第10回:変化の時代を生きる我が子のために、今から家庭でできる3つのこと

時代の波や教育環境の変化のなかで、子どもが主体的に学び、自分の進路を切り開いていけるようになるためには、保護者はどのようなサポートができるのでしょうか。最終回は、今すぐ始められる子どもとの関わり方について、ベネッセ教育総合研究所の小泉和義がお話しいたします。

●“勉強に自信がつく”と“主体的に学ぶ”は相関している

ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する実態調査」(2014年)によると、「目標を決めて勉強する」「計画がうまくいっていなければ見直す」「丸つけをした後に解き方や考え方を確かめる」と回答した子どもは、そうでない子どもに比べ、「勉強に自信がある」と回答した割合が高くなっています。このことから、勉強への自信と主体的な学びは相関しているということが分かります。それでは、子どもが勉強に自信をつけるために家庭ではどうサポートすればよいのか、具体的な関わり方をご紹介します。

●自信をつけるには、自分で決める・過程をほめる・共に考える

ポイント① 子ども自身が決めるように促す
例えば、「明日はテストだから17時から勉強しなさい」と“指示”するのではなく、「明日はテストだけど、何時から勉強するの?」と“問いかけ”、子ども自身が決めるようにします。自分で決めたことは守ろうとするもの。すると、必然的に自分から勉強するようになり、それがうまくいくと自信になります。先述の調査でも、「子どもが自分で決める機会を設けている」と回答した家庭の方が、そうでない家庭に比べて「勉強に自信がある」と回答した子どもの割合が高いことがわかっています。ただ、子どもに決めさせるというのは案外難しいこと。私自身も中学生の息子がいますが、サッカーから帰ってきて砂だらけの足で家に上がり、勉強もしないでそのままソファで寝てしまうことがよくあります。だから、子どもが帰ってきた途端に先手を打って「そこで靴下を脱ぎなさい!」「そのままお風呂場に行きなさい」などと先回りして指示をしていたりします。全てを子ども主体にしていては、保護者もストレスがたまってしまいますから、一日1回でもよいので、口に出して指示をしてしまいそうなときに、ぐっと我慢して子どもに決めさせるように促してみましょう。

一方で、中学生ではまだ視野が狭く、情報量も少ないので、決めるのは子ども自身でも、決めるための情報やアドバイスを保護者から与えることが必要です。情報を得ることで子どもが納得のいく決定ができ、それが自信にもつながります。なかなか自分で決められない場合は、二択でもいいので選択肢を与えて、そこから選んでもらうといいでしょう。勉強に限らず、日常の中でも子どもが自分自身で決める機会を増やし、最終的に「自分で決めた」と思わせることが大切です。

ポイント② 結果だけでなくプロセスもほめる
子どもの勉強は、テストの点数や通知表の成績など結果だけを評価しがちですが、例えば100点を取って「すごいね、天才!」とほめすぎると、次に80点を取ったときに見せづらくなってしまいます。怒られるだろうな、残念がるだろうなと思うと、いつしかいい点のときだけ見せるようになってしまいます。また、結果だけを評価すると、何事も結果がすべてだと思い込んでしまう恐れもあります。子どもが自信をつけるためには、保護者は結果の一点だけを見るのではなく、努力のプロセスも見て、ほめることが大切です。仮に以前より点数が下がったとしても努力の跡が見えるのなら、そこをほめる。そうすると、結果が悪くてもダメだと思わずに「努力することが大事なんだ」と捉えることができ、それが自信につながっていきます。

それでは、結果はほめなくていいのかというとそうではなく、結果は結果としてほめるべきです。ただし、「よくできたね」「じょうずだね」だけでなく、「苦手な問題がよく解けたね」「この色使いが素敵だね」など具体的にほめるようにしたいもの。そうすることで単なる結果だけでなく、子どもの努力も認めることになります。中学生になると子どもとの関わりが減りますが、結果だけでなくプロセスも見守り、努力や頑張りをほめることで子どもは「わかってくれる」と心を開き、子どもとの関係もよりよいものになるのではないでしょうか。

ポイント③ 答えを先取りしないで共に考える
子どもと一緒に考えることも有効なコミュニケーションです。例えばテストの点数が悪かったとき、「もっと勉強しなさい」で終わらせてしまうと子どもの思考は止まってしまいます。そうではなく、「今回はどうして60点だったんだろう?」と問いかけ、原因を一緒に考える。そして、原因を突き止めたら「どうすればもっと点数が取れるのだろう?」と問いかけ、解決策を一緒に考える。気をつけたいのは保護者が答えを先取りしてしまうこと。あくまでも子ども自身に考えさせることが大切です。

「問題の原因を考え」、その原因をもとに「解決策を考える」。この思考パターンが定着すると何か問題が起きたときに自分で考えて解決する力が身につきます。これは勉強だけでなく、生きていくうえで必要な力であり、大きな自信になります。ぜひ家庭でディスカッションする機会を増やし、一緒に思考力を鍛えてください。

●“自信”という最強のエンジンを積んで未来へ

子どもが自信をつけられるような関わりのなかで、これからの時代に特に必要とされる「思考力・判断力・表現力」も育まれます。自分で決めることは「判断力」を養い、共に考えることは「思考力」を育て、また、自分の気持ちや考えを伝える過程では「表現力」も身についていくはず。
思考力などは、今はまだ客観的に測れる尺度が不十分なので、ちゃんと身についているのか見えにくいですが、数値では計れない“見えにくい力”だからこそ、結果だけでなく過程を評価してあげることが大切です。その過程で、「積極的に学んでいるな」「自信をもって取り組んでいるな」ということが見えれば、とりあえずのゴールと考えてよいのではないでしょうか。

この先どんな時代になろうとも、どんな変化があろうとも、自信をもって前向きに進んでいくエンジンさえあれば、途中で問題にぶつかってもそれを乗り越えていく力が生まれます。そして、このエンジンは学校だけで育つものではなく、ご家庭でのお子さんとの関わりが重要になります。中学生になると勉強のことで口出しする機会は減りますが、子どもの自信を育む関わりはむしろこれからが本番です。ぜひ「自信」という名の最強のエンジンを積んで未来へ送り出してあげてください。
(取材日:2017年4月14日)

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プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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