【専門家・体験談】集中しすぎて時間を忘れる“過集中”とは? 心身の健康を保つために必要な習慣 【専門家・体験談】集中しすぎて時間を忘れる“過集中”とは? 心身の健康を保つために必要な習慣

2023.11.22

【専門家・体験談】集中しすぎて時間を忘れる“過集中”とは? 心身の健康を保つために必要な習慣

過集中とは、集中しすぎて、周りが見えなくなってしまう状態のことです。

声をかけられても気づかない、時間の感覚がなくなってしまうなど、今していることに没入する経験は、誰にでもあるかもしれません。

集中することはよいことでもありますが、一方で日常生活での困りごとの原因になってしまう場合も。

その困りごとを軽減し、強みとして生かすためのサポート方法・体験談をご紹介します。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

よくある過集中になりやすいシーン

ご飯を食べようと声をかける親と、パズルに夢中になっている子ども

お子さまによくある集中しすぎるシーンとして、以下のようなものが挙げられます。

・ゲームや動画
・絵を描く
・本を読む
・ブロック遊び
・工作

特にお子さまの興味関心がある遊びなどで、過集中の状態になりやすくなります。

また、宿題やワークに取り組んでいるときなどにも、過集中の状態になることがあります。

・一つの教科に集中しすぎて疲れてしまい、他の教科ができなくなる
・調べものに熱中してしまい、課題に戻れない

こうした過集中の状態に入ると、目の前のこと以外への感覚をオフにしてしまい、声をかけられても気づかない、時間を忘れてしまうなどといったことが起こります。

ごはんの声かけをしても気づかなかったり、寝る時間が遅くなったりしてしまうなどの状況につながりやすいのです。

過集中による強みと困りごととは?

昆虫図鑑を夢中に読む子ども

発達障害のあるお子さまには、その特性から過集中になりやすい傾向があります。

・ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDのお子さまは注意力のコントロールがしにくい特性があります。

注意力が散漫で集中が続かないかと思うと、活動に没頭して声かけに気づかないなどの状況につながることがあります。
集中しすぎると次の行動への切り替えがなかなかできないこともあります。

・ASD(自閉症スペクトラム)
ものごとへ強いこだわりを持ちやすい特性のため、興味を持ったこと、こだわっていることに関して非常に高い集中力を発揮し、とことん没頭することがあります。

そんなときは周りの状況が目に入りにくくなります。

過集中による強みと困りごととは?

粘土で動物をつくっている子どもと後ろから見守る親

集中力はひとつのことを成し遂げるためには、とても大切ですよね。
高い集中力は、この先プラスに働く可能性も大きいスキルです。

<過集中がもたらす強みの例>
・生産性が上がる
・工作や絵画など創作活動に集中できる
・短期間に多くのことをこなせる
・長期的にひとつのテーマを突き詰めることができ、研究や学習を極めるのに有利

一方で、他のことに注意が向かなかったり行動できなかったりすることが、困りごとにつながる場合もあります。

<過集中で生じる困りごとの例>
・生活リズムが崩れる。寝る、食べる、お風呂に入るといった基本的な習慣を後回しにしてしまう
・声をかけられても気づかないことで、結果的に無視をしたように見え、友達との関係が気まずくなる
・約束の時間を過ぎてもやめられず、他の活動ができなかったり、後の予定を忘れたりしてしまう
・集中を遮られたことにイライラしやすい。やめさせようとすると癇癪を起こす
・やるべき作業や課題にすぐ取りかかれないため後回しになったり、予定がずれたりする
・集中したあとに疲れが出てしまい、ぐったりしたり、他の活動ができなくなったりしてしまう

過集中を強みにするためにできる対策は?

壁に「16時から宿題をやる」という張り紙をつけて勉強をする子ども

高い集中力を強みとして生かしていくためには、集中の「時間」をある程度コントロールできるようになることが大切です。

お子さまの特性に合わせ、時間になったら行動や気持ちを切り替えるコツを身につけていきましょう。

計画を立てて行動する

宿題や家庭学習の時間、休憩の時間、遊びの時間などを決めて計画を立てましょう。

次にやるべきことが決まっていれば、切り替えて行動できる場合があります。

小2保護者 ぐりぐら

集中し出すといつまでも続けてしまうので、何を始める前にもタイムテーブルを本人に見せています。

取り組める時間があらかじめわかっていると、やめられるようです。

静岡県

中2保護者 ポコ

マグネットシートをカットし、「宿題」「チャレンジ」などやることを書いてホワイトボードに貼り、一日のスケジュールを立てて行動するようにしています。

「今この時間は〇〇をする」というのが一目でわかるので、その通りに行動できるようになりました。

時間を意識しながら行動する習慣をつける

タブレットで遊んでいた子供に「時計の長い針が10のところに行ったら片付けしてね」と声をかける親

声かけやタイマー、アラームなどで、残り時間を知らせるようにしてみましょう。

いきなり「もうおしまい」ではなく、ときどき知らせる、終了5分前に一度知らせるなど、お子さまが「急に中断させられた」と感じにくいやり方がベターです。

神奈川県

中1保護者 きゅり

別のことに集中しているときは、指示などが頭に入りにくいので「◯分経ったらアラームが鳴るから、そうしたら話を聞いてね」と声をかけています。

前もって「×時に△をやるからタイマーかけておくね」と伝えておくと、スムーズに行動できます。

山口県

小1保護者 みらい

集中しているときに指示を出しても聞こえておらず、何度も同じことを言う羽目になります。

お互いストレスなので、紙に「あと○分で終わりだよ」などと書いて伝えるようにしました。書くと注目してくれるため、次の行動へと移りやすくなりました。

いったんやめさせたいときも無理に遮らない

17時30分にアラームが鳴り、ゲームをしていた手を止める子ども

集中しているお子さまに対して、今すぐ他のことをしてほしいと思うときもありますよね。

そんなときは、現在の状況を受け止めつつ声かけをすることで、お子さまが自分の判断でやめる練習になります。

「ちょっと集中しすぎているようだけど、大丈夫?」
「あなたがやっていることがとても大切なことだけど、キリが良いところで止める?」

長野県

小2保護者 さわやか

絵や踊りが好きで、始めたら止めてもやめられず、自分が納得いくまでやります。

なので、タイマーのアラームが鳴るまでは一切声をかけず、やらせることを約束しました。

タイマーが鳴ったら「やめられそう?」と聞くと、パニックになりにくいです。

切り替えが難しいときは時間の猶予を与える

昆虫図鑑を夢中に読む子ども

気持ちを切り替え、ぱっと次の行動に移ることが難しいときは、「〇時まで待つから、それまでがんばってね」「〇時までに始めようね」などと、少し時間の猶予を与えましょう。

そして、次にやるべきことの終了時刻を伝えます。

「早く取りかからないと終わらないかも」という意識が持てるようになると理想的です。

千葉県

小1保護者 み

好きなことをしているときに止められるのが嫌な性格のため、「あと5分で終わりにしようね」と声をかけるようにしています。

没頭してよい時間を設ける

パズルを組み立てるのに夢中になっている子ども

週末など、比較的時間の余裕がある日に、好きなことに没頭できる時間を設けると、コントロールがしやすくなることがあります。

「日曜日には○○ができるぞ」と思うことで、平日に切り替えが出来るようになったり、思う存分集中できる時間をとることで満足感を得られたりするためです。

集中した後は、ストレッチや散歩、ジャンプなど体を動かすことで気分転換や休憩をするとよいですね。

熊本県

小4保護者 あおぞらママ

気持ちの切り替えが苦手で、集中し過ぎてしてしまいがちなので、早めに予定を話しておいたり、一人で好きなことに熱中する時間を確保したりするようにしています。

まとめ & 実践 TIPS

勉強をする子どもを遠くから見守る親

集中し過ぎて、必要なときにさっと切り替えられない様子が見られると、困ってしまうこともあるかもしれません。

しかし、過集中には高い集中力を発揮できるよい面もあります。

その集中力を活かしつつ、生活上の困りごとについては、ここでご紹介した方法でお子さまに合ったものをいくつか取り入れてみてください。

集中力を上手にコントロールし、適切に発揮できるようになれば、今後の学習やお子さまの活動において心強い力になります。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。