え、それぞれの提案を自分なりに表現できた子どもが全体的に多く見られました。また、新たな課題を見いだして自走する子どもの姿もありました。
 Cdsは、子どもたちが自分の学び方を価値づけ・方向づけできる、さらにそれを自ら調整するきっかけになるというところに一番の効果があると考えます。また、授業者がねらいを子どもに伝えやすくし、授業の展開をよりスムーズにする上でも有効であると実感しています。

5年生 社会科「日本の工業生産と貿易と運輸」(葉山町立長柄小学校 水木裕介先生)

実践の概要

 「日本の工業生産と貿易と運輸」の単元で,Cdsを活用した授業を実践しました。貿易や運輸が,日本の工業生産に重要な役割であることを捉える単元です。指導計画の作成では,指導書や教科書の内容を探究的な学習の過程に沿って整理した上で,Cds一覧表に基づいて,身につけさせたい思考力を検討しました。この授業で,思考力のめあてとして設定したCdsの項目は次の通りです。
[課題設定]
 Cds#2 設定した課題に対し,調べる方法や進め方を考えることができる
 Cds#4 事象や情報の関係を捉え,傾向を見いだすことができる
[情報収集]
 Cds#6 複数の情報を目的に沿って整理することができる
[整理・分析]
 Cds#12 対象や事象に対してさまざまな視点から捉えることができる
[まとめ・表現]
 Cds#18 相手や目的,状況に合った方法で表現・説明することができる
 実践内容と,各時間で特に育成目標とするCds項目は,表2の通りです。
表2 めあてとしたCdsの項目に対応する学習活動
実践内容 特に育成目標とするCds項目
第1回

【課題設定①】

自動車の輸出や原油の輸入の現状から,工業生産における世界各国の結びつきに着目し,問いを持ったり,学習課題を設定したりする。

【学習活動】

1. 日本の自動車の主な輸出先の資料を提示し,気づいたことを伝え合う。

2. 原油の輸入に関する資料を提示し,外国から輸入ができなくなるとどうなるかを考え,話し合う。

3. 日本の自動車の輸出や原油の輸入から問いを引き出し,学習課題をつくる。

4. ふり返り

Cds#4
第2回

【課題設定②】

学習課題への予想,学習計画,学習方法などの見通しを持つ。

【学習活動】

1. 学習課題の予想をまとめて伝え合う。

2. 学習計画を確認する。

3. 学習方法を整理する。

4. ふり返り

Cds#2
第3回

【情報収集①】

日本の主な輸出入品の種類とその相手先,輸出入の変化について。

【学習活動】

1. 日本の主な輸出品や輸出相手先,輸入品や輸入相手先がわかる資料を教科書や資料集などを使って調べ,整理する。

2. 輸出と輸入の様子を比べて,それぞれの特色や変化についてわかったことや考えたことを,グループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第4回

【情報収集②】

輸入に依存している燃料や原料,輸出の割合が多い工業製品について。

【学習活動】

1. 輸入の割合が多い工業製品について資料から調べ,輸入した資源をどのように輸出する生産に生かしているかを考える。

2. 主な貿易相手先を地図から読み取り,つながりが深い理由を考え,わかったことをグループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第5回

【情報収集③】

様々な輸送手段や交通網の広がり,海運などの運輸の働きについて。

【学習活動】

1. 輸出入の際に使う輸送手段や施設,経路について資料から調べたり,読み取ったりして,それぞれの特色を整理する。

2. 整理したことを基に,輸送手段と日本の国土の特色との関連について,グループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第6回

【整理・分析】

日本の貿易・運輸の特色や役割について整理して,これからの貿易において大切なことについて考える。

【学習活動】

1. これまでの学習を思考ツールを使って整理し,自分の考えを持つ。

2. グループで話し合う。

3. 友だちの考え方から学んだことをまとめる。

4. ふり返り

Cds#12
第7回

【まとめ・表現】

これまでの学習で学んだことを生かして,自分が行いたい貿易の仕方についてまとめ,伝え合う。

【学習活動】

1. 自分が行いたい貿易の仕方について,カードにまとめる。

2. カードをグループで伝え合う。

3. ふり返り

Cds#18

本実践を終えて

 約1か月間,1クラスに対する実践を終えた水木先生のふり返りは以下の通りです。
 「単元全体をふり返ると,Cdsを活用した指導計画の工夫により,身につけさせたい思考力を意識して授業を展開できたことは大きな成果と感じています。めあてが明確になったことで,子どもたちの情報を読み取る力や整理する力,考えをまとめる力などを高めることができました。話し合いも活発に行われ,様々な視点の獲得にもつながりました。一方で,活動の時間をもっと増やしてほしいと感じる子どもがおり,その点は課題です。今後は,年間を見通して思考力の育成に努めるとともに,他の教員と思考スキルの価値や育成手法を共有することなども目指していきます」