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2022.12.20

勉強時間と成績の関係は?小学生、中学生、高校生に適切な学習法とは

「勉強する時間が長いほど成績が上がる」は本当?——半分は合っています。成績を上げるためには、まず机に向かう習慣をつけることから始め、一定量の勉強時間を確保することが必要です。しかし、やみくもに勉強時間を延ばしても効果は限定的で、勉強時間(量)と勉強の仕方(質)の両方をアップさせることが大切です。特に中学・高校生になると、家庭での勉強以外にやるべきことややりたいことがたくさん出てきます。限られた時間を有効に使い、自分に合った勉強方法を考えて工夫するほうが、成績向上には効果的です。

勉強時間と成績の関係は?

東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行った調査の結果によると、総じて、学校での成績がよい子どもの方が、勉強時間は長いことがわかります。その傾向は小学生でやや強く、成績が上位の子どもは他の子どもよりも1日あたりの勉強時間が30分程度長いという結果が出ています。小学生のうちは、学習習慣の定着が重要です。中学生になると、勉強時間は成績による差が小さくなります。これは、成績を問わず、どの子も一定の時間を学習するようになるからだと考えられます。また、高校生の場合は、学校内の成績による差よりも、どのような高校に通っているかの方が、勉強時間を左右します。

さらにデータを分析すると、勉強時間が長い割に効果が見られない子や、逆に短い勉強時間でも高い成績を維持している子が一定数います。実は、成績との関係がより強いのは、勉強時間の長さ(量)ではなく、勉強の仕方(質)なのです。

「学習方略」(効果的な勉強の仕方)を身に付けた子ほど成績が高い

学校の成績との相関図(相関係数)

※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2018年

効果的な勉強の仕方のことを、「学習方略」といいます。たとえば、勉強に向かう意欲を高めたり、より効率的に覚えられるように工夫したり、計画を立てて進み具合をチェックしながら勉強したりといった行動は、勉強の質を高めます。その方法を身につけるためには、どんなやり方が自分に合っているかを考え、工夫することがとても重要です。中学生になると、定期テストの1、2週間前に、テスト科目や自分の得意・不得意に応じて、どの教科にどの程度時間をかけるかを考えて計画を立てると思います。途中、計画どおりにできているかを確認し、計画や勉強のやり方を調整するなどして、テスト当日までの時間を管理できると、勉強の効果は高まります。図1に示すように、学習方略は勉強時間の長さよりも成績に強い影響を及ぼしていて、それを身につけている子どもほど学校の成績が高い傾向があります。

中学生、高校生に適切な1日の勉強時間は?

では、実際にどれくらいの時間、勉強すればよいものでしょうか。それは、子どもの学年や目標によっても違うため、一概に決めることはできません。一つの目安になるのは、平均時間です。図2に示したように、小学校低学年は1日1時間弱、小学校高学年から中学、高校生にかけては1時間半程度が平均的な勉強時間です。受験を控えた学年では、それよりも長く学習する必要があります。これは、自宅での宿題や家庭学習、塾といった、学校以外でのすべての勉強時間の合計です。あくまで平均時間なので、高い目標を設定した人は、より長い勉強時間が必要になります。

勉強時間(平均時間)

※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2018年

平均的な勉強時間の目安(学年ごとの平均値)
【小学生】
3年生…約1時間、4年生…約1時間10分、5年生…約1時間30分、6年生…約1時間40分
【中学生】
1・2年生…約1時間40分、3年生…約2時間
【高校生】
1・2年生…約1時間30分、3年生…約3時間

この時間を参考にしながら、目標(次の定期テストで〇点を取る、志望校に合格するなど)と自分の現在地(どれだけできているか)などを考えて、自分にとって必要な勉強時間を決めていきます。勉強が苦手な子どもは、伸びしろが大きいので、勉強した分だけ効果が出やすい状況にあります。まずはしっかり学習時間を確保して、そのなかで自分に合ったやり方を考えてみるとよいでしょう。勉強が得意な子どもは、それ以上、学習時間を長くしても成績は伸びにくい状況にあります。その場合は、今の学習時間の中で、さらに効果的なやり方がないかをふりかえってみるとよいと思います。

学校でも勉強時間の指導を行っている

学校でも、子どもたちに一定の勉強時間を確保するように様々な働きかけを行っています。例えば、定期テスト期間中の学習計画表を書かせて、部活動も制限する学校が多いようです。それ以外にも、一日の勉強時間の目安を示したり、日々の勉強時間を記録させて見える化したりするなど、家庭学習を定着・促進するための取り組みを行っています。

今後は、そうした学習量の確保に重点を置いた働きかけに加えて、時間を効果的に使うことの大切さを伝える、自分のスタイルに合った具体的な勉強方法を考えさせる、といった学習の質を高める働きかけが増えると、家庭学習がより効果的なものになっていくかもしれません。

家庭でできるサポートは、親自身の経験を踏まえた働きかけ

先に紹介した調査によると、中学生や高校生の半数以上が「勉強する気持ちがわかない」「上手な勉強の仕方が分からない」と答えています。やる気をもって、勉強の仕方を理解して学べている子どもは、むしろ少数です。ですから、まずはそうした子どもの思いや状況を冷静に捉え、勉強しなさいとやみくもにプレッシャーを与えることは避けたほうがよいでしょう。

とはいえ、勉強しない子どもを、そのまま放っておいてよいわけではありません。小学生のうちは、ほめたり励ましたりすることがとても有効ですし、子どもが好きな内容の勉強を一緒に楽しむことも効果的です。勉強といっても、机に向かってすることだけではありません。日々の体験からもたくさんのことを学んでいるので、子どもの気づきや発見を引き出してあげてください。勉強の仕方に悩む子どもには、何につまずいているのか子どもといっしょに考えてみてはどうでしょうか。その時、主役はあくまで子どもです。保護者の方が考えたやり方を押しつけるのではなく、子どもが自ら考えたやり方を後押しするようなかかわりがよいと思います。

中学生以降は、勉強することの意義を積極的に伝えることが大切です。がんばって勉強したことが役に立ったご自身の経験を聞かせたり、志望校に合格したら子どもがやってみたいことに耳を傾けたりして、「学ぶことは大変なことも多いけれど意味があることなのだ」と思えるような働きかけができるとベストです。保護者の方が、学びや趣味を楽しんだり、仕事を通して得た気づきを話したりするようなことも、子どもが自分の学びについて考えるうえで役に立つと思います。

まとめ

大人になって時間を上手に使える人になるために

食事や睡眠、学校といった日常生活に必要最小限の時間を除くと、子どもが1日に使える時間は6~7時間程度です。そのなかで勉強に費やす1時間半程度の時間は決して少なくありません。そのやり方を充実させることで、実質的な勉強時間を短くしたり、捻出した時間を自分がやりたいことに充てたりすることもできます。社会人が仕事の充実や効率化を考えたり、仕事の目標に応じて時間配分を工夫したりして、日々の生活を豊かにしようとすることと同じです。

また、大人になって壁に当たった時に、まず問題がどこにあるのかを捉え、すでに知っているさまざまな解決方法を試してみることが大切ですが、勉強も同じです。思ったように成果が出ないときはやり方を変えてみるなど、勉強の量だけでなく質を高める意識を持ち続けることで、成績アップにつなげていきましょう。

取材・執筆:神田有希子

※掲載されている内容は2022年12月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

木村 治生きむら はるお


ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

上智大学大学院(教育学修士)、東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~現在)。
これまで、文部科学省、経済産業省、総務省などからの委託研究に携わるとともに、文部科学省審議会委員、独立行政法人国立青少年教育振興機構事業選定委員、内閣府調査企画委員会委員、埼玉県草加市教育委員会専門部会委員などを務める。

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