2025.8.28
調査書(内申書)とは? なぜ大学受験に必要? 内容やもらい方を解説
「調査書」とは、受験生がどのような高校生活を過ごしたのかを記した書類のことです。学業成績を点数化した内申点(評定)が記載されていることから、内申書ともいわれます。学校の先生が作成し、ほかの出願書類と同時に志望校へ提出します。
中学入試から大学入試まで幅広く活用されていますが、たとえば中学入試では調査書の提出を求めない学校も多いなど、活用の度合いが学校段階によって異なります。
大学入試では、原則としてすべての大学への提出が義務づけられています。そこで今回は、高校が作成し大学入試で使用される調査書について説明します。
この記事のポイント
調査書に書かれる内容は9項目
調査書には、生徒一人ひとりのさまざまな情報を記載します。内申点や表彰歴だけではなく、次の内容を書くことが決められています。
- 氏名、生年月日、住所、在学中の高校などの個人情報
- 各教科・科目の学習の記録(各教科・科目で習得することができた単位数と評定)
- 各教科の学習成績の状況(各教科における成績を5点満点で評価したもの)
- 学習成績概評(A〜Eの5段階による本人の評価と学年全体の分布)
- 総合的な探究の時間の記録(点数や評価ではなく身に付いた力を端的に記述)
- 特別活動の記録(ホームルームや生徒会、行事での記録)
- 指導上参考となる諸事項(資格・検定、各種大会の成績、部活動やボランティア活動など)
- 備考
- 出欠の記録
大学はこれらの情報を合否材料の一つとしますが、調査書の内容をどれくらい重視するかは大学の方針や選抜方式によって異なります。たとえば、学校推薦型選抜(公募推薦と指定校推薦の2種類。旧推薦入試)では、一定以上の評定値を出願条件としていることから、調査書は重視要素の一つといえます。
学業成績以外の様子も幅広く記載される
現行の調査書で、見た目のボリュームが最も多く割かれているのは「各教科・科目の学習の記録」です。ここは、すべての高校で作成と保管が義務化されている「指導要録」というものの内容を転記すればよいのですが、それだけでは学業成績だけを評価するにとどまってしまいます。調査書には、「特別活動の記録」や「指導上参考となる諸事項」など、学業成績以外で輝いている生徒をきめ細かく評価できるようにしています。これらの一部は文章として記す必要があるため、作成する先生の負荷が大きい点が課題です。一部の高校では、学期や学年の節目、大きな行事のあとなどのタイミングで生徒が振り返りを行い、調査書に連動する観点で文章化するなどの工夫を凝らすケースも見られます。自らの学びを振り返って言語化すること(ポートフォリオ化)は教育的にも効果があるとされており、このような流れは今後強まるかもしれません。
調査書のもらい方は?
調査書を希望する生徒は、「調査書発行願」等の書類を担任の先生に提出し、学校で直接または郵送で受け取ります。保護者のかたの署名・捺印が必要だったり、発行まで数日かかったりする場合が多いので、余裕をもって手配するようにしましょう。出願の2週間前までに調査書発行願を提出するといったルールを設けている学校もあります。
2025年度入試タイミングで書式が変更
これらの内容を、2024年度入試までは、枚数の制限なく記載することが可能でした。しかし、2025年度入試以降は、A4の裏表1枚にまとめる書式にスリム化されました。(※1)
実は、2020年度入試までは裏表1枚という制限がありました。数値化された評定値だけでなく、生徒の様子をより幅広く丁寧に把握して入試選抜の材料とすべき、という大学入試改革の趣旨を踏まえ、2021年から制限をなくしたのです。
しかし、書き手である高校の先生は大変です。担任はクラスの生徒一人ひとりについて、1、2年生時の様子を詳しく調べ直したり、選考時に不利にならないようにたくさん書いたりするなど、働き方改革の流れとも逆行する弊害が見られるようになりました。そういったことも踏まえ、生徒を多面的に評価するという趣旨はそのままに、記入量を抑えた書式に変えたのです。全体の枚数だけでなく記入部分の書式も一部変更することで、文章化が必要な部分を減らすように改善されました。
文部科学省より発表されている調査書の様式
電子化が予定されているが、詳細は未定
調査書は、書式のほかにもう一つ変更されていることがあります。それは電子化です。現在の紙の調査書を電子化することで志願者と大学の双方にとって効率化、省力化が進みます。
そのため、国の検討会などでも2022年度入試から電子調査書を用いることを目指していましたが、当初の予定どおりに進んでいません。文部科学省「令和8年度大学入学者選抜実施要項」(※2)では、大学と高等学校が個別に合意した場合には、電磁的に記録した調査書の提出を高等学校に求めることができるとの記載がされています。一部の大学では、総合型選抜や学校推薦型選抜などで、調査書の電子化を導入しているものの、全体的には紙の調査書が主流です。必要なシステムの整備や政府全体のデジタル化の流れとの兼ね合いなどから、今後の本格導入が期待されています。
調査書の活用度合いは志望校によって異なる。情報収集をしっかりと!
大学入試で調査書に重きを置いている大学はいまのところ少数で、全体的には、参考程度にとどめている場合が圧倒的に多いです。しかし一部では、調査書の内容を得点化して一般選抜の得点に加算するなど、積極的に活用している大学もあります。志望校を検討する際は、その大学の入試方式と合わせて、調査書をどの程度活用しているのかも確認するとよいでしょう。
高校受験を控えているご家庭の場合は、高校選択の際に大学受験を踏まえた視点を加えてもよいかもしれません。進学先の高校が、定期テストの点数と、テスト以外の場面(思考力を働かせる学習活動など)をどの程度の比率で内申点とするかは、各校で異なるからです。内申点の算出方法(重みづけ)は、その高校の教育方針や指導の重点を表しているともいえます。どこまで詳細に公開しているかは学校により異なりますが、学校のWebサイトを見たりオープンスクールに参加したりして、志望する学校の教育方針や特徴をよくつかんでおくようにしましょう。
まとめ
生徒の多様な力を評価するために、今後も変更が予想される
今は大学入試が変わる過渡期にあります。これまでは定期テストでよい点をとってさえいれば、評定「5」をもらえて調査書で有利になり、入試に役立つ、という考え方が一般的でした。それが、学習指導要領の趣旨も踏まえて、学習内容を深く考える力や意欲・態度など、テストの点数以外の要素も含めて評定が決まる動きが加速していきます。
この傾向は中学校の調査書も高校の調査書も同じです。教わったことを筆記テストではき出す力だけでは社会で通用しないことは、保護者の方々も感じていると思います。調査書の中身も、そうした実状に合わせた内容に変わりつつあるのです。
取材・執筆:神田有希子
(出典)
※1
文部科学省/令和7年度大学入学者選抜実施要項の主な変更点について
(令和6年6月5日付け6文科高第229号 文部科学省高等教育局長通知)
※掲載されている内容は2025年7月時点の情報です。
監修者
谷本 祐一郎たにもと ゆういちろう
ベネッセコーポレーション学校カンパニー
教育情報センター長(2024年度まで)