格差を乗り越える家庭と学校の在り方は? 全国学力・学習状況調査分析から‐渡辺敦司‐

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が今年も4月22日に行われました。結果も気になるところですが、大切なのは結果をどう今後の指導に生かすかです。ところで子どもの学力に関しては、家庭の経済状況や保護者の学歴にも左右されることが、先頃発表された全国学力テストの分析結果から改めて注目されました。しかし、どの家庭に生まれるかによって子どもの学力がある程度決まると言ってしまっては、身もふたもありません。分析の主眼も、どうやって格差を乗り越えて子どもの学力を伸ばすかを探ることにあります。そこから何が明らかになったのか、見てみましょう。

家庭の状況と学力に関係があることは、2008(平成20)年度の全国学力テスト結果を用いた一部自治体の追加分析で明らかになっていました。今回は2013(平成25)年度の「きめ細かい調査」に合わせて、同じお茶の水女子大学に委託し、規模を全国に広げて行われました。その結果、不利な環境を克服している子どもや学校の特徴が改めて浮き彫りになりました。
それによると、不利な家庭環境にもかかわらず高い学力を備えた子どもには、▽朝食を毎日食べる、毎日同じくらいの時間に寝起きする、テレビやゲームの時間が少ないなど「生活習慣」▽保護者が本や新聞をすすめる、一緒に図書館に行くなど「読書や読み聞かせ」▽「勉強や成績に関する会話・学歴期待・学校外教育投資」▽授業参観や学校行事に積極的に参加するなど「保護者自身の行動」▽家で計画を立てて勉強する、学校の規則を守るなど「学習習慣と学校規則への態度」……などが特徴として挙げられるといいます。とりわけ家庭での勉強時間は「不利な環境を克服する手段の一つ」(報告書)で、ポイントは小学6年生時点で「30分以上」勉強しているかどうか、中学3年生時点で「全くしていないかどうか」だといいます。

ここで報告書が、保護者がこうした働き掛けを「行っていない、行えない状況」もあると指摘している点に注目したいと思います。生活に追われる保護者に、家で子どもの勉強を見ろといっても無理な話です。そうした保護者や子どもを支援する、学校の役割も欠かすことはできません。
追加分析によると、不利な環境にある家庭を多く抱えているにもかかわらず、高い学力を示した地域の学校には、▽家庭学習の指導の充実▽小中連携の取り組み▽言語活動の充実▽基礎・基本の定着と少人数指導……といった特徴が見られたといいます。特に、宿題の出し方や提出ノートの丁寧な赤ペン指導などが有効だといいます。

ただ、地域の状況にも違いがあります。分析によると大都市の学校では、通ってくる子どもたちの家庭環境に大きな差があります。一方、地方では家庭環境の差は小さくても、全体的な有利・不利は一様ではありません。重要なのは、全国学力テストのような客観的なデータをもとにしながら、その学校に合わせた学力向上の方法を研究し、先生方に取り組んでもらうことのようです。単に成績の振るわない学校の尻をたたいたり、成績のよい学校のやり方をそのまままねたりすれば学力が上がるというわけではなさそうです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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