外国人留学生が3年連続で減少……大学のグローバル化で増えるか? ‐斎藤剛史‐

日本の社会のグローバル化は、日本人が海外に出て活躍することだけに限りません。多くの外国人が日本に留学してくるのを促進することも必要です。ところが日本学生支援機構の調査で、日本への留学生は3年連続で減少していることがわかりました。

同機構の調査結果によると、2013(平成25)年5月1日現在、日本の大学・大学院、短大、専門学校などで学んでいる「留学生」(日本語学校など日本語教育機関に在籍する者を除く)は13万5,519人で前年度より2,237人(1.6%)減少しました。かつて日本への留学生数は年々増加傾向を続け、10(同22)年度には14万1,774人とピークを記録しました。しかしその後、3年連続で低下が続いています。
留学生の割合を出身国・地域別に見ると、中国が60.4%(前年度比2.3ポイント減)、韓国が11.3%(同0.8ポイント減)、ベトナムが4.6%(同1.4ポイント増)、台湾が3.5%(同0.1ポイント増)、ネパールが2.4%(同0.6ポイント増)、インドネシアが1.8%(同0.1ポイント増)などで、中韓両国で71.7%(同3.1ポイント減)を占めています。ただし、1年以内の短期留学だけを見ると、中国・韓国・台湾の学生は計51.7%、アメリカ・フランス・ドイツからの学生は計20.7%となります。
最近の留学生の減少は、2011(平成23)年の東日本大震災と福島第1原発事故の発生、領土問題などをめぐる中韓両国との関係悪化が大きく影響しているようです。

政府は、「留学生30万人計画」として2020(平成32)年度までに外国人留学生数を30万人に増やすことにしています。同年には東京オリンピック・パラリンピック開催もあり、政府としてはどうしても計画を達成したいところですが、現在の状況ではかなり厳しいといえるでしょう。一方、政府の教育再生実行会議は2013(平成25)年5月の第3次提言で大学教育のグローバル化を打ち出し、今後10年間で世界大学ランキング100位以内に日本の大学を10校以上ランクインさせるよう提言しました。大学ランキングはグローバル化の度合いが評価に影響するため、留学生数の拡大が不可欠です。文科省がスーパーグローバル大学を指定して、英語による授業を増やすなど大学教育のグローバル化を進めようとしているのもこのためです。
ただし現在の外国人留学生の状況では、2020(平成32)年度までに30万人計画を達成することはかなり難しそうです。また、スーパーグローバル大学(外部のPDFにリンク)などを中心に英語による授業が広がっても、集められる留学生の数には限りがあるでしょう。留学生の大半を占める中韓の学生を今後も増やすと同時に、中韓両国以外の国・地域からの留学を促進できるかが、大きなポイントといえます。留学生は高度な知識や技術へのニーズだけでなく、その国に対する興味や憧れがなければやってきません。

留学生30万人計画というと大学などの話で、一般社会とはあまり関係ないように聞こえます。しかし、留学生を増やすには外国人が暮らしやすい社会、外国人が来てみたいと思う国であることが必要です。どんな国・地域からどれだけの留学生が集まるかは、社会のグローバル化の度合いを映す鏡なのかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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