スマホ問題は子どもに任せた方が本当はうまくいく!?

連載1回目の頃よりスマホをもつ中学生がさらに増えました。第3回目は、子どもたちの「スマホ」問題に対して、増えてきた自治体の取り組みや、子どもたち自身による取り組みについて、兵庫県立大学の竹内和雄准教授に伺いました。 ※2015年5月現在 (取材・文/長谷川美子)

刈谷市の「スマホは夜9時まで」規制が与えたインパクトは大きかった

昨年、愛知県刈谷市が、全ての小中学生に対し、午後9時以降スマホや携帯を使わせないよう呼びかけたことが話題になりました。この背景には無料通信アプリなどを使ったトラブルや、生活習慣の乱れを回避するための措置でした。発案したのは、刈谷市教委や市内の小中学校、警察などでつくる「市児童生徒愛護会」。 

 さてこの取り組みの結果ですが、刈谷市の中学生に規制への賛否をアンケート調査したところ、中三生の7割ぐらいが反対。「急に9時までと言われても…」という反応でしょう。でも残り3割の中三生は賛成。3割の子は「夜中のスマホの会話を終わらせるいいきっかけになる」と歓迎していたのでしょう。また中一生では7割もの子どもが賛成でした。7割が賛成した理由はわからないですが、まだ夜中のSNSが習慣になっていなかったから、あるいは反抗期に入っていない年齢のためではないかと私は想像しています。 

この刈谷市の試みが日本社会に与えた影響は大きく、全国の多くの自治体が似た取り組みを始めました。しかし課題としては、勝手に市やPTAの大人が時間を決めるのではなく、本当は子どもを巻きこんだらもっといいのではないかと私は思います。子どもは「勝手に決めるなよ」ときっと言いますから。 

子どもたちが自ら考えるチャンスを用意することがベストの方法

スマホ問題のベストの対策は、「子どもたち自身に考えさせること」に尽きると、今私は考えています。私はこれまで、研究室に出入りする大学生たちと一緒に、中高生にスマホについて考えてもらう場を各地で設けてきました。それが大きな成果につながった地域の例として、兵庫県猪名川町があります。昨年、猪名川町では中高生が集まって自分たちのスマホの問題を話し合い、問題の実態を調べるアンケートを実施しました。結果、スマホ所持者とガラケー所持者では、大きな違いがみられました。例えば、「午前1時以降に寝る」と答えたスマホ使用者の割合は、ガラケー使用者の2倍以上、面識のない人と「ネットで知り合い、実際に会ったことがある」と答えたスマホ使用者は、ガラケー使用者の5倍にもなっていたのです。

この結果から、改めて問題意識を高めた彼らは、「じっくり話し合う機会がほしい」と主張し、猪名川町の中高生が自らのスマホ問題を考える「第1回 INAGAWAスマホサミット」が開催されました。町内外の大きな注目を集めたこのサミットでは、子どもたちのスマホ問題への赤裸々な本音が飛び交いました。その本音の話し合いで問題を冷静に受け止められた彼らは、最終的に下記のような「スマホサミット宣言」を、自分たちの対策としてまとめたのです。参加した子どもたちは、その「スマホサミット宣言」をポスターにし、学校だけではなく、町内のいたるところに貼ってほしいというメッセージを残しています。

スマホサミット宣言

私たち、猪名川の中高生は

①自分たち自身でルールを作ります
   夜○時まで 個人情報を書かない 心を広く(既読スルーを気にしない等)

②リアルのコミュニケーションを大切にします

③書いていいのか、ダウンロードしていいのか 立ち止まって考えます

 

完全に任せることで子どもたちから想定以上の対策が出てきた!

今年の2月、猪名川町では第2回目のスマホサミットが開催されました。全国初の試みとして、高校生による小中学生への「スマホの『公開』模擬授業」があり、最新の全町アンケート調査発表もあるなど、今回も子どもたちによるサミットは大成功でした。 

実は第1回目のサミット開催時から、このサミットに参加するにあたって、大人側は次のようなルールを共有していました。 

「あくまで子どもたちが主役であり、方向性に大人が干渉しない」

「子どもが求めてきたときだけ、大人は手を差し伸べる」

こうして子どもたちは、自分たちに「任せられた」ことでしっかり考え、私たち大人では全く考えつかないような解決策をも生み出せることを証明してくれました。中高生自らがもった問題意識、それに対して解決策を見いだす姿勢には、専門家であるはずの私も舌を巻くばかりでした。子どもたちは、大人がどういう答えを要求しているか敏感に察すると、自分たちで考えるのをやめ、予定調和に終わらせようとします。猪名川町サミットの場合、大人側が腹をくくり、答えを全く用意しなかったことこそ、成功の要因だったのではないでしょうか。

 

プロフィール


竹内和雄先生

兵庫県立大学環境人間学部准教授。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。ウィーン大学客員研究員。

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