子どもの主体性を引き出す3つのポイントとは【専門家解説&体験談】

  • 育児・子育て

近頃、教育・子育ての場で子どもの「主体性」や「主体的な学び」が大切だとよく聞くようになりました。
保護者のかたとしても、お子さまが自分から勉強したり、目標を立ててそのための準備を自ら進んでやってくれたら、うれしいもの。
ただ、「主体性は、一体どうすれば身に付くの?」「そもそも、今の子どもたちに求められている主体性って、どういうものなのかがよくわからない」なんて思う時もあるかもしれません。
そこで今回は、主体性とは何か? そしてお子さまの主体性を引き出すコツを、ベネッセ教育総合研究所主任研究員の岡部悟志が解説します。

プロフィール

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員  岡部 悟志(おかべ さとし)

東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)。これまで高等教育や社会人領域の調査研究を担当。その後、一般教育市場(産業)についてのリサーチに携わる。現在は、乳幼児から初等中等領域までの、子どもの発達や成長、保護者の子どもへの関わりや教育観などに関する調査研究に取り組んでいる。

この記事のポイント

そもそも、主体性とは?なぜ重要?

「主体性」とは、自ら考え判断したり、自ら責任を持って行動する態度や様子のことを指します
決して目新しい言葉ではありませんが、急速な社会の変化に対応するために国内外の教育制度や政策が変化するなかで、あらためてその重要性がクローズアップされているといえるでしょう。

たとえば、私たちを取り巻く「自然環境の破壊」や「国際情勢の不安定化」が進行しています。
また、人生100年時代といわれるなか、学校で学んだ知識が、その後も一生通用するとは限りません。さらには、AIの登場でこれまでの職業がなくなる可能性も指摘されています。
このようなめまぐるしい社会の変化や、先を見通せない社会に適応していくために、主体的に新しいことに挑戦したり、課題を解決するために仲間とともに取り組んだりすることが求められているのです。
とりわけ、これから数年後に社会に出るお子さまたちは、社会の変化がさらに大きくなるなかで、今の大人たちより一層、状況に応じて臨機応変に自分の人生やキャリアを主体的に切り拓く力が求められるのです。

主体性があるかないか、どう判断する?

お子さまの主体性について、考えてみましょう。

主体性を発揮している時のお子さまは、どんな様子を示すでしょうか。イメージしてみましょう。
他人が決めたことよりも、自分で決めたことのほうが、お子さまも、実際に行動に移して取り組むことでしょう。

そして、自分で決めたからには責任を持ってやり遂げようとします。そういう時のお子さまは、「やりたい」という内から湧き出るモチベーションをもち、時間を忘れて没頭したり、集中して取り組んだりします。その結果、高いパフォーマンスをあげたりします。
主体的に行動したことであれば、たとえうまくいかなかったとしても、そこから多くの気付きが得られます。あきらめずに粘り強く取り組んだり、やり方を工夫したり、失敗から教訓を学ぶ姿勢をみせることでしょう。

逆に、お子さまが主体性をうまく発揮できていない時は、どうでしょうか。保護者のかたや先生などから指示されたことを受け身でやっている状況では、集中力が途切れやすく、時間の割には結果が伴わないこともあるでしょう。また、失敗すると指示した人や周りのせいにしたり、すぐあきらめてしまったりしがちです。

ここで強調したいのは、「あの子には主体性があるけれど、この子には主体性がない」と言えるわけではないということです。
なかなか勉強に集中して取り組めない様子だけを見て、つい、「うちの子は主体性がない」と判断してしまうこともあるかもしれません。ですが、大人も同じですが、一人のお子さまの中にも、主体的になれる時と、そうではない時があるはずです。勉強は苦手だけれど、好きなゲームがあって、そのゲームのことなら自分から積極的に調べたりするなど、きっと主体的に取り組めるものがあると思います。

まずは、お子さまがどんなことに集中したり夢中になって取り組んでいるのかをよく観察して、最初はその分野からお子さまの主体性を発揮できる環境を整えてあげることが、保護者のかたの大切な役割といえるでしょう。
お子さまが主体的になれる分野の体験を上手に生かして、少しずつほかのことでも主体的に取り組めるようにしていく、といった考え方が重要だと思います。

主体性を引き出す関わり方 3つのポイント

1.興味を示したことは、とことんやらせる

主体性を引き出すためには、第一にお子さまが自分でやることを決めて、最後までやり遂げる機会をつくることと、そのような環境を保護者のかたが整えてあげることが大切です。
いきなり子どもに決めさせるのが心配だったり、つい先回りしたくなったり、ということもあるかと思います。
ですが、お子さまが自分から「やりたい」と興味を示したことは、小さい失敗やトラブルがあったとしても、できる限り最後まで、とことんやらせてみることが主体性を育むことの第一歩です。

2.振り返りを促す

また、お子さまがやりたいことに挑戦したあと、成功・失敗によらず、本人の振り返りを促す対話も、お子さまの次の主体性を育むうえで大切なことでしょう。
たとえば、何かうまくいった時、「やったね」「すごいよ」と一緒に喜び、共感することが大事です。そして、ほめるのに加えて、さらに「それってどうやったの? 教えて」と、一言踏み込んで聞いてあげてください。
すると、子どもは自分のがんばった過程の「ここが良かったんじゃないか?」など、自分の成功要因を振り返ることができます。
そして、次に別の何かに挑戦する時に、そこでの体験をとおして学んだことを活用できるでしょう。

3.失敗を責めず、受け入れる

逆に、失敗した時には、責めずに「残念だったね」とお子さまのつらく悲しい気持ちや悔しい気持ちなどを、受け入れてあげましょう
そして、お子さまの様子をみながら「もう少しうまくやるには、どうしたらいいんだろうね?」と問いかけて、お子さまが前向きに再挑戦できるような振り返りのサポートをしましょう。

どうしたらいいのか、お子さまが一人では考えられない時は、「ママ・パパはこう思うけど、〇〇はどう思う?」など、本人とは異なる立場からのヒントを出してはどうでしょうか。お子さまとの対話をとおして、最終的には自分で気付きを得て、次にすべきことを一緒に考え決めてもらうとよいと思います。

学齢別 主体性を育てる関わり方

ここではお子さまの学齢別に、保護者のかたや周囲のどのような関わり方が主体性を育むのか、幼児期~小学校低学年までのお子さまと、小学校中学年以降~高校生のお子さまの2つの学齢に大きく分けて紹介します。

幼児~低学年の場合

幼児期や小学校低学年ぐらいまでのお子さまは、遊びの中で主体性を育みます
遊びはこの時期のお子さまにとって、主体性の発揮に欠かせない自己決定を経験する重要な場なのです。
大人が決めたルールの中で「さあみんなで一緒にやりましょう」ではなく、どんなルールで遊ぶのかはできるだけ子どもたちに任せて保護者のかたは見守りましょう。
お友達と自由に遊ぶ中で、「こうしようよ」「ああしたほうがいい」など自発的に話し合いが起き、自分たちで遊び方やルールを決めていきます。
遊ぶ中でちょっとした失敗も起きるでしょう。
しかし、そのトラブルを自分たちで解決しながら仲間と楽しく遊ぶことで、お子さまの主体性は育っていきます。

また、興味を持ったことに取り組める環境を整えてあげることが大切です。
お子さまがどんなことやどんな遊びに興味があるのか観察し、それをとことんやらせてあげることで、お子さまが主体性を育んでいくことでしょう。
逆に本人がつらいこと、楽しくないことをさせても主体性は育たないので、お子さま自身の興味や様子を見ながら、無理をさせないようにしましょう。

小学校中学年~高校生の場合

小学校中学年以上になっても、お子さまに自己決定を経験するチャンスを与え、保護者のかたは見守る関わり方をするのが基本です。
ただ、中学年以上になると、遊びという枠組みではなくて、スポーツやクラブ・部活動、行事などの課外活動や、勉強など、自己決定を行う場面が多くなります。
保護者や指導者の支えは必要ですが、ある程度子ども自身の裁量で決めてやってみて、「うまくいった」「失敗した」「じゃあ次どうしようか」と取り組みを振り返りながら考えられる環境を用意してあげられるといいですね。

中高生の場合、志望校や将来の職業などについて、さまざまな情報や人の意見を踏まえたうえで検討していく過程も、自己決定の経験を積むよいチャンスです。
保護者のかたは、お子さまだけでは不足しがちな情報を一緒に集め、それを通じて視野を広げられるようなアドバイスをすることが重要かと思います。
情報がなければ、お子さまは「なんとなくよさそうだから」など、あまり考えずに決めてしまう可能性があるからです。

また、お子さまと同世代の分かり合える仲間と対話しながら自分で決めることも、主体性を育むうえでとても重要だと思います。

みんなはどう接した? 主体性を引き出す関わり方

ここからは幼児から高校生まで、お子さまの主体性を引き出すために保護者のかたがしていることの体験談をお子さまの学齢別に紹介します。
みなさん、どんな工夫をされているでしょうか。

●幼稚園年長以下のお子さまの場合

「やってみたい、お手伝いする!」と言ってくれた時は「忙しいから」と言わずに、なるべくやってもらっています。子どもができそうなことは、こちらからも「やってみる?」とひと言聞いて、本人にやるかどうか決めてもらいます。
(神奈川県 ママさん 幼稚園児の保護者)

やりたいと本人が言ったもの(たとえば料理や、野菜の栽培など)はできるだけ行えるようにしたところ、できることが増えたり、達成感を得られたりして子どもが満足していました。
(群馬県 かなつんさん 幼稚園児の保護者)

●小学生のお子さまの場合

子どもにとって自分の意見がきちんと通る体験が大事だと思い、気をつけています。たとえばフードコートで子どもに「何が食べたい?」と聞いて「うどん」と答えたのに、「ラーメンのほうがいいんじゃない」などと親が言わないようにします。
子どもは、親が自分の意見をきちんと聞いてくれた体験をすると安心して、自分で考えて言ったり、自分で考えて行動したりする主体性につながると思います。
(愛知県 ひかりんさん 小学3年生の保護者)

あまり親がなんでもやりすぎないようにしています。子どもが自分で朝食を用意するなど、自分でやる習慣が付きました。
(神奈川県 わかめさん 小学3年生の保護者)

なるべく小さなことでも自分の意思で決めさせています。親の言うことは素直に聞かないかわりに、自分でよく考えて行動できるようになりました。
(埼玉県 きりんさん 小学5年生の保護者)

子どもには「ママは大人だけど、別に神様じゃないから、すべてが正しいわけじゃないんだよ」「ママもうまくいかないこともあるんだから、一緒に考えよう」と言って自分で決めて行動させるようにしています。また家族でよく話し合って意見を言い合える場を作り、それぞれを尊重して、家族だけど一人ひとり意見が違うことを理解できるようにしています。
(神奈川県 rinoさん 小学校6年生の保護者)

●中学生のお子さまの場合

本人からやりたいと言った事は尊重しています。また、より良い方法や先の見通しなど、自分で考えさせています。
(千葉県 おばちゃまさん 中学2年生の保護者)

子どもへの接し方について、普段から「声をかけすぎない」「指示しすぎない」「見守る」の3つを守るように、気をつけています。
(神奈川県 おちびさん 中学3年生の保護者)

身につける洋服、文房具などの持ち物、宿題で漢字と算数どちらから取り組むかなど、ささいな事も自分で選択する機会を与えてきました。その成果かどうかはわかりませんが、高校受験の志望校も自分の考えで決めて、自分から目標に向かって取り組むことができました。
(東京都 むまさん 中学3年生の保護者)

うちの子の場合、料理をすることが主体性を伸ばすのにとても効果がありました。パソコンでレシピ選びから始め、失敗したり成功したり、自分で考え、行動する癖がついています。
(島根県 ぱきらさん 中学1年生の保護者)

●高校生のお子さんの場合

危険なことなど本当にやってはダメなところだけを管理して、それ以外は自分の判断に任せています。
(神奈川県 りゅうめいさん 高校1年生の保護者)

子どもが自分から進んで物事に取り組めるように「~しなさい」的なことはあまり言わないようにしています。
(広島県 クローバーさん 高校1年生の保護者)

家族旅行やキャンプに行く前には、旅行先の観光地やお店などを自分で調べて、計画を立ててもらっています。自分で考えるので旅行も積極的に楽しめて、また、高校2年生で友達と旅行したときにその経験が役に立ったそうです。
(岡山県 ふぐ田ふぐ子さん 高3生の保護者)

まとめ & 実践 TIPS

主体性とは、自ら考え判断し、責任を持って行動に移すこと。決して目新しい言葉ではありませんが、急速に変化する社会を生きていくために、ますます重要になっています。誰かに決められたことを受け身でやっても、お子さまの主体性は発揮されないままです。お子さまの主体性を育むには、お子さまが自分でやりたいことを決め、成功しても失敗しても、最後までやり遂げる経験を積むことが必要です。
その第一歩として、お子さまが自分から「やりたい」と興味を示したことは、小さな失敗やトラブルがあったとしても、最後までとことんやらせてあげましょう。主体性を発揮する場は、何も勉強面だけではありません。1つの側面だけみて、お子さまの主体性がないと判断せず、お子さまが何を好きなのか、何に興味があるのかに関心を持ちながら接していけるとよいですね。

※2024年2月に行った「保護者のかた向けアンケート」(1,217人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

プロフィール



東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)。これまで高等教育や社会人領域の調査研究を担当。その後、一般教育市場(産業)についてのリサーチに携わる。現在は、乳幼児から初等中等領域までの、子どもの発達や成長、保護者の子どもへの関わりや教育観などに関する調査研究に取り組んでいる。

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