子どもの成長に欠かせない「食育」、第一歩は「食事を楽しむ」こと!進んで食べる子になる会話術とは

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食について学び、健全な食生活を実践するための「食育」。幅広い食べ物を食べられるよういろいろな食材に触れたり、食事のマナーを学んだりと「食育」の範囲は広く、すべてのお子さまが心身ともに健康に成長するために欠かせないものといえます。「いろいろな食べ物を食べられるようになってほしい」「もっとたくさん食べられるようになってほしい」など食事に関するお悩みをお持ちのかたは気になるテーマではないでしょうか。

とはいえ、「食育の重要性について耳にするけれど、家ではどんなことをすればいいんだろう?」と思うこともあるでしょう。でも、難しく考えすぎる必要はありません。食育カウンセラーの山口健太さんによると「家庭での食育の第一歩は、食事を楽しむこと」なんだとか。家庭で食育を実践するポイントについてお聞きしました。

この記事のポイント

家庭における食育の重要性とは

山口さん:食育の場所としては、「家庭」「保育園や学校などの教育現場」「社会」の3つがあります。この中で、最も頻繁に食事をするのは家庭ではないでしょうか。「食べること」の原点は家庭であり、食事への関心や姿勢は家庭の中で育まれていきます。

「食育」の第一歩は、食事へのポジティブなイメージを持つこと、楽しく食事をすることにあります。食事へのいいイメージがないと、食事について知りたい、食について学びたいという気持ちは起きないですよね。だからこそ、一番よく食事をする場である家庭の食卓には、楽しい雰囲気が大切なんです。

これは私の主観なのですが、「どんな家族か」は食卓の雰囲気に表れるのではないかと思っています。家族仲がよければ、会話や笑い声も多く、豊かなコミュニケーションが見られる。そうでなければ会話がなく、緊張感ある場になったり、一緒に食べたくないということも起きるのではないでしょうか。

また、家庭での食育は子どもに応じた個別対応をしやすいのもよい点です。保育園や学校での食事は、どうしても集団で同じ献立となるもの。家庭であれば、お子さまの好き嫌いや興味関心に応じて、食事への関心を高め、食育の定着につなげていけるでしょう。楽しい雰囲気で、子どもに応じた対応ができる。それが家庭で食育を行うメリットです。

なぜ、「食事を楽しむ」ことが重要なのか

山口さん:食事の時間が楽しいと、食事に対して前向きで能動的になれます。食事の目的は、生きていくための栄養摂取だけでなく、心の栄養補給という意味合いも大きいもの。
楽しい食事を通じ心身ともに元気になる。そんな経験を積み重ねていると、食への興味もわき、おのずと食の幅が広がっていきます。「今度、みんなでこれを食べてみたいな」と食材やメニューへの関心が高まるのはもちろん、食品ロスの問題やSDGsへの意識も喚起されやすくなるでしょう。

一方で、食事の時間が窮屈(きゅうくつ)で緊張感のある場だったらどうでしょうか。実際、以前私がしゃぶしゃぶのお店で外食をしていた時のことです。隣のテーブルで、おじいちゃんに細かな食事マナーばかりを厳しく注意されている子を見たことがありますが、見ているだけでもつらいものがありました。その子にとっては、食事は恐怖感に結びつき、積極的に席についたり、何かを知ろうとしたりする意欲は生まれないでしょう。

食育も勉強やスポーツと同じで、「楽しい」が出発点になれば、こちらからの働きかけが少なくても広がりを見せていくものです。ご家庭では、まずは家族で食事を楽しくすることから始めていただきたいですね。

「食事を楽しむ」ために家庭でできることは?

山口さん:「楽しい」の土台には、安心・安全があります。どんなにおいしい食事でも、時間に追い立てられたり、危険な場所で食べたり、恐怖心を覚える人と一緒であったりしては楽しめないですよね。そのため、まずは苦痛があれば取り除いてあげることが大切です。次の「3つの間」を意識して、安全な環境・関係性をつくってください。

  • 時間
    • 「◯分以内に食べ終わる」など時間の制約を厳しくしたり、「食べられるまで居残り」といったルールを設けて焦らせたりしない。
  • 空間
    • がやがやしている、狭い、不衛生など、食事に集中しにくい場所にしない。
  • 仲間
    • 一緒に食卓を囲む相手は、安心して心を許せる人にする。威圧的だったり、叱ったりする人とは同席しない。

また、毎日のように「これ食べてみたら?」と新しいメニューや食材に挑戦させている場合は要注意。お子さまにとって、ときに新しいメニューを試してみるのは好奇心を刺激されるものですが、あまりに頻繁(ひんぱん)だと大変なもの。しょっちゅう挑戦が求められる食事って大人でもつらいですよね。いつものメニューを楽しく食べて、たまに新しいものも食べる。そのくらいで十分なんです。

保護者のかた自身も食事を楽しんで

また、お子さまと食事を共にする保護者のかたは「自分が楽しく食べる」という意識も大切です。特に食事を作っていると、お子さまが食べなかった場合に、つい落ち込んだり、怒ってしまったりすることもありますよね。「子どもが食べないのは料理がイマイチなせい?」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

でも、多くの子どもは食べムラがあるもの。食べることは毎日毎日続くことなので、1回の食事で判断しないようにしましょう。前回の記事でご紹介した「食べない理由」に応じた対応がとれているなら、「あまり食べなかったけど楽しく食事してたからいいや」「今日は食べてないけど、明日食べれば大丈夫」とゆったり構えていれば大丈夫。

「子どもが食べないから……」と料理の腕を磨こうとしなくてよいのです。料理を手作りすることにこだわる必要もありません。保護者のかたは食事の楽しさの基準を子どもに置かず、自分に置いてください。保護者のかたが楽しんで食べていれば、お子さまもより楽しい気持ちで食卓についているはずですよ。

楽しい食卓をつくる会話術

山口さん:食卓での会話は、食事を楽しくしてくれる重要なもの。会話を弾ませながら、食事も進めていけるといいですよね。でも、特に小学校入学前のお子さまは《話しながら食べる》といった「ながら」作業がまだうまくできないもの。おしゃべりに夢中になって、食事の手が止まってしまう……なんてこともよくあります。
そのため「今日保育園どうだった?」「何して遊んだの?」といった会話で、おしゃべりが止まらなくなって困るというケースもあるでしょう。

そんな時、会話の話題としておすすめなのは、食卓に並んでいる料理や食材について話をすること。食事の話題なら、食事への集中を妨げません。その際、ただ「おいしいね」というだけでなく、「今日のキュウリはいつもよりしゃきしゃきしてておいしいね」とか「カレーにハチミツを入れてみたよ。ほんのり甘さも感じない?」と食感や味などを具体的に伝えてあげるといいですね。そうすれば「ちょっと食べて確かめてみよう」という気持ちも刺激され、食感や味を言語化する表現力も磨かれるはずです。

気になる食事中のテレビ問題。どうするのがよい?

食事中にテレビをつけてよいか、気になるかたは多いと思います。先ほどもお伝えしたように、小さなお子さまは2つのことを同時に行うのが難しいです。なので、食事に集中できなさそうな場合は、テレビはつけないでおきたいもの。
とはいえ、テレビがついていることで空気が和らぐこともありますし、ニュースの内容などを話題に会話が弾むこともあるでしょう。なにがなんでもテレビはNGというのではなく、状況に応じて判断する柔軟性を持っておけるといいですね。

まとめ & 実践 TIPS

最も多く食事をする場所である家庭こそ、食育に欠かせない場。楽しい食卓にすることで、食事へのポジティブなイメージをつくり、お子さまが主体的に食への興味関心を広げていけるようにできるといいですね。山口さんの身近なことから始める「食育」アドバイスに「今日から試してみよう」と思われたかたも多いのではないでしょうか。「食」が家族共通のコミュニケーションの話題となり、絆を強めていくことにもつながっていくといいですね。

プロフィール



自身の食べられない当事者経験をもとに、カウンセラー&講師として活動を開始。カウンセリングや全国での講演活動、メディア発信を通じて、保護者や保育園・幼稚園・学校の先生にメッセージを伝えている。著書に『子どもも親もラクになる偏食の教科書』(青春出版社)、『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)等。

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