新課程の英語授業、中・高校の課題は?

新しい学習指導要領の下では、英語の授業にも大きな変化が求められます。小学校では「外国語活動」が中学年に前倒しされるとともに高学年が教科化され、大学入試では英語4技能を評価するために民間資格・検定試験の成績を大学に提供するシステムが導入されます。その間に挟まれた中学校や高校の授業は、どう変わるべきなのでしょうか。

使いたい「必然性」を大事に

タイムリーな催しが先頃、千葉県浦安市の明海大学でありました。朝日大学(岐阜県瑞穂市)との共催による英語授業改革セミナー「本気で授業改革!」です。高校、中高、中学校という三つのグループに分かれて、どんな授業をすればいいのかを提案するワークショップ(WS)が行われました。

このうち高校のWSを担当した亀谷みゆき・朝日大准教授(元岐阜県立高校教諭)は、各学校段階の課題を、▽小学校=英語でやり取りする意味・必然性▽中学校=即興性→暗記からの脱却・必然性▽高校=発信力の育成……と整理しました。ここでの「必然性」とは、(1)伝えたい内容がある「話者にとっての必燃性」(2)相手が知らないことを伝える「情報の必要性」(3)聞いていて意味があり、聞きたくなる「聞き手にとっての必然性」……ということです。主に小・中学校の課題としていますが、もちろん高校にとっても無縁ではないといいます。

現行教育課程でも、英語ではコミュニケーション能力の育成を重視し、「外国語を使って何ができるようになるか」が問われます。決してペーパーテストを解ける能力にとどまりません。
新課程では、英語4技能をさらに「聞くこと」「読むこと」「話すこと(発表)」「話すこと(やり取り)」「書くこと」の5領域に整理し、4技能を統合した言語活動を充実することにより、5領域の力を総合的に育成するとともに、英語による思考力・判断力・表現力を高めることが求められると、亀谷准教授は指摘しました。

あくまで4技能統合型で

一方、中学校のWSを担当した土谷匡・千葉市立稲毛高校附属中学校教諭は、たとえば2時間の授業で教科書見開き1ページを扱う場合、従来なら1時間目で文法事項を学習してから2時間目に本文に入る……という展開をしてしまいがちですが、そうではなく、1時間目から文法事項と本文を扱い、2時間目には復習と発展活動を行うよう提案しました。指導要領では、あくまで「技能統合型言語活動」が求められているからです。しかも、本文の音読だけで終わってはいけないといいます。学んだことを実際に使ってみる発展活動も、授業の中で行わなければ、英語を使える力にはつながりません。

WSに先立って基調講演を行った上智大学特別招聘(へい)教授も、文部科学省の英語教育実施状況調査の結果を紹介しながら、統合的な言語活動を行っている学校の方が「話すこと」「書くこと」だけでなく「聞くこと」「読むこと」の得点も高いとして、4技能統合型の授業を徹底するよう訴えました。
「伝えたい!」という必然性を大事にしながら、実際のコミュニケーション活動を充実させることが、結果的に受験学力にもつながるし、社会に出てからも英語を使って仕事やコミュニケーションができるようになる……。それこそが、高大接続改革時代の英語教育改革の狙いです。文法偏重の意識からは、早く脱却しなければいけません。

(筆者:渡辺敦司)

※英語授業改革セミナー「本気で授業改革!」
http://www.meikai.ac.jp/news/2019_news/2019-0725-1630-1.html

※文部科学省 2018年度英語教育実施状況調査の結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415042.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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