青山メソッドですらすら書ける毛筆上達のコツ 【第1回】筆の正しい使い方を理解しよう

小学3年生から書写の授業で、毛筆の学習が始まります。お子さまは毛筆を苦手と感じていませんか? 美文字王子こと、青山浩之先生に毛筆がうまくなるコツを伝授していただきます。青山先生の「青山メソッド」でコツを理解して、お子さまがきれいな文字を書けるように、手伝ってあげてください。
今回は、筆をはじめとした道具の正しい使い方や姿勢、基本の「横画」「縦画」について学びましょう。



書き始める前に 筆の正しい使い方と道具の手入れを知ろう

毛筆が苦手なお子さまは、半紙を前にすると、何をしていいのかわからず、いきなり書き始めて失敗してしまったりします。しかし、筆の機能を知り、大事なポイントを理解すれば、美しい文字が書けるようになります。

最初に筆の正しい使い方をご紹介します。
新品の筆はのりで固まっています。穂先の方からゆっくりとほぐしてから使います。片手で筆を回しながらまんべんなくほぐしましょう。

●この時、根元3分の1くらいはほぐさずに硬いままにしておきます。
●書く前に一度、根元まで墨を含ませ、穂先を整えながら、余分な墨を落とします。

筆が十分に墨を含んでいないと、穂先が割れてしまいます。また、手入れの悪い筆や、作りの悪い筆の場合も穂先が割れてしまって、ちゃんと字が書けません。

続いて、実際に筆に墨を付けて書いてみましょう。市販の墨液には、薄いものがありますので、薄いなと感じたら固形墨を使ってすり足すとよいでしょう。また、下敷きに折り目が付くと、半紙が平らにならず書きにくくなります。片付ける時などに気を付けましょう。
お子さまが毛筆を苦手としている場合、一度道具の状態にも気を付けてみてください。道具の状態や使い方で、文字が書きにくくなっている場合があるので要注意です。



姿勢を正し、筆は手首を真っすぐ伸ばして持つ

毛筆では姿勢が大切です。上半身を大きく使う必要があるため、体全体の姿勢が筆の動きに直接影響するからです。
書き始める前に、まず姿勢を整えましょう。

1. 背筋を伸ばし、おなかも背中もこぶし一つ分空けるようにします
2. 右のひじを上げるようにし、左手は半紙に軽く添えます
3. 足をしっかり床につけるようにしてください

筆を持つ位置も大切です。少し高めの位置(真ん中よりやや下)を持ちましょう。筆の持ち方には、人さし指1本をかける一本がけと、人さし指と中指をかける二本がけがあります。
筆を持った時に、招き猫のように手が下がらないようにしましょう。手首が真っすぐに伸びていることが肝心です。



青山式「ロボットアーム法」で上半身をしっかり使って書く

きちんとした姿勢で正しく筆を持ったら、早速書き始めましょう。まずは「横画」からです。
左斜め上の向きで筆をトンッと下ろし、軸を回さないように右へ動かします。この時、力を緩めないで横にスーッと動かし、最後はピタッと止めます。大切なことは、手で書こうとせず、ひじを横へしっかりと動かして書くことです。この時、ロボットの動きをイメージし、上半身をしっかり使って書くようにしてください。これを青山メソッドではロボットアーム法と呼んでいます。

続いて「縦画」を書いてみます。同じように穂先を左斜め上に向け、軸を倒さないで真っすぐにスッと引き、ピタッと止めます。この時、ロボットアーム法をしっかり意識してください。筆を送る時も、穂先の向きが左斜め上を向いているのがポイントです。だいたい45度くらいを目安にしましょう。筆と腕の動きを見ると、筆は常に半紙に対して立った状態を保っています。

毛筆で文字を書く時、筆の穂先は常に左斜め上を向いています。この穂先の角度を保つために、手首ではなく腕全体を使うロボットアーム法で筆を動かすことが大切です。


プロフィール


青山浩之

横浜国立大学 教育人間科学部教授。全日本書写書道教育研究会理事、全国大学書写書道教育学会常任理事。全国の小・中・高校の「書写」「書道」の授業の指導方法や、教員の育成など、「書写・書道教育」全般を研究するほか、講演活動やテレビ出演など多方面で活躍中。

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