子どもの「前向きな発想」引き出すリフレーミング[やる気を引き出すコーチング]

先日、あるセミナーで、非常におもしろい小学生と出会いました。まだ小学3年生のA君ですが、とても利発で、大人ともしっかりコミュニケーションをとっています。
セミナーの中で、「自分の失敗体験を語る」という課題があったのですが、A君も私も、「失敗?何かあったっけ?」と思いつくことができませんでした。
「失敗と思ったことはない」「失敗が怖いとも思わない」と淡々と話すA君のこの考え方はいったいどこから来るのでしょうか?非常に興味を持ちました。

私自身はもちろん、失敗と思うことはこれまでも多々体験し、失敗が怖くてチャレンジできなかったこともあるのですが、コーチングを受ける過程で、その意味づけがかわり、失敗はないと思えるようになりました。しかし、A君はまだ小学生です。どのような体験によって、このような考え方になったのか、A君に聞いてみました。

■失敗は「ナイスチャレンジ」

「A君には、自分が思った通りにいかなかったと思うことはないの?」
「あるよ!」
「あるんだ!それはどんな時?」
「サッカーのシュートを外した時とか」
「なるほど!その時は、失敗したとは思わなかったの?」
「え?それは、ナイス!なんだよ」
「ナイス?」
「そう!外したら、『ナイスチャレンジ!』ってお父さんが言ってくれる」
「へぇ!じゃあ、シュートが決まったら?」
「それは、ナイスシュート!でしょ」
「だよね?どっちもナイスなんだ」
「そう!シュートは打たないと決められないから、外してもナイス!外すことの方が多いから、決まった時はもっと嬉しい!」

非常にシンプルな答えでしたが、「どちらもナイス」と、当然の事のように話すA君の屈託のなさに感動しました。そして、日頃から、そのような声かけをされているお父さんにも感銘を受けました。

■学校に行きたくない子どもにワクワクする?

A君と話していて、私の知人のコーチのことを思い出しました。彼女には、まだ就学前のお子さんがいますが、ある時、「うちの子が小学生になって、学校に行きたくないって言い出したらワクワクする!」と話していました。かなり突飛な考え方です。

「学校に行かないという自分の意志を持つってすごいこと。自分で何を始めるのかなと考えたらワクワクする!」と彼女は言うのです。
いささか極端な意見かもしれませんが、そんな発想ができる彼女のお子さんは、たとえ、不登校と言われる状況になったとしても、決して悲観的にはならないだろうなと思います。おそらく、A君のように、「失敗」に対する否定的な概念も持たないでしょう。

■生きる力の一つ「リフレーミング力」

コーチングのスキルの一つに、「リフレーミング」というものがあります。物事のフレーム(枠組み)を外して、違う枠組みで見てみることを言います。「ピンチはチャンス」という言葉もリフレーミングの一例です。一見、マイナスのように見えることも、見方を変えることで、プラスに捉えることができます。起きている出来事は一つでも、解釈の仕方は無限にあります。

大人が「失敗はしてはいけない」「学校へ行かない子どもはダメだ」と捉えた言葉かけをしていると、子どもはその枠にはまってしまい、どうしても悲観的に考えてしまいます。「失敗から学べることがある」とか「行かない選択をすることで何が得られるだろうか」といった他の枠組みで考えてみることを学びません。
正解が一つではないこれからの時代に求められる「生きる力」の一つとして、「リフレーミング力」は非常に重要だと私は感じます。子どもの「リフレーミング力」を伸ばす上で、大人の前向きな発想や言葉は大きな影響力を持ちます。

「今日はついていないな」と思うようなことがあった時、「それがもし、チャンスだとしたら、どんな解釈ができるのか?」、「その体験を今後に活かせるとしたら、どんなことがあるのか?」といった問いを自分にも子どもにも投げかけたいものです。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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