大人が理科を楽しむ姿勢を見て、理科好きの子が育つ

近年、学校現場において探求的な活動が重視されています。探究的な活動には、自然科学的な興味関心が欠かせません。しかし、「理科嫌い」といわれる子が少なくないのも事実。理科好きの子どもを育てるにはどんなことが大切なのか、山梨大学教授の松森靖夫先生に聞きました。

理科嫌いの子どもはどうやって生まれる?

私は小さいころから自然科学に興味がありましたが、それでも一度理科が嫌いになりかけたことがありました。小学生のころ、カミキリムシを捕まえて、「触覚をハサミの前に持っていくと自分で切ってしまう」というデモンストレーションを友達の前でしてみせました。これを見ていた当時の担任教師が、面談の際に私の母親に「この子はとても残酷な子です」と伝えていたのです。さらには、当時の私は理科に熱中していたのに、理科の成績をとても下げられてしまいました。この一件で、私はすっかりやる気をなくしてしまったのです。

私の例から得られるのは、2つの教訓です。
ひとつは、「大人の決めつけ」は子どもの意欲をそいでしまうということ。「残酷だ」と思ったのであれば、その時に子どもだった私と対話し、私の考えも聞き、そのうえで担任教師が「残酷だと思う理由」を伝えるべきだったでしょう。

もうひとつは、成績が悪くなると、好きだったはずの教科でも途端にやる気を失ってしまう可能性があるということです。「中1ギャップ」などと言いますが、小学生までは理科が好きだった子どもでも、中学生になり学ぶ内容が難しくなると、理科が嫌いになる子が出てくることがわかっています。

子どもが理科嫌いになるのを防ぐには、大人の理論で子どもの関心や論理を否定しない、必ずしも成績だけが重要ではないということを伝えていくということが大切です。子どもの自然科学への純粋な関心を認めてあげましょう。

保護者が理科が苦手でも大丈夫

「理科が苦手なので、子どもに教えられない」と心配する保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、子どもの質問に対して、正解を教えてあげようとする必要はありません。一緒に考える、ともに調べてみるという姿勢が大切なのです。
そのため、保護者のかたが理科が苦手でも大丈夫です。むしろ、答えを先回りしないので、子どもと一緒に考えていくことができてよいのではないでしょうか。

自由研究などの機会に、一緒に子どもと科学を楽しもう

学校の長期休暇中に課される、自由研究。この課題を通じて子どもにどんな力をつけさせたいのか、保護者はどう関わればよいのかなどを教師に確認したうえで、ぜひご家庭で楽しんで臨んでみてください。

「急に家庭で科学的な探究をしろと言われても困る」というご意見はもっともです。直面して困ってしまう前に、日頃から子どもの科学的関心を育てる「足場」をつくっておきましょう。すると、子どもが何の気なしにこぼした疑問を拾い上げ、自由研究につなげていくことができるからです。たとえば、私が知るなかでこんな自由研究がありました。

父親が枝豆をつまみにビールを飲んでいたのを見て、「サヤに1粒だけ入っている豆と、2粒3粒入っていた豆とでは大きさに違いがあるのではないか」ということに関心を持った子どもがいました。仮説として、すべてのサヤに同じ栄養がいっているのであれば、サヤに1粒しか入っていない豆が一番大きくなるはずだと考えることができます。一方で、特定のサヤに栄養が集中しているから3粒の豆ができ、粒も大きく育つのではないかという考えることもできます。

こうした子どもの関心に対しては、大人でも答えを導き出すのは難しいでしょう。だからこそ、大人は子どもの着眼点を面白がり、考える姿勢を支援していくことが大切なのです。

日頃から、子どもの科学的関心を高める足場をつくることを意識しておくと、こうした子どもの素朴な疑問を自由研究で深めることができます。家庭で一緒に楽しめる機会としていけるとよいですね。

プロフィール


松森靖夫

山梨大学教授。専門は科学教育。『毎日小学生新聞』などで、わかりやすく自然科学の楽しさを教えている。著書に、「理科好きの子どもをはぐくむ20の条件 先生!ぼくが理科を嫌いになったわけ知っていますか?」「小学生の素朴な疑問に答える やさしいサイエンスQ&A」(ともに東洋館出版社)などがある。

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