英語の筆記は「リーディング」に 共通テスト実施大綱

文部科学省は、2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」の実施大綱を策定しました。今年の高校2年生から大学入試は大きく様変わりしますが、まだ全容が見えていないため、不安に思っている生徒も少なくないことでしょう。
なぜ今、入試を変えなければいけないのでしょうか。大綱を見ながら、改めて考えてみましょう。

「思考力・判断力・表現力」測る訳は

大綱はまず、「第1 実施の趣旨」の中で、▽大学入学共通テストでは、各教科・科目の特質に応じ、知識・技能のみならず、思考力・判断力・表現力も重視して評価を行うものとする▽各大学は、大学教育を受けるにふさわしい能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定することに資するため、それぞれの判断と創意工夫に基づき、これを適切に利用するものとする……と述べています。
高校までに身に付ける「学力」は、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力(3)主体的に学習に取り組む態度……という「3要素」から成ることが、学校教育法に規定されています。
大学入試改革を含む「高大接続改革」では、このうち(3)を「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」と言い換え、高校教育と大学教育をつないで3要素すべてを伸ばし、社会で活躍できる人材を送り出そうとしています。しかし、これまでの大学入試は(1)による選抜に偏りがちだという反省から、全大学で3要素すべてを多面的・総合的に評価して選抜することを求めています。
このうち共通テストでは(1)だけでなく(2)を中心に評価し、(3)については各大学で丁寧な選抜方法を考えてもらおうとしています。そんな狙いが、実施大綱からも読み取れます。

もちろん大学入試は、各大学の判断で主体的に実施されるものです。それが「第3 各大学における利用」の「各大学は、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)に基づき、大学入学共通テストの利用方法を定めるものとする」という一文に現れています。ただし、高大接続改革の趣旨を踏まえて「入学志願者が高等学校で学んだ多様な成果を評価できるよう、できるだけ多くの教科・科目を指定することが望ましい」と注記しています。

記述式で国語と数学は時間延長

出題教科・科目の選択範囲と試験時間をみると、記述式問題の出題に伴って、国語が20分増の100分、「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」は10分増の70分に、それぞれ延長します。記述式は「表現力」にとどまらず「思考力・判断力」を問うために導入されるものです。
英語に関しては、これまで「筆記」と「リスニング」とされていましたが、筆記の名称が「リーディング」に変わります。英語の4技能(聞く・読む・話す・書く)をすべて測定するためにはペーパーテストだけでは限界があるため、共通テスト当日とは別に、大学入試センターが認定した民間の資格・検定試験(認定試験、7団体23種類)を受験の年の4~12月に受け、2回分の成績をセンターを通して大学に提供する「大学入試英語提供システム」が導入されたことに伴うものです。これに伴い、筆記は「読む」に特化し、「話す」「書く」の代わりに出題していた発音・アクセント・語句整序といった問題は出題しない姿勢を明確にしました。
共通テストは、センター試験と出題傾向が大きく変わります。それも、こうした高大接続改革の考え方が背景にあるのです。

(筆者:渡辺敦司)

※2021年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm

※中教審答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(2014年12月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1354191.htm


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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