大卒の新規就職者、深刻な企業とのミスマッチ

厚生労働省がまとめた「新規学卒者の離職状況調査」によると、大学を2013(平成25)年3月に卒業して就職した者のうち31.9%が、3年以内に早期離職しています。景気の回復傾向を受けて、新規大卒者の就職状況は好調を維持していますが、依然として企業と学生の間のミスマッチは大きな問題となっているようです。

早期離職率は4年連続で30%台で推移

大学生の就職率は、2013(平成25)年3月卒が93.9%、14(同26)年3月卒が94.4%、15(同27)年3月卒が96.7%、16(同28)年3月卒が97.3%と推移しており、既にリーマンショック以前を上回る好調さで、「売り手市場」ともいえる状況になっています。最近では、就職活動日程の短縮などもあり、企業も、大学生の採用確保に力を入れています。

ところが、せっかく就職しても、3年以内に早期離職してしまう者がいることが問題となっています。厚労省の調べによると、2013(平成25)年3月卒の新規大卒者のうち、1年目で離職したのは12.8%、2年目は10.0%、3年目は9.1%となっています。

2012(平成24)年3月卒の早期離職率は32.3%ですから、それと比べると0.4ポイント減であり、全体では「ほぼ横ばい」といえる状況です。しかし、2010(平成22)年3月卒から13(同25)年3月卒までの早期離職率は4年連続して30%台で高止まりしており、このまま見過ごすわけにはいかない状況ともなっています。さらに2014(平成26)年3月卒の1年目離職率は12.3%、2年目離職率は10.5%となっており、このままいけば3年目までの離職率がやはり30%を超えることは確実と見られています。

キャリア教育の充実で防止を

2013(平成25)年3月卒の新規大卒者の早期離職状況について見ると、従業員1,000人以上の事業所の早期離職率は23.6%、500~999人が29.2%、100~499人が31.9%と、従業員規模が小さくなるにつれて早期離職率が高くなり、5~29人は49.9%、5人未満は59.0%となっています。従業員30人未満の事業所では、新規大卒者の約5~6割が3年以内に離職していることになります。

早期離職率の高い業種は、「宿泊業、飲食サービス業」が50.5%、「生活関連サービス業、娯楽業」が47.9%、「教育、学習支援業」が47.3%など。逆に早期離職率が低い業種は、インフラなどを扱う「電気・ガス・熱供給・水道業」が8.5%、「鉱業、採石業、砂利採取業」が12.4%、「製造業」が18.7%などとなっています。

もちろん、早期離職のすべてが悪いわけではありません。自分に合った企業や業種に転職するのも大切なことです。しかし、懸念されるのは十分な企業研究などをしないまま、とりあえず企業の知名度やブランド名だけで選んだり、仕事の内容をよく知らないまま就職を急いだりして、仕事や企業との間にミスマッチを起こすことです。

いったん早期離職した場合、希望した次の就職先が見つからないということも少なくありません。就職状況が比較的良好な現在だからこそ、将来のキャリアや人生設計を見据えた仕事選びが重要であり、そのための高校や大学におけるキャリア教育の充実が、今まで以上に求められているといえるでしょう。

※新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000140526.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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