英語教育の課題は? 迫る「2020年度」

小学校で英語が教科化され、大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」の一環で英語の外部検定・試験の受検も始まる2020年度まで、1年を切りました。4月には全国学力・学習状況調査(全国学調)で、初めて英語も出題されました。
このように英語教育の強化は待ったなしなのですが、実際の学校の指導体制はどうなっているのでしょうか。

低調な生徒の英語力、授業が変わらないせい!?

文部科学省の2018年度「英語教育実施状況調査」によると、中学生でCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1レベル(6段階のうち「基礎段階の言語使用者」の下)相当以上を達成したのは42.6%(前年度比1.9ポイント増)、高校生でA2レベル(「基礎段階の言語使用者」の上)以上は40.2%(前年度比0.9ポイント増)と、着実に伸びてはいるのですが、いずれも50%に引き上げるとした政府目標(教育振興基本計画)には依然として届いていません。都道府県の格差も、大きく開いています。

CEFRが「言語使用」に着目している通り、英語教育では「聞く・読む・話す・書く」をフル活用したコミュニケーション能力の育成が求められています。しかし肝心の授業では、「授業は英語で行うことを基本とする」(学習指導要領)はずの高校で、「発話の半分以上を英語で行っている」「発話を概ね英語で行っている」を足しても、コミュニケーションIで58.7%にとどまります。しかも、同IIで55.5%、同IIIで48.0%と、学年が進むごとに下がってしまっています。さらに、英語表現Iは45.0%、同IIは39.6%です。

現在の大学入試はペーパーテスト中心で、センター試験にしてもヒアリングはあるものの、スピーキングは間接的にしか問われていません。そんな受験対策を意識して、なかなか高校の授業が変われないものとみられます。

小・中・高全体の見直しで充実を

それに対して中学校では、授業を英語で行っている割合が1年生75.1%、2年生74.8%、3年生73.5%と、それほど下がっていません。
2021年度から全面実施となる新しい指導要領では、中学校でも高校と同様に、英語で授業を行うことが基本となります。一足早く2020年度から全面実施となる小学校では高学年で英語が教科化されますから(「外国語活動」は中学年に移行)、それを受けたパワーアップも求められます。

しかし肝心の先生の英語力を見ると、CEFRでB2レベル(「自立した言語使用者」の上)以上の割合が、中学校で36.2%(前年度比2.6ポイント増)、高校で68.2%(同2.8ポイント増)。やはり各50%以上、75%以上にするとした政府目標には届いていません。

小学校英語の指導をどう強化するかも、学校現場の悩みです。英語教育を担当しているのは、学級担任が80.5%を占めています。2017年度にALT(外国語指導助手)と一緒に行った授業は71.4%と前年度より9.0ポイント跳ね上がりましたが、ICT(情報通信技術)機器の活用も99.0%に上り、多くは「教師がデジタル教材等を活用した授業」です。

柴山昌彦文部科学相が4月に行った中央教育審議会への諮問では、小学校への教科担任制の導入や、教員の養成・採用・研修なども検討するよう要請しています。英語教育に関して直接挙げているわけではありませんが、小・中・高の教育全体を見直す中で、英語の指導体制についても充実策を検討してもらいたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※2018年度「英語教育実施状況調査」の結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415042.htm

※中教審諮問「新しい時代の初等中等教育の在り方について」(4月17日総会配布資料)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/1415607.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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