教育にかかるお金が大変な時、子どもに伝えるべきこと

震災の影響や経済の不透明感のなか、収入が伸び悩んだり減ったりする家庭は少なくなく、教育費の負担が重いという話は増えているように感じます。
義務教育に加えて公立高校の授業料は無償になったというのに、学校に払う授業料以外の費用負担は変わりませんし、授業料以外の費用のほうが多いくらいですから、無償化のありがたみも、なかなか実感が湧きません。
子どもを育てるにあたってかかる費用は、教育費以外にもあって、こちらもかなりの金額です。教育費は、その子のためだけに払う金額が明確ですから、「あぁ、これだけ払っているな」と、はっきりわかります。わかるから負担感を覚えますし、逆に「払わなくては!」と自覚もします。食費などは家族全体の金額でとらえますので、何となく高くなってきたとは感じても、「この子にいくらかかっているか」は、把握しづらいものです。

内閣府の「2009(平成21)年度インターネットによる子育て費用に関する調査」(外部のPDFにリンク)によると、保育所・幼稚園のころには、一人あたり年間22万円だった食費が、中学生になると36万円になっています。学校外教育費は、小学1年生で13万円ですが、中学1年生になると33万円。小学生のころには数千円だった携帯電話代が、中学3年生では年間3万円です。
子どもの成長と共に高くなっていく諸々の費用すべてを、楽に支払えるようであればよいのですが、なかなかそうもいきません。払わないという選択も難しく、親の悩みはつきません。

では、お金のことは、親だけが悩んでいるのかというと、案外、そうでもないのです。
親が悩んでいる様子、大変そうな様子は、子どもも感じているものです。特に中学生くらいになると、親子のコミュニケーションがうまく取れずに、子どもはちっともわかっていないと親のほうは思いがちですが、子どもは親の様子を見ています。携帯料金を使いすぎないように子どもなりに気を使ったりもします。家の電話から友人の携帯へ電話をかけるようにした結果、家全体での電話代が高くなってしまう……という失敗をしたりもして、親は泣きたくなることもあるのですが。

中学生や高校生と話をすると、親に苦労をさせたくない、学費のことで迷惑をかけたくないと考えている子が多いことに驚きます。
わたしが、「母」の顔で3人の息子たちと話すときには、まだまだ幼い、親の苦労をちっともわかっていないと腹立たしくなることも多いのですが、中学生の次男の友人たちが遊びに来ると、高校の費用や塾代の心配が話題に上ります。
ファイナンシャル・プランナーとしてご相談者の家に伺った際、高校生のお子さんは、学費とランチ代、進学費用が気になると話してくれました。
高校へ進学費用のセミナーへ出向くと、保護者に迷惑をかけたくない気持ちと、自分だけで費用を用意することはできない現実の狭間で悩んでいる生徒から相談を受けることもあります。
共通しているのは、親がお金のことで大変そうだということはわかっていることと、でも、具体的にどのように大変なのかを聞けずにいることです。
一方、親は、子どもに苦労をかけたくない気持ちと、苦労を察してほしい気持ちで揺れ動いています。
お互いに気遣っているのですが、具体的なやりとりがないままになっているのですね。これは、親のプライドが邪魔をしているような気もします。お金のことを知らせるということは、自分の収入も伝えなくてはならないように思えますから。

でも、大切なことは、まず、親が歩み寄ることではないでしょうか。
具体的に収入金額を伝える必要はありません。携帯料金が月額いくらまでなら家族間の連絡用として親が負担してもよいが、それ以上はお年玉から出しなさい、アルバイトで稼ぎなさいという言い方でよいでしょう。
進学に関する費用は、早めに伝えることが必要です。親が負担してくれるものと思いこんでいたのに、高校3年生の秋にAO入試で大学に合格したら、実はまったくお金がなく、教育ローンの手続きも間に合わず、進学できなかったという話がありました。親のほうは、「出せる」とは言っていない、と言うのですが、「出せない」とも言っていませんでした。早めに、費用負担が難しいことを子どもに伝えられていたら、親に頼る以外の方法を探す時間があったのです。

親子でお金のことを話すのは、はしたないことではありません。子どもの希望を叶えるのは、親の希望でもあるはずです。お金は、希望を叶える道具のひとつに過ぎません。どれだけ上手に道具を使うか、というだけのことです。気遣いしすぎず、腹を割って親の考えと実情を具体的に伝えましょう。「親が負担できるお金」という道具で足りない場合には、他の道具を、子どもと一緒に探す一歩になります。


プロフィール



「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

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